第四章 蘭色の髪の少女(中国編)




 中国――真の名を『中華人民共和国』。
 町にはカンフー使いや、中国美女などもいたりする。
 そんな中、二人の子供が歩いている。
 それはもちろん勇人とさくら。
 彼らは、この国にある可能性大のユーボーグを探しに来ているのだ。
「うわー! 憧れの中国だー!」
 周りを見渡しながら、はしゃいでいるのはさくら。
「さくらって、中国が好きなんだよね」
「だって、この国のホイクォロウやチンジャオロースーとか、餃子がとってもおいしいもん! 中華料理って好き!」
 そこへ、勇人の胸のポケットからアーサーが顔を出す。
「さくらは、ここに来た事があるのか?」
「ううん。ないよ」
「それでは、何故中華料理が好きなんだ?」
 アーサーはどうしてさくらが中国が好きなのか気になっているのだ。
「日本にもあるの! 中華料理店が!」
「おー! そんな話を聞くと腹が減ってくるぜー!」
 それを聞いたウォルトは自分の腹を押さえる。
「それはいいが、二人共。君達はこの国の金は持っているのか?」
「えっ…?」
「……持ってません」
 ガクッと頭を下げる勇人とさくら。
「それに、中国語話せるか?」
 またもやイザムが聞いてくる。
「うっ…!」
 イザムの鋭い質問に勇人とさくらは顔をひきつらせる。
 その時。
「私の家においでよ…」
 背後から誰かの声が聞こえる。
「えっ?」
 勇人達が振り向くと、そこには、勇人達と同い年ぐらいで、薄萠黄の服を着ていて蘭色の髪に黒い瞳の少女がいた。
 そして、首に黄金色のチョーカーをつけている。
「君は…?」
 少女は笑顔で優しく話す。
「私は石蘭。この近くに住んでるの」
「すーらん? ってあなた、日本語話せるの?」
「ええ、お父様が日本人。お父様から日本語を教わったの。家は日本人が大好きなの。お母様もいい方だから、きっとあなた達の事を言うと喜ばれるわ。だから、お腹が空いているなら私の家で食べていかない?」
「えっ、いいの?」
「ええ。さあ、行きましょう」
「ねえ、どうする?」
 小声で勇人とミクロマンに聞くさくら。
「うーん…。突然知らない人についていくのはあまり良くないな」
 相変わらず真面目に考えるアーサーだ。
「だが、このままでは野宿である」
「それに今日はもう遅い。ここは日本と違って野宿は危険みたいだな」
「そうよ、この国の決まりは日本とは決まりが違うの。ここで野宿なんてしたら、大変よ」
「えっ? 彼らがわかるの?」
 石蘭はアーサー達の存在に気付いていたのだ。
「ええ。こんな素敵な人達の言葉を無視するなんてできないもの」
「なあ、アーサー。石ちゃんも言ってんだ。今日は勇人達の意見に賛成してやろうぜ?」
 ウォルトもこれ以上耐えられないようだ。。
 仕方なく、アーサーは石蘭に任せる事にした。
「仕方ない。今日は彼女に任せよう」
「ありがとう。小男爵様方」


 石蘭の家は、家というか城のような屋敷だった。
「すっげー…」
 あまりもの大きな屋敷に驚くウォルト。
「彼女はどうやら、令嬢だな…」
 イザムも少々驚いたようだ。
「大きい…」
 呆然としながら勇人は呟いた。
「さあ、どうぞ上がって」
「は、はい」
「ん?」
 何かの気配を感じて、辺りを見回すエジソン。
「どうした?」
「いや、この近くに変な反応がしたのであるが気のせいであるな」


 石蘭の家で食事をごちそうされた二人は今夜は石蘭の家で泊まる事になった。
 石蘭に案内され、二人用の部屋に来た。
 部屋の中にはベッドが二つあって、窓から海が見える。
「ありがとう。石蘭。本当にご両親はいい人達ね」
 さくらは改めて礼を言った。
「こちらこそありがとう。今日は本当にこの国に来てくれて」
 石蘭も笑顔で話す。
「ねえ、石蘭。聞きたい事があるんだけど」
「何?」
「この辺で小さな、そうアーサー達と同じくらいの大きさのロボットを見なかった?」
 勇人はアクロイヤーの事を尋ねてみる。
「いいえ」
「そうか。アクロイヤーはここにはいないのかな?」
 さくらもアクロイヤーについて考え始める。
「あくろいやー?」
「う、ううん! 何でもない!」
 ハッと我に返って、慌てる勇人。
「そうそう! 今日は本当に泊まらせてくれてありがとう!」
「いいえ。それじゃ、おやすみなさい」
「おやすみ」
 そして石蘭は、部屋を出たのだった。


