第三章 青い空と白い山の間(スイス編)
二つめのユーボーグを手に入れたミクロマン達は、スイスにやってきた。
「この地区で反応があったのである」
エジソンのコンピュータがピカピカ光りながら動いている。
「ここの何処かにユーボーグがあるんだな」
「とりあえず、調査を始めようよ!」
勇人の言葉にアーサーは頷いた。
「そうだな。何か知っている人がいるかもしれない」
「この町にいるかしら?」
エジソンは、「わからないが、調べてみるのである」
「ここって、結構寒いな〜」と、ウォルトが寒そうに自分の肩を押さえる。
「がまんがまんである!」
そんな事お構いなしにエジソンは先に進む。
「おい、待てよ!」
ウォルトは慌ててみんなの所に走った。
しばらく歩いているうちに、話し声が聞こえてくる。
「ん? 何だろう?」
そこには、二人の女性が何か話している。
「ねえ、奥さん。あの噂聞きました?」
女性がもう一人の女性に尋ねるように話す。
「ええ。変な人形みたいなのがアルプス山を占領したって言う噂でしょ?」
変な人形がアルプス山を占領?
「変な人形ってまさか!」
それを聞いた勇人は嫌な予感がする。
「きっとアクロイヤーよ! 奴等は、アルプス山にいるんだわ!」
さくらも大体の見当はついている。
「アーサー!」
さくらがアーサーの方に振り向くと、アーサーは頷いた。
「ああ。みんな、アルプス山へ行こう!」
アルプス山ではエジソンのコンピュータを頼りに、アクロイヤー調査を開始される。
「この山の何処かにアクロイヤーがいるんだね?」
「ああ。そのはずなんだが、いないな」
「もしかしたら、俺達が来たのに気づいて隠れたのかもしれないな」
「おいイザム。アクロイヤーは、俺達が来たならすぐに、攻撃をしかけてくるだろう。そのまま俺達を行かせるなんて、まるで罠じゃないか」
イザムの予想に少し疑問を抱くオーディーン。
(確かに、ここにアクロイヤーがいるなら静かすぎる。やはり、オーディーンの言うとおり、これは罠だろうか?)
アーサーは周りを警戒しながら周りを見つめている。
「この山に来てると、何かアルプスの少女を思い出すわ」
さくらは小さい頃に読んだ絵本を思い出す。
「カルピスの少女? それってうまいのか?」
アルプスをカルピスを聞き間違えたウォルト。
「違うわよ! アルプスよ!」
ウォルトのすっとぼけた質問にさくらは怒りそうになる。
「なあ、さくら。アルプスの少女って人の名前か?」
「ううん。そう言う物語なの! 名前はハイジって言うのよ!」
「そうか…」
ゆっくりと空を見上げるイザム。
「また出たぜ…。イザムの自然好き好き病が!」
「悪かったな! 病気で!」
「おーおー! そんなに怒っちゃ、せっかくのいい顔がもったいないぜ!」
イザムを挑発するかのようにからかうウォルト。
「!」
イザムはウォルトの挑発に少々キレかける。
その時。
「いい加減にするのである!」
森中にエジソンの怒鳴り声が響き渡る。
みんなはその声と共に止まった。
「全くもう! これからアクロイヤーを捜すというのに、これじゃ見つかるのである!」
イライラしながら怒るエジソン。
「エジソン怖い…」
「私も…。今ので寿命が二年縮んだわ」
しばらく歩いていると、山小屋らしき建物を見つける。
すると、そこにはアクロ兵がどっちゃりといた。
「やっぱり! ここにいたんだな!」
大量のアクロ兵を見たアーサーは警戒する。
「どうやって、中に入るの?」
「そうよ、どうするの?」
勇人やさくらはこれじゃ入るのは不可能だと主張する。
「簡単である! さっき小型爆弾を造ったのである! これを、奴等の所へ投げれば、
あっという間にドォッカーンである!」
エジソンが取り出したのは小型の爆弾だ。
「よし! 行けエジソン!」
ウォルトは、そのままエジソンをアクロ兵達の方へ蹴り飛ばした。
「おーい! 違うである!」
どうやら、エジソンの計画では自分達が隠れている草むらから爆弾を投げる予定だったらしい。
それを、ウォルトはエジソンをほっぽりだした。
「ウォルトオオオオ!」
敵の陣地に落ちたエジソンはついに敵に捕まった。
「あっ! エジソンが!」
「エジソン! お前が敵に捕まってどーすんだよ!」
「誰のせいであるか!」
エジソンはアクロ兵に囲まれながらもウォルトに怒鳴り返す。
「本当だな…。ああ、何てかわいそうなエジソン…」
イザムはあまりもの情けなさに頭を抱える。
「アーサー! そんな事言ってないで早く侵入するのである! ここは僕に任せて、行くのである! 早くユーボーグを取り返すのである!」と、叫んだ。
「エジソン…。わかった! 必ず助けるぞ!」
エジソンの言葉に頷いたアーサーは、勇人達を連れて山小屋に侵入した。
「頼んだぞ…!」
エジソンは仲間の無事を祈るばかりだった。
山小屋の中。
中は、大きな機械で埋め尽くされている。
「ここの何処かにユーボーグがあるはずだ…!」
アーサーは、小声で辺りを見回しながら話す。
その時。
「現れましたね、ミクロマン!」
何処からか声が響き渡る。
「誰!?」
声に気付いたさくらは慌てて辺りを見回す。
そこには、蜂のような姿をしたアクロイヤーがいた。
「お前は誰だ!?」
「我が名は、パープルアマゾン。ようこそ、我が基地へ。歓迎しますよ」
パープルアマゾンは礼儀正しく挨拶する。
「エジソンはどうした!?」
「ご安心を、危害は加えていません。すぐにあなた達を彼の元へ送ってさしあげますよ」
パープルアマゾンはそのまま持っている槍をミクロマン達に向ける。
「何する気?」
「もちろん、あなた達をあの世へお連れするのです!」
槍を向けて攻撃してくるパープルアマゾン。
「相手が武器を使うなら、こちらも武器で相手するのが礼儀だ!」
そう言って、イザムはマグネソードを取り出す。
「あなたが私の相手ですか? よろしい。かかってきなさい!」
パープルアマゾンはそのイザムの言葉に受け入れたのか、イザムに向かって行く。
「はあっ!」
ギシイイイイイン!
