第5話 心無き者!ソルジャー・シャイア
あれから二週間後…。
ルシフェリオンの捜索が続けられたが、未だに見つからず、正体も不明。
「ルシフェリオンって…有栖川博士が作ったんじゃ…ないよな…」
ケントはルシフェリオンの事を思い出しながら考え込む。
「エイリさん…どうして俺達の敵となってしまったんだ…?」
あの後、ケント達はコウジ達やトモヤとトモユキにルシフェリオンとエイリの事を伝えたのだが…。
「そのショックで親王ブラザーズが休むなんて…」
そう、エイリの事を聞いたショックでトモヤとトモユキは学校を欠席している。
「帰りに…二人のお見舞いに行こうっと」
トモユキなら簡単に迎えてくれると思うが…トモヤの方はどうなのだろうか?
「それにしてもまだ信じられへんわ…」
マモルもエイリの事を聞いてショックを受けている。
親王兄弟がいない教室でアオイの元にナオキ達が集まる。
「新しいウェブナイトだなんて…有栖川博士が作ったウェブナイトは全部で13体のはずだろ?」
コウジがアオイに問いかける。
「そう…グラディオン達13体のウェブナイトはおじいちゃんが作ったのよ…14体目はさすがに作ってなかったみたいで…」
「しかも今度の敵は…謎のウェブナイトに子供が姿を変えられたウェブモンスター…そして…」
途中で言いかけたキョウイチがショウに振り向く。
その事にショウも頷きながら低く話す。
「…エイリさん…」
その場にいた全員の頭の中にはエイリとの思い出が溢れかえる。
「小さい時はよく一緒に遊んでもらったのが今でも覚えてる」
小さく笑いながらコウジはエイリとの思い出を話す。
エイリは姉のように自分達を可愛がってくれた…。
「ヒナさんより前の姉貴分だったからね…エイリさんは…」
ショウもエイリに遊んでもらった時の事を思い出す。
「卒業しちまった時は男である俺まで泣いたけどな…」
ナオキは小さい頃に泣いた時、エイリに励まされた過去を今でも覚えている。
「俺の理想の姉貴だったよ…彼女は…」
「そうだったの…」
アオイもエイリとの思い出に浸っている。
「そうだ、帰りにトモヤくん達の所へ行こうよ!」
ツバサは今頃になってトモヤ達の事を思い出す。
「そうだね、みんなで行こうか」
ショウもツバサの意見に賛成する。
「兄ちゃんも行くよねー!?」
カイトが兄の元まで走り寄る。
「あ、ああ。もちろんさ!」
ケントが慌てて頷いた時…。
ズガアアアアアアアアアアンッ!
「きゃああああああっ!」
外から女子生徒の悲鳴が聞こえてくる。
「何だ!?」
教室にいたケント達は驚く。
「だっ…誰の悲鳴や?」
恐る恐るマモルがケントに尋ねる。
「多分女の子だと思うけど…ショウさん! みんないるかどうか見てくれるか!?」
ケントが、ショウに振り向く。
「あっ、うん! わかった!」
外の物音に騒ぐ生徒達を宥めるショウ。
「女子は…あっ…トウカちゃんとマユちゃんがいない…!」
ショウは、同級生と下級生の二人の姿が見えない事に気付く。
「何だって!? まさか外に…!」
「マユちゃん…!」
急いでマモルは教室から走り去る。
「マモルくん!?」
カイトも後を追おうとするが、ケントが止める。
「カイトはアオイちゃんと待ってろ! 後、キョウイチとコウジはここに残ってみんなを落ち着かせてくれ!」
「わかった!」
「気を付けろよ!」
「ああ! 行くぞナオキ、ツバサ!」
「僕も行くよ!」
コウジ、キョウイチ、アオイ、カイトに見送られ、ケント、ナオキ、ショウ、ツバサはマモルの後を追いかけて行っ
た。
外では、地面からモンスターが次々と湧き出る。
「いやっ…来ないでっ…!」
そこには、マユが震えながら立ち去ろうとする。
グルルルルルルルッ…!
