「トモヤくーん! トモユキくーん!!」
ケントはグラディオンにダイブした後、トモヤ達を追いかける。
「ケント、見つけたぞ!」
グラディオンが見つけたのはケルベリオンにダイブしたトモヤとトモユキが入ったナスカエリアだった。
「よし、行こう! グラディオン!!」
ケントとグラディオンは覚悟を決めて、ナスカエリアに突入した。
「ここでいいのか?」
トモヤ達を降ろしたケルベリオンは問いかける。
「ああ、トモユキはここで待ってろ。エイリを探して来る」
そのままトモヤは走り出して行った。
「あ、待って兄さん…!」
後を追おうとした、トモユキの前にグラディオンが降り立つ。
それと同時にケントがグラディオンから降りた。
「あ、グラディオン…ケントくん…!」
「トモユキくん、トモヤくんは?」
ケントの質問にトモユキは顔を伏せる。
「それが…兄さんはどうも一人でエイリさんを探しに行くみたいで…」
「一人でなんて危険だ! トモユキくん、一緒にトモヤくんの後を追いかけよう!」
「…はい!」
ケントとトモユキもトモヤの後を追いかけた。
「待てっ! ケント…行ってしまった…ケルベリオン、すまないがオルトリオンを探して来てくれないか? 私はケント達を追う」
「わかった!」
グラディオンの指示に従い、ケルベリオンはオルトリオンを探しに行った。
「エイリッ! エイリーッ! くそっ…何処にいるんだ!?」
ナスカエリアにある神殿の中を彷徨いながらトモヤはエイリの名を呼ぶ。
「今日…エイリはここに来ると言っていた…だからここにいるかもしれないのに…ちっくしょう!!」
トモヤは悔しさに壁を拳で叩く。
と、そこへ…。
「兄さーん!!」
「トモヤくーん!!」
ケントとトモユキがやっとトモヤに追いついた。
「トモユキ…ケントまで!? 何で来たんだ!?」
「兄さんとエイリさんを連れ戻しに来たに決まってるじゃないですか!」
「俺達も一緒に探すよ! エイリさんを見つけるのを手伝いたい!!」
ケントとトモユキのお願いはさすがのトモヤも断れない。
「…わーったよ…そのかわり、俺から離れるんじゃないぞ!」
「「はーい!!」」
笑顔で返事をするケントとトモユキ。
「(サンキュ…)」
トモヤは心の中で二人に礼を言うのだった。
「うーん…何処にいるんだろう…エイリさん…」
神殿の中を歩きながら、トモユキは辺りを見回す。
「ここに来ているはずだ…なのに…」
「やっぱりデリトロスの仕業…なのでしょうか?」
「そんなっ…! だってデリトロスはもう倒したはずだ!!」
三ヶ月前にケントは、グラディオンと共に悪のプログラム・デリトロスを倒すのに成功したのだ。
「…ったく…何処のどいつだよ…マジカルゲートを侵略して…エイリを奪うのは…!!」
トモヤの苛立ちがだんだん表に出されていく。
「兄さん…エイリさんの事を…」
「バッ…バカ! 違う! エイリは…姉貴みたいだしさ…それだけだ!!」
ケントとトモユキに見つめられてトモヤは思わず赤面になる。
「わかってるって!」
笑顔で笑うケント。
「ははっ…ん?」
トモユキも笑っていたが、何かの気配に気付く。
「…これはっ!?」
ズドオオオオンッ!
「なっ…何だっ!?」
突如、ケント達の前に巨大なモンスターが現れ、ケント達を襲ってくる。
「立体映像…じゃないな」
「僕達を襲ってくるわけですから…敵と認識した方がいいですね」
「とりあえず、グラディオン達に知らせよう!!」
ケントはグランモバイラーでグラディオンを呼ぶ。
「ケント!!」
グラディオンとオルトリオンとケルベリオンが到着する。
「グラディオン!!」
「このモンスターの分析を今、マジカルステーションでカロンが調べてくれている。ケント、ウェブダイブだ!!」
「よーしっ! ウェブダイブ・グラディオン!!」
ケントの体が光に包まれて、グラディオンの中へと入っていく。
「俺達もいくぞ! トモユキ!!」
「はい! 兄さん!!」
「ウェブダイブ・オルトリオン!!」
「ウェブダイブ・ケルベリオン!!」
トモヤはケルベリオンに、トモユキはオルトリオンにウェブダイブする。
とそこへ、カイトが乗ったワイバリオンも到着する。
「兄ちゃーん!!」
「グラディオン! 合体だ!!」
ワイバリオンの言葉に頷くグラディオン。
「わかった! ケント!!」
「うん! グラディオン・ビクトリーモード!!」
グラディオンとワイバリオンが合体して、ビクトリーグラディオンとなった。
「ケルベリオン! 俺達も!!」
トモヤはケルベリオンに合体を要請する。
「よしっ! いくぞオルトリオン!!」
「もちろんだ兄さん!!」
ケルベリオンとオルトリオンも合体して、ゴレムオンとなる。
「スパイラルカッター!!」
ゴレムオンの右腕からカッターが発射される。
グオオオオオッ!