剣と槍の重なった音が響く。
「ふっ、やりますね」
「それはどうも! そっちもやるな!」
「では、これはいかがですか?」
何を思いついたのかパープルアマゾンは自分の槍を天上に向ける。
「何だ?」
パープルアマゾンの行動に勇人は目を離せない。
「何をするつもりだ!?」
「私のこのアクロランサーの攻撃をくらえ!」
天上から怪しい光がパープルアマゾンのアクロランサーに命中する。
すると、イザムの真下から大量の茨が飛び出し、イザムの体に巻き付く。
「うああああっ!」
「イザム!」
「パープルアマゾン! イザムを離せ!」
アーサーの叫びにイザムはアーサー達に話しかける。
「…大丈夫だ! こんなもの、俺一人でできる!」
だが、茨は次々とイザムの体に巻き付いて絡まっていく。
「ぐうっ!」
「ちょっと、そこの蜂! こんなの卑怯よ!」
パープルアマゾンのやり方が許せなく、さくらはパープルアマゾンを睨み付ける。
「お嬢さん。卑怯とは悪のためにある言葉。当たり前なのですよ」
「残念だったな! イザムがこんなひょろひょろにやられる奴じゃねーんだよ!」
ウォルトは、イザムに絡みついている茨を見つめて、何かを思い出したようだ。
「何っ!?」
するとイザムの目が光り出し、茨が次々と崩れ落ちていく。
「何? 茨が抜けていく」
突如の事にさくらは驚いた。
「何故だ!? ミクロマンにこんなデータはない!」
その時。
「解説しよう!」
サッと天上から降りて来たのはエジソン。
「エジソン!」
「無事だったのか!」
アーサー達はエジソンの無事にホッとする。
「もちろんである! イザムは植物を操る事ができるのである! だから、植物を使った攻撃はイザムには通用しないのである!」
「何っ!?」
そして、イザムは茨地獄から解放された。
「もう、お前の植物の攻撃は俺には効かない!」
「くっ!」
「勇人! アクロランサーを奪うのである!」
「わ、わかった!」
その時、勇人がアクロランサーを奪う。
「あっ! しまった!」
「アーサー! これを壊して!」
「わかった! こっちへ投げてくれ!」
アーサーが頷きながら勇人に投げるように言った。
「えいっ!」
アーサーにアクロランサーを投げ渡す勇人。
「はあっ!」
アーサーはマグネアームでアクロランサーを破壊する。
ドドドドドオオオ!
「あっ! アクロランサーが!」
「行くぞ! パープルアマゾン!」
ユーボーグを装備したアーサーが、パープルアマゾンにめがけて、パワーバーストを放つ。
「ぐああああああああああ!」
アーサーの攻撃を受けたパープルアマゾンは自爆した。
パープルアマゾンがいた部屋の壁には隠し通路があった。
「これは、どうやら屋根裏部屋に続いているのである」
上っていくと、本当に屋根裏部屋があった。
そこには大きな箱がある。
「この箱何かしら? 何か入ってるみたい」
「とりあえず、開けてみよう。ウォルト。手伝ってくれ」
「OK!」
ウォルトとオーディーンが箱を開ける。
ギギギギギィ…。
開けると、中には分度器みたいなのが入っていた。
「これ何だ? 大きな分度器?」
「これもユーボーグの一つなんだ。パワースコープと言って、他のユーボーグの照準器になる。そして、我々の盾になるんだ」と、言ってパワースコープを手に取る。
そして、アーサーはシールドを持ってるかのようにそのパワースコープを持つ。
「こんな感じだ。これはどんな攻撃も跳ね返せる」
「それじゃ、次は中国で反応があったのである。だから、中国に行くのである」
「そんな遠くに?」
「アクロイヤーは世界各地に潜んでいる。色々な場所からその反応をキャッチして、そのボスを倒す!」
「それじゃ、中国に向けて、出発!」
「ああ、行くぞ! みんな!」
そして、ユーボーグ・パワースコープを手に入れ、ミクロマン達は次の目的地、中国を目指して旅立った。
―――――さあ、今度はスイス! スイスですよ(笑)!
実は、このアクロイヤーの名前がわからなくて、仮に「アクロビートル」なんて付けて
おりましたが、旧シリーズで「アマゾン」という名前が付いているのがわかり、
紫色なので、「パープルアマゾン」となりました。
始めは、ポイニーアマゾンと名前をつけようとしましたが、(ポイニークーンというギリシャ語で紫だから)後にパープルアマゾンだとわかりました。
武器の名前も「アクロランサー」なんてありきたりの名前をつけてしまいました。
さて、お次のアーサー達が向かう場所は中国。
次にはオリジナルキャラが登場致します!
どんなキャラなのかは次回で…! by結希 汐