 夜中。
 二人が寝ている部屋の隣で何か音がする。
 ギギッ…。
「何? 今の音」
 音を聞いて起きるさくら。
「うん。僕にも聞こえた!」
 勇人は急いでミクロマン達を起こす。
「みんな起きて!」
 勇人に起こされて起き上がるミクロマン。
「ん…だよ。まだ夜中だぜ?」
 ウォルトはふあーっとあくびをする。
「何か隣の方で変な音がするの!」
 そしてまた、
 ギギッ…。
「ほらまた!」
「隣は確か、石蘭の部屋だな」
「とにかく、彼女の部屋に行ってみよう!」


 部屋のドアをそっと開け、石蘭の部屋を除く勇人達。
 すると、石蘭が明かりのついたローソクを持って階段を登っていく。
「石蘭、何しに行くんだろう?」
 石蘭を見ながら勇人はミクロマンに尋ねる。
「もしかしたら彼女の向かった先に何かあるかもしれないであるな!」
「彼女の後をついて行ってみよう!」
「わかった!」
 先頭になって階段を登り始める勇人。
 続いてさくらも登り始める。


 長い階段を登っていくと、そこにはアクロ兵が大量にいる。
「アクロイヤー…!」
 アクロ兵を見てつい大声で言ってしまうさくら。
「さくら!」
「!?」
 石蘭は驚いて、勇人達の方へ振り向く。
「あっ…!」
 うっかり、石蘭と目が合う勇人。
「あなた達っ…! どうしてここに?」
「石蘭、これはどう言う事なんだ?」
「私は…!」
 アーサーに尋ねられ、石蘭は戸惑ってしまう。
 その時。
「よくやった。石蘭。後はこの俺様に任せな!」
 部屋の中から声が響き渡る。
「何っ!?」
 見上げるとそこには、紫色のアクロイヤーがいた。
「俺様はマッドヴァイオレット! アクロイヤーの一人だ! お前達を殺してやるぜ!」
「一体、彼女に何をしたんだ!?」
「ちょっとした術をかけたのだ! この娘はアクロデビル様の贄となる奴だ! こいつにも貴様達、そう、そこの二人の子供と同じ力を持つのだ! その力であの方の滅亡の力は強くなるのだ! 三つの破壊の力! これさえあれば地球は滅びる!」
 マッドヴァイオレットは勇人達に指さしながら話す。
「三つの破壊力…!?」
「私達にはそんな力なんてないわ! ねえ、嘘でしょ?石蘭!」
 さくらは必死に石蘭に尋ねる。
 しかし、石蘭は押し黙ったまま。
「そ、そんな…っ!」
「嘘じゃないわ…。私とあなた達にはある破壊力があるの。さくらは抹殺の力、私は、崩壊の力。そして勇人、あなたは…」
「……?」
「根絶の力よ…。地球が滅びたその時、全宇宙の息の根を止める事ができる。生命体の命を早いと思う前に抜き取る事ができるの」と、言った。
「僕達はそんなの信じない。石蘭。もし、君がこの地球を壊したら、君も死ぬんだよ?」
「わかっている。私のこの命はアクロデビル様の物なの」
「そんなの違うわ! 自分の命は他人のだなんて! そんなの、悲しすぎるわ!」
 説得しながら、さくらは泣きそうになる。
「石蘭! その自分の命は自分のものだ! 他人のものじゃない!」
 ウォルトも必死に石蘭を説得する。
「無駄だ! この娘は我々アクロイヤーの物だ! 何をわめこうが、石蘭の耳には届かん!」
 その時。
「…黙れ!」
「!?」
「アーサー…?」
 そこには怒りに震えるアーサーがユニットシェルレーザーをマグネアームに装備する。
「ぬ!? あれは、ユーボーグ!?」
「そうだ! その少女の術を解け!」
 武器を向けながら、マッドヴァイオレットを睨み付けるアーサー。
「や、やれるものならやれ! こいつの術を解くには、こいつを倒すしかない!」
「それじゃ、本当に石蘭をやるの!? アーサー! やめて!」
 止めようとするさくらを、更に止めるオーディーン。
「待て、さくら」
「オーディーン…? 何で止めるのよ! このままじゃ石蘭が!」
 オーディーンに掴まれている腕を払おうと泣き叫ぶさくら。
「大丈夫だ。アーサーの瞳を信じろ」
「そうだよ、さくら。大丈夫。絶対に大丈夫だよ!」
 優しくさくらを落ち着かせる勇人。
「勇人…」
「アーサーは石蘭をやるつもりはない。彼を信じるんだ。今の俺達にできる事はそれだけだ」
「…うん。わかったわ!」
 頷いたさくらはジッとアーサーを見つめる。
 アーサーはユニットシェルレーザーを石蘭に向ける。
「やはりやる気か! やれ! 正義のミクロマンが人間を殺すのだだな! ハハハ!」
「笑うなら勝手に笑え!」
 アーサーは、ユニットシェルレーザーを発射準備状態にする。
 石蘭はただ、黙っている。
「………?」
「避けろ! 石蘭!」
 ユニットシェルレーザーを発射させるアーサー。
 それに気づいた石蘭は避ける。
 ドオオオオオオオオオオン!
 当たった場所は、彼女の黄金色のチョーカーと同じ物の機械だった。
 その機械が壊れるのと同時に彼女のチョーカーが崩れる。
「!」
「あっ! 石蘭のチョーカーが!」
「解説しよう! 彼女のチョーカーには催眠力があるのである! そのチョーカーを、今アーサーが壊したリモコンで操っていたのである!」
「じゃあ、もう彼女は自由なんだね!?」
 それを見て、悔しがるマッドヴァイオレット。
「くそっ、だがまだだ! リモコンとチョーカーを壊しただけじゃ、石蘭の術は解けん!」
「いくぞ! マッドヴァイオレット! マグネパワー全開!」
 そして、アーサーはユニットシェルレーザーをマッドヴァイオレットに向ける。
「や、やめろ!」
「超磁力ユニットブラスター!」
 アーサーはユニットシェルレーザーを発射させる。
 それが、見事にマッドヴァイオレットに当たる。
「ぐううううううあああああああああ!」