ゆっくりとモンスターがマユに近づく。
「だっ…誰か助けてぇ…」
あまりもの恐怖にマユはペタンと座り込んでしまう。
「怖い…怖いよぉ…」
モンスターの手が上がる。
その手からは鋭い爪が…。
「ひっ…!」
シュヴァアアアアアアアッ!
爪がマユを切り裂こうとする。
「きゃああっ! 誰か助けてえええっ!!」
その時…!
「マユちゃーん!!」
ガバッ!
怖くて目を閉じたマユを誰かが庇う。
「えっ…あっ…!」
自分を呼ぶ声にマユはそっと目を開ける。
すると…。
「マッ…マモルくん…!」
自分を抱きしめている相手はマモルだった…。
「ケガはない!?」
「うっ…うんっ…でも…怖かったよぉ…」
ぐすぐすっとマモルに泣きつくマユ。
「もう大丈夫や…さ、早くここから逃げよう…!」
「うん…!」
マユを抱えて、マモルはゆっくりと立ち上がる。
だが、それをモンスターが阻む。
「うっ…相手は僕達を見逃がす気0やな…」
「どうしよぉ…」
今にもマユは泣き出しそうだ。
「大丈夫や…絶対に逃げ出そうや…」
「うん…」
マモルに励まされてマユは涙を拭う。
そこへ…。
「マモルー!」
ケント達がやっと到着する。
「ケントくん…ツバサくん達も…!」
仲間の到着にマモルとマユは心底ホッとする。
「マユ、マモル! ケガしてないか!?」
ツバサが二人に問いかける。
「うん、大丈夫よ。だってマモルくんが助けてくれたんだもの」
ねっ、とマモルに向くマユにマモルは頷く。
「うん…ごめん…みんな…僕…どうしてもマユちゃんを助けたくて…」
しょぼんと落ち込むマモルにツバサは一息をついて、マモルの頭に手をのせる。
「そっか…優しいもんな…マモルは…」
ツバサはゆっくりとマモルの頭を撫でてやる。
「マユも…怖かっただろ? だけどもう大丈夫だからな…」
マユの頭も優しく撫でる。
「ツバサくん…うんっ!」
笑顔で微笑むマモルとマユにケント達も安心した。
「そう言えば…トウカさんは!?」
ケントは、もう一人のクラスメートの姿が見えない事に気付く。
「さっきまで一緒だったんだけど…はぐれちゃって…」
マユも一緒にいたクラスメートを思い出す。
「もしかしたら…他のモンスターに追いかけられているのかもしれないな…僕達がモンスターを引きつけるから、その間ツバサくんはマモルくんとマユちゃんを連れて学校へ戻ってくれ」
ショウが二人をツバサに頼む。
「わかった。おいで、マモル、マユ」
ツバサは、マモルとマユの手を優しく引く。
「うん…」
ツバサの両手にそれぞれしがみつくマモルとマユ。
とりあえず、三人は学校まで戻って行った。
ケント達は、モンスターを引きつける為、コミュニティーセンターから離れる。
「なあケント、あのモンスターってウェブモンモンスターだろ!? 何で現実のこの世界に出てくるんだ!?」
走りながらナオキがケントに尋ねる。
「俺にもわからない…デリトロスでさえできなかった事なのに…!」
ウェブモンスターが実際にケント達の世界に現れた事は一切ない。
一体どうやって現れたのか…?