攻撃を受けて、モンスターは悲鳴(?)をあげる。
「今だケント!!」
トモヤに言われて、ケントは頷いた。
「OK! いくぞカイト!!」
「うん!!」
「ビクトリーザーンッ…」
『待つピョコ!!』
攻撃しようとしたケント達にいきなりカロンからの通信が入る。
「なっ…何だよカロン!?」
『今、アオイちゃんと一緒にモンスターの事を調べたらとんでもない事がわかったピョコ!!』
「とんでもない事…?」
「カロン、それはどういう事なのだ?」
グラディオンも気になって仕方がない。
『それはモンスターの正体ピョコ…』
「モンスターの…正体…?」
トモユキは何だか嫌な予感がしてきた。
カロンの声がしばらく聞こえなくなったかと思いきや、再び話し始める。
『その正体は…人間の子供ピョコ…!』
「何だって!?」
『しかも、今度は倒すとその子が…元の世界には戻れずに…死んでしまうピョコ…』
「何か…何か方法はないのかよ!?」
拳を震わせるトモヤにカロンは何か思いついたように話を進める。
『あるピョコ! そのモンスターの体にはモンスター化する装置があるピョコ! まずはそれを見つけるピョコ! そうすれば倒しても子供は元に戻るはずピョコ!!』
「モンスター化する…装置…?」
「それを見つければ…何とかなるってわけか…」
「ケントくん! ここは僕達に任せて、装置を探してください!!」
「早くしなきゃこいつがおしまいだ!!」
「トモヤくん…トモユキくん…わかった!!」
グラディオンはモンスターの周りを飛び続ける。
「だけど…何処にあるんだろう?」
「それはわからないがこのモンスターの中にあるのは確かだ」
何か目印でもあればとケントは考え込む。
「ん? あの背中の痣は何だろう…まさか!!」
ケントは、モンスターの背中にある痣らしき物を見つける。
「まさか…装置と関係があるのかも!!」
『ケント! 装置はあの痣ピョコ!!』
再びカロンからの通信が入る。
「あの痣が…装置…ビクトリーザーンで大丈夫か?」
『大丈夫ピョコ! 向こうの攻撃はゴレムオンが押さえてくれているピョコ!!』
「いこう! ケント!!」
「よし…ビクトリーザーンッ!!」
グランブレードがモンスターの背中の痣を切る。
すると…。
グアアアアアアアアアアアッ!
叫び声を上げたモンスターが倒れる。
そして、モンスターから少年に戻る。
「この子は…」
『おそらくこのエリアに閉じこめられていた子だピョコ…』
「後は、この子が戻ればいいんだよな!」
と、その時…。
「結城ケントか…?」
「!?」
背後からの声に気付いたグラディオンが振り向く。
そこには黒いマスクを装着していて、黒の女子用のダイバースーツを着た子供が…。
「君は…?」
「私の刺客を倒すとはさすがだ。だが…次からは容赦しない…」
刺客?
「まさか、このモンスターは…!?」
ケントは、元の世界に転送される少年を見つめながら問いかける。
「そうだ、私がこの少年をモンスターに変えたのだ。これだけではない。私が変えたモンスターは全エリアにいる。倒す事がお前にはできるか?」
「…やってやる! みんなを元に戻す!!」
「では…楽しみに待っているとしよう…また会おう…結城ケント…そしてグラディオン…ちなみにこの私をデリトロスと一緒にしてもらっては困る!!」
そのまま少女は姿を消した。
ケントは、ただそれを見送っていた。
「あの声…何処かで…」
「兄ちゃん…あれ…誰なんだろう…?」
「ケント…」
「ああ…新しい敵登場…というわけか…」
ケントとグラディオンはナスカエリアの空を見上げていた。
「何処にいるんだろう…エイリさん…」
ケント達の頭の中には今、エイリの事しかないのだった…。