「さあ、石蘭。もうアクロイヤーに従う事はないよ」
「…………」
 勇人は石蘭に手を差し伸べるが、彼女は黙ったままだ。
「お願い! 心を開いて!」
 しかし、石蘭は決して口を開こうとしない。
 その時。
「ハハハハハハ! 無駄だ!」
 部屋中から不気味な声が響き渡る。
「誰だ!?」
「私はアクロデビル! この宇宙の支配者だ!」
「お前がアクロデビルか! 石蘭を自由にしろ!」
「そうはいかない。石蘭は素晴らしい力を持つ娘。そう簡単には渡せん!」
「アクロデビル! シャクネツを返してもらおう!」
 アーサーはシャクネツの事を忘れるはずはない。
「あのミクロマンか? あいつは私の体内の中で私の一部になっている! お前達に明日はない!」と、叫ぶ。
「そんな事好きにはさせないわ!」
「来い、石蘭! お前の力が必要だ!」
 しばらく沈黙していた石蘭だったが、やがてアクロデビルの言葉に頷く。
「はい、かしこまりました」
 石蘭の体が映像のように消えていく。
「石蘭!」
「待てっ! アクロデビル! 石蘭を何処に連れていく気だ!?」
「まだ始まったばかりだ! 私の部下達はこの地球の全国にいる! いくつまでユーボーグを取り返せるか楽しみにさせてもらう!」
 だんだんとアクロデビルの声が聞こえにくくなる。
「待て!」
 だが、もう声は聞こえない。
「行かないで! 石蘭!」
 さくらは、急いで石蘭を止めようとする。
 その時、石蘭は消える時に左下の床を指さした。
「?」
 その行動を見て床を見つめる勇人。
 そして、石蘭は消えてしまった…。

 夜明け。
 勇人達は、石蘭が指していた方向の床を除いてみる。
 するとそこには、四つめのユーボーグ・ミクロウィング20Wがあった。
「石蘭の指さしていたのは、このユーボーグのありかを指していたのね」
「石蘭…」
 勇人は小さく石蘭の名を口にするのだった。


 そして、中国を出るとき、石蘭の父からある頼みを受けた。
 それはユーボーグを取り返す時、石蘭を助けて欲しいとの事だった。
「どうか、娘を頼みます!」
 石蘭の父は一刻も早く石蘭を助け出して欲しいと頭を下げる。
「大丈夫です! 石蘭は必ず助け出します!」
「そうですよ! 任せて下さい! あなた方は彼女が帰るまで待っていてあげて下さい!」
 勇人とさくらは父親を元気づけるように頷いた。
「はい、わかりました!」
 その時、エジソンのコンピュータが光り出す。
「みんな! 今度はイギリスに反応が出たのである」
「わかったっ! 今すぐに向かおう! みんな行くぞ!」
 そして、ミクロマン達はイギリスに向かって旅立った。
 蘭色の髪の少女を救うために…。






――今回は中国。オリジナルキャラ・石蘭ちゃんの登場です!
勇人達の三人目の仲間にしようと思っていたはずが、敵になってしまいました。
でも、あんまり悪い子ではないですよ。
話はわかってくれると思いますがね(苦笑)。
って、自分でつくっておいて、何を勝手に言っているんだか。
石蘭の言うとおりに勇人とさくらには破壊の力なんてあるのでしょうか?
今度の向かう先は、イギリスです。次もオリジナルキャラが出てきます!
今度はどんなキャラかな?     by結希 汐v