ケント達にはわけがわからなかった。
「今はこのモンスターを何とかしなきゃだめだよ!」
いつの間にかケント達の前を走っているショウがそう告げた。
「ショウさん…早っ…!」
「こっちが遅いんだよ…ケント…」
自分達の状況にやっと気付くナオキはケントにツッコミする。
「あっ…そっか…」
これはいけない、早く逃げなきゃ、とケント達は足にすべてを任せるのだった。
「兄さん…もうそろそろ起きた方がいいんじゃないですか…?」
自分の隣りのベッドで寝ているトモヤに話しかけるトモユキ。
「ん…母さんは…?」
ボーッとしながらトモヤはベッドから起きあがる。
「買い物に行きましたよ、もうお昼ですからご飯食べましょうよ兄さん」
よく見ると、トモユキはすでに普段着に着替えている。
トモヤより早く起きたのがよくわかる。
「そうか…そういやー…学校…休んじまったもんな…」
ゆっくりと背伸びをしながらトモヤは壁時計を見つめる。
と、そこへ…。
ヅーヅーヅーッ!
通話用のモニターが光る。
「誰からだろう…?」
とりあえず、トモユキが出てみる。
「はい、親王です…あっ、お母さん。今やっと兄さん起きましたよ。えっ…怪物? 兄さんが?」
「おい…誰が怪物だって…?」
少し苛立つトモヤにトモユキは慌てて頭を下げて謝る。
「えっ? 違うんですか!? えっ…外に変な怪物がいるんですか…? あ、はーい…じゃあまた後で…」
モニターの電源を切るトモユキ。
「母さん、何だって?」
「よくわからないんですけど…外に変な怪物がうろついているから絶対に外に出るなって…」
「怪物? 母さんはどうするって?」
「とりあえず、近所の人の家に匿わせてもらってるって…怪物がいなくなるまで…」
「怪物ねぇ…ちょっと庭に出れば見えるかな?」
そっと庭に続くドアを開けるトモヤにトモユキは大慌てする。
「だっ…だめですよ兄さん! もし本当に襲ってきたらどうするんですか!?」
「何言ってんだよ? この俺を誰だと思ってんだ? お前の空手大得意な兄貴だぜ? いざとなった時は俺がぶっとばしておいてやるから」
あっけらかんに笑うトモヤにトモユキはガクッと顔を伏せる。
「そうじゃなくてぇ…」
涙声で兄を止める弟。
その時…。
「きゃああああああっ!」
外から聞こえる悲鳴がトモヤ達の耳を掠める。
「この悲鳴は…!」
まさか…と言おうとしたトモヤ。
「トウカちゃん!!」
颯爽と自分のクラスメートの名を叫ぶトモユキ。
「トモユキ…お前…わかるの早いな…」
「わかりますよ! クラスメートですから!」
「でも何で近所にいるんだ? 今はまだ学校のはずだろ…ってトモユキもういない…」
気が付けば、玄関のドアが開いている…。
「じゃ…俺も行くか…」
普段着に着替えたトモヤはドアを出て、弟の後を追いかけた。
「はあ…はあ…あっ…いつの間にか学校から離れちゃったわ…」
公園まで逃げ込んだ佐方トウカは、自分のいる場所を理解する。
「きっとみんな心配してるわね…早く戻らないと…あっ…!」
公園から出ようとするトウカの前には二匹のモンスターが…。
「そこ…通してもらえませんか…って無理みたいね…」
通してもらえるように説得してみるトウカだが、相手は通してくれない。
「マユちゃんは無事かしら…誰かに助けてもらっていればいいのだけれど…」
モンスターがじりじりとトウカに近づいていく…。
「こっ…来ないで…来ない下さい!」
だが、そんなトウカの願いを聞き入れず、モンスターは容赦なく襲ってきた。
シャギャアアアアアアアッ!
「いやあああああああっ!」
怖くて目を閉じるトウカ。
もうだめかと思った次の瞬間…。
「おりゃあああああああっ!」
バキイイイイイイッ!
