ミクロバレンタイン ‐前編‐





 は、これからいつものように、ミクロマン基地へ行こうと思った。
「……はぁ…。受け取ってもらえるかなぁ…?」
 しかし、いざ行こうという刻になって、溜息を零す。
 その手には、ひとつの小さな包みが握られていた。
 きれいに可愛くラッピングされた、小さなプレゼント。

 それは――が心を込めて作った、チョコレート。

 今日は、二月十四日。
 この星で、『セントバレンタインデー』と呼ばれている日。
 女性が男性に、主にチョコレートなどと一緒に想いをプレゼントする日だ。
 一部では賛否両論……菓子業界を儲けさせるだけとか、色々だが。
 普段のちょっとしたお返しにもなるし、と、は特に変な意識は持っていない。
 そして、常にこの星を守るために戦ってくれている小さな戦士――ミクロマンに贈ろうと、チョコレートを用意したのだが……。
 実は、父親とか親類以外の男性に、チョコをあげたことがほとんど無いのだ。
 第一、異星人である彼らは『バレンタイン』を知らない。
 故に迷っていただったが、それを察した麻美が先日――。

「あたしがちゃんと、みんなに『バレンタイン』のことを説明しとくから!」

 と、自信満々に言ってくれた。
「う〜…どうしよう…。でも、作っちゃったんだし、あげないと勿体ないよね!」
 ようやく決心したは、『みんな用』のエクレアを詰め込んだ大きめ箱と、特別な『ひとり用』のチョコをぎゅっと抱きしめて、ミクロッチの転送用スイッチを押した。



 ミクロマン基地へやって来たは、すぐに司令室へと向かう。
 ドキドキしながら部屋に入ると、しかしそこにミクロマンの姿は無かった。
 耕平と祐太、麻美、そしてベルタが何やら室内の飾り付けをしている。
「あ、ちゃん!」
「久しぶりだね!」
 耕平と祐太がカラフルなテーブルクロスを持ったまま、笑顔を向けた。
「耕平くん、祐太くん? 一体…?」
 何をやっているの? と訊ねようとしたの元へ、麻美が駆けてくる。
「待ってたのよ、ちゃん! よかった、来てくれて」
「麻美ちゃん、ひょっとしてこれって…」
「そう! バレンタインのパーティーをやるのよ!」
 予想はしていたが、本当に予想通りの答えに、は「ぱ、パーティー??」と目を丸くした。
「ちゃーんと、あたしが焼いたチョコレートケーキもあるのよ!」
 どうやら麻美は、『みんな用』にチョコレートケーキを作ってきたようだ。
「あ、私もみんな用にエクレア作ってきたの。よかったらこれも…」
 の持ってきたエクレアの箱を受け取った麻美は、「わぁ、すごい! ありがと、ちゃん!」とはしゃいで、テーブルに並べ始めた。
「地球では素敵な風習があるのね」
 テキパキと室内の飾り付けをしながら、ベルタが微笑んだ。
「ベルタさん、あの、みんなはどこに…?」
 特別の『ひとり用』のチョコを、気まずく後ろへ隠しながらのに、くすっと笑みを零してから答える。
「ここの用意をするからって、麻美が追い出してしまったのよ。時間になったら、戻って来るわ」
「そ、そうなんですか…」
 どうしようかな、という風なの元へ、再び麻美が駆け寄ってくる。
ちゃん! あたし、ちゃんとバッチリみんなに説明しといたから、大丈夫よ! 頑張ってね♪」
「ま、麻美ちゃん!?」
 応援し終えた麻美は、それだけでまたテーブルの方へ戻ってしまった。
 ぽかんとしてしまうに、ベルタはまた楽しそうに笑う。
「みんなが居る場所なら知ってるわ。よかったら教えてあげられるけれど…」
 どうする? と優しく問うようなベルタ。
 は、一瞬迷って。
 けれどひとつ深呼吸をして、決心し、ベルタに問いかける。
「ベルタさん、あの……――」


 「アーサーは、今どこに?」

 「イザムは、どこに居ますか?」

 「ウォルトは、どこに行ってますか?」




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 《あとがき》
 ミクロマンバレンタイン記念創作、分岐ドリームです〜v(笑)
 それぞれお好きなミクロマンにチョコをあげに行って下さいませv
 って、まだ三人しか出来ていませんが…(汗)
 残りの二人は検討中です; もう少しお待ち下さい(><;)
 皆さまも、素敵でハッピーなバレンタインをお過ごし下さいね♪

                          written by 羽柴水帆