トモヤのケリがモンスターの鳩尾に決まる。
その衝撃にモンスターが倒れる。
「トウカちゃん!」
トモユキがトウカの元に駆け寄る。
「えっ…?」
ゆっくりとトウカが目を開けると、そこには親王兄弟がいた。
「トモヤくん…トモユキくん…!」
「もう大丈夫だよ…ケガはない?」
優しく尋ねるトモユキにトウカはコクッと頷いた。
「ええ…大丈夫…ありがとう…」
笑顔でトウカはトモユキ達に礼を言う。
そこへ、ケントとナオキとショウが走ってくる。
「トモヤくーん! トモユキくーん! トウカさーん!」
大声でトモヤ達を呼ぶケント。
どうやら、囮作戦から本当の逃亡劇になったようだ。
「外に出て大丈夫なのかー!?」
必死に逃げながらナオキはトモヤ達に問いかける。
「そっちこそ大丈夫かー? それ何だよ…俺達への見舞いの品か? それだけは受け取りたくないぜ」
「兄さん…止めなくていいの?」
そこへショウがゆっくりとトモヤ達の元まで歩み寄る。
「これはやっぱりウェブモンスターだね…どうしてダイバーランドに現れたのかはまだわからない…」
深くため息をつくショウ。
すぐ側にはケントとナオキが必死にモンスターから逃れる為に走り回っている。
「あっ! いつの間にかショウさんが抜けている!」
「親王ブラザーズも見てないで助けろ!」
走り回っている二人は命がけだ。
すると、モンスターが光り出したかと思えば消えてしまった。
「あれ…?」
途中で立ち止まるケントとナオキ。
「消えた…よな?」
ショウもトウカも親王兄弟も目が離せなかった。
「とっ…とりあえずマジカルステーションに行ってグラディオンに話さないと!」
「俺も行く!」
走り出すケントを追うかのようにナオキも一緒に行く。
「気を付けて…」
ショウとトモヤ達も気付いていた…(トウカにはわからないが…)。
これはマジカルゲートで何かが起こっている事に…。
「グラディオーン!」
マジカルステーションへ、ケントとナオキが到着する。
「ケント、ちょうどよかった。すぐにアオイとカイトとマモルも来る」
グラディオンの言う通りに、アオイ達が到着する。
「ケントくん、僕も一緒に戦う! マユちゃんをあんな目に合わせる奴を…許すわけにはいかへんのや!」
マモルの瞳には強い意志が秘められている。
ケントにはそれがよくわかる。
「マモル…そんなにマユちゃんの事を…」
その時、カロンが何かに気付く。
「外部から通信が入ったピョコ!」
「誰からだ!?」
通信…一体誰からなのだろうか?
「今繋がるピョコ!」
通信用のモニターを映し出すカロン。
『また会ったな…グラディオン…そして結城ケント…』
「お前は…ルシフェリオン!」
モニターにはルシフェリオンが映し出される。
「ダイバーランドでモンスターを呼び出したのはお前だろ!?」
『いかにも…だが私はモンスターを造り出しただけだ…召還したのは私ではない…』
「モンスターを召還したのは…ルシフェリオンじゃない?」
アオイはルシフェリオンの言っている意味がうまく理解できない。
『僕が造ったのですよ』
画面の左下のモニターから少年が映し出される。
銀色の髪に紫色の瞳。
日本人ではない事がわかる。
「ルシフェリオン! エイリさんをどうした!?」
ルシフェリオンのウェブダイバーがエイリじゃない事を確信したケントは強く問う。
『エイリは今、モンスターを召還する為の力を蓄えている所だ…安心するがいい…手は出していない…』
『はじめまして…結城ケントくん…。僕の名はシャイア…エイリに選ばれた…堕天四天王の一人…』
シャイアの背中に黒い翼が羽ばたく。
「堕天四天王…!?」
『僕には後三人の仲間がいます…彼らとはいずれお会いできる事を望んでいましたが…それは無理みたいですね…』
「どういう事だ!?」
『君は…僕達に今倒されるのですから…スカイエリアで待っていますよ…ケントくん…』
そのまま通信が切れる。
「待てっ…! くそっ…グラディオン! スカイエリアへ行こう!!」
「ああっ!」
「スカイエリアはグリフィオンが担当しているエリアピョコ! マモルも一緒に行くピョコ!」
「わかった!」
「おーっし! 俺も行くぜ!」
マモルとナオキはケントと共に発進ゲートまで走って行く。
「じゃあ私も…!」
アオイも自分専用のマジカルステーションの管理プログラムを呼び出すのだった。
「一体あのシャイアって奴は…何者なんだ?」
移動中にナオキがケントに問いかける。
「わかんないけど…ルシフェリオンに操られているのは確かだ…早く解放してやらないと…」
ケントはシャイアの背中にある黒い翼の事が頭から離れない。
「ホンマに…エイリさんに手を出していなきゃええんやけど…」
マモルはエイリの事が気になっている。
「エイリさん…」
ケントはエイリの無事を祈るしかできなかった。
スカイエリアではグリフィオンとドラグオンがグラディオン達を待っていた。
「来たか、グラディオン。ナオキ!」
ドラグオンは、自分のウェブダイバーが来た事を一番に感じている。
「じゃあケント、俺はドラグオンの方へ移るから。ウェブダイブ・ドラグオン!」
ナオキはグラディオンからドラグオンの方へダイブする。
「グリフィオン、ルシフェリオンは?」
グリフィオンにダイブしながらマモルが尋ねてくる。
「先程から追いかけているのだが…速くて追いつけなかった…」
すまない、と謝るグリフィオン。
「グリフィオンが謝る事はないんよ、気にしなくてええよ」
優しくグリフィオンに話すマモル。
「何処だ!? ルシフェリオン!!」
「ここだ…」
グラディオンの背後にルシフェリオンが現れる。
「ルシフェリオン…来たぞシャイア!!」
ケントがルシフェリオンを睨む。
「お待ちしていましたよ…ケントくん…」
ルシフェリオンからシャイアが出てくる。
「シャイア! 自分と同じ子供をモンスターに変えるのがそんなに楽しいのか!? 君はルシフェリオンに操られているんだ! 目を覚ませ!!」
必死にシャイアを説得するケント。
「目を覚ませだって? 目なら覚めていますよ、堕天使としてね…」
シャイアが再びルシフェリオンの中へダイブする。
それと同時にルシフェリオンの背中の黒い羽根が次々とグラディオン達に向けて攻撃してくる。
「避けるんだグラディオン!!」
ルシフェリオンの攻撃に急遽避けるグラディオン。
「シャドーニードルの攻撃はどうですか? ウェブダイバーによってルシフェリオンの技が違うんですよ」
ルシフェリオンの羽根・シャドーニードルが容赦なくグラディオン達を攻撃する。
「例えば、エイリにはシャドーウィップ、僕にはシャドーニードルという技がルシフェリオンと使えるのです」
シャドーニードルの動きが早くなり、グラディオンは避けるのに精一杯だ。
「くそっ…! どうすればこの技を止められるんだ!?」
悔しがっているケントにマモルはある方法を思いつく。
「そうだ…僕に任せてや!」
マモルの乗ったグリフィオンがグラディオンの前に来る。
「グリフィオン…!?」
「グラディオン、ここは私とマモルに任せてもらいたい」
「いくでグリフィオン! ホーミングショット!!」
グリフィオンの必殺技、ホーミングショットがそれぞれシャドーニードルを破壊する。
「なるほど…ホーミングショットを使うとは…ルシフェリオン!」
「わかっている…」
素早くホーミングショットを破壊するルシフェリオン。
「なっ…!」
「早いっ…! なら…!」
マモルがグラディオンの方へ振り向く。
「合体はさせませんよ!」
シャドーニードルが今度はグリフィオンを狙って攻撃してくる。
「合体する事を知っていたのか!?」
驚くグリフィオンにシャイアは小さく笑う。
「僕は普通の子供とは違って能力を持っているんです。予知能力をね…」
「予知能力だって…!?」
それが本当ならば、こちらは攻撃ができない。
「ルシフェリオンの奴…シャイアが予知能力を持っている事を知っててウェブダイバーにしたのか…!」
「厄介な奴を選んだな…」
ドラグオンもなかなか手が出せない。
「おまけに動きは早いしな…何とかしないとダイバーランドに次々とモンスターが出ちまうっ…!」
ナオキは悔しそうに唇を噛む。
「グラディオンがドラグオンと合体する気ですよ。ルシフェリオン…」
「ふっ…そんな事させやしないものを…」
ズバッ…!
「ぐっ…!」
「うわっ…!」
シャドーニードルの一部がグリフィオンの左肩を掠める。
「グリフィオン…大丈夫!?」
マモルが慌ててグリフィオンに尋ねる。
「ああ…大丈夫だ…」
優しく答えるグリフィオンにマモルはホッとした。
「でも…ホンマにどうすればええんや? このままじゃ…痛っ…!」
ズキィィィンッ…!
「どうした!? マモル!?」
グリフィオンが尋ねると、マモルは低く呻きながら右手で左肩を押さえる。
「左肩が…痛いんや…!」
マモルは、そっと左肩から右手を離して、震える右手を見つめる。
「何で…何で血が出とんのや…!?」
「何だって!? マモル大丈夫か!?」
ケントの乗ったグラディオンがグリフィオンを守るかのように立ちふさがる。
「うん…大した事はあらへん…」
「おや、ケガをさせてしまいましたね…現実世界の方で響かなければいいのですが…」
「うるせー! お前がやったんだろが!!」
残念そうに言うシャイアにツッコミするナオキ。
「そうでしたね。それでは残った君達も同じ目に合わせてあげましょう。シャドーニードルッ!!」
シャドーニードルが今までより速く攻撃してくる。
「くそっ…! ブラックホールキャノンッ!!」
ドラグオンのブラックホールキャノンがルシフェリオンの左足に直撃する。
「ぐうっ…! 見事だ…今のは効いたぞ。だが…!」
ルシフェリオンは、背中に装着してある剣を抜く。
「このルシフェリオンに適うなどとは思うなっ!」
ルシフェリオンの剣から、衝撃波が放たれる。
「避けろグラディオン!」
「わかった!」
避けようとするが、一時的体が動かなくなった。
「なっ…何だ!?」
動けないグラディオンにケントはもうわけがわからなかった。
「ルシフェリオンの衝撃波は一時的相手を動けなくする事ができるんですよ。つまり、逃げる事は不可能というわけです!」
「ルシファーブレードッ!!」
ルシフェリオンの剣――ルシファーブレードの衝撃波がグラディオン達を襲う。
ズガアアアアアアアアンッ!
「ぐあああっ!」
ルシファーブレードの衝撃波を受けたグラディオンが倒れ込む。
「グラディオンッ! ケントッ!」
グラディオンの元へ降り立とうとするドラグオンだが、ルシフェリオンがそれを阻止する。
「行かせるわけにはいかんっ!」
「シャドーニードルッ!」
ルシフェリオンからダイブアウトしたシャイアがグリフィオンとドラグオンに攻撃する。
ビジュビジュンッ!
「ぐっ…!」
「うあっ…!」
ドラグオン達に当たると、中にダイブしているナオキ達にまで突き刺さる。
「くそっ…! ナオキ…マモルッ…!」
ケントは体中の痛みに耐えながらも、カロンに連絡する。
「カロン…すぐにワイバリオンを…カイトを…頼むっ!」
マジカルステーションからワイバリオンがカイトを乗せて、出撃する。
「カイトくん…ケントくん達をお願い…!」
司令室ではアオイがケント達の無事を祈る。
「アオイ…」
アオイの元へ、ジャンが歩み寄る。
「あっ…ジャンくん…」
「ガリューンから聞いたよ。ダイバーランドの方で…ウェブモンスターが現れたって」
ジャンはマジカルステーションに来る前に、パートナーであるガリューンから聞いたのだ。
ケント達の住むダイバーランドでコンピュータ内にいるはずのウェブモンスターが出現したという事を…。
「それを召還したのがシャイアだって事が…」
「えっ…? ジャンくん…シャイアを知ってるの?」
アオイはゆっくりとジャンに問いかける。
「うん…シャイアは僕の…」
「兄ちゃーんっ!」
「グラディオーンッ!」
スカイエリアでは、やっとワイバリオンが到着する。
「待っていたぞ…ワイバリオン!」
「よし…合体だ! グラディオン!!」
ケントのかけ声と共に、グラディオンがワイバリオンと合体して、ビクトリーグラディオンとなる。
「そうでなくては面白くありませんよ…」
シャイアが再びルシフェリオンの中へ戻る。
「俺達も反撃だ! マモルッ!」
「うん!」
ナオキの言葉にマモルはコクッと頷く。
「スターダストレイザーッ!」
「ホーミングショットッ!」
ドラグオンとグリフィオンの攻撃により、ルシフェリオンのルシファーブレードがはじき飛ばされる。
「何っ…!?」
驚くルシフェリオンの前にグラディオンが立ちはだかる。
「今助けるからな…シャイアッ!」
ルシフェリオンにグランブレードを向けるケント。
「ビクトリーザーンッ!!」
グランブレードが、ルシフェリオンを切り裂く。
そして…ルシフェリオンの体が消える。
「…カロン、ルシフェリオンのデータを回収してくれた?」
ケントが再びカロンに通信する。
『それが…回収できなかったピョコ…しかもシャイアも元の世界に戻っていないピョコ…』
「何だって…? ルシフェリオンのデータが回収できなかっただって…!?」
その事にナオキやマモルも驚く。
「何で回収できなかったん!?」
「おまけにあのシャイアって奴も戻ってないって…!?」
『しかも、ルシフェリオンはまだこのエリアにいるピョコ! 気を付けるピョコ!』
とその時…。
「いかにも…」
グラディオンの背後に出現するルシフェリオン。
「なっ…ルシフェリオン!?」
再びの出現にグラディオンは驚きを隠せなかった。
「倒したはずなのにどうして…!?」
落ち着きのないケントにルシフェリオンは小さく笑う。
「ふっ…まだ言っていなかったな。私は不死身だ。そう、いくらお前達が攻撃しても消滅する事は決してない! ましてや、ウェブダイバーも元の世界に戻る事はできん!」
ルシフェリオンから再びシャイアが現れる。
「今ので、君達の攻撃は見極めました。もう我々を倒す事は不可能です。今日はこれで失礼しますが…次に会う時は君達の最期でしょう」
そう言い残して、ルシフェリオンとシャイアは映像のように消えていく…。
「まっ…待てっ!」
追いかけようとするグラディオンだが、ルシフェリオン達は完全に消えてしまった。
「逃げられたかっ…!」
悔しがるナオキにドラグオンは顔を伏せる。
「不死身やなんて…」
マモルはこれからもダイバーランドにモンスターが出現するのかと、震える。
ズキッ…!
「うっ…!」
マモルの左肩からは未だに血が流れている。
「マモルッ…! 大丈夫か!?」
慌てるグリフィオンにマモルは「大丈夫」と告げた。
「これくらい…何ともないで」
「とりあえず…今日はもう戻った方がいいな」
グラディオンの心情にケントも頷く。
「ああ、早くマモルの手当をしないとな」
ケントは、ルシフェリオンの言葉が頭から離れない。
もし――ルシフェリオンの言う事が本当ならば、シャイアやウェブモンスターに変えられた子供達や…エイリを救えないかもしれないかとつい思ってしまうケントだった…。
