第一章 出会いは君の机で…(日本編)





 時は2010年。
 授業が終わり、下校時間になった、東京都内の小学校の4年2組。
 生徒達はみんな次々と帰るが、教室には少年が一人だけ残っている。
 この少年こそが物語の主人公、加川勇人。
 十歳で、宇宙人とかの話が大好きなのだ。
 だから今日も宇宙人の話の本を読んでいる。
 そこへ、男子生徒が三人来る。
 この三人はいつも勇人をいじめているらしく、そのリーダーらしき生徒が、
「おい、加川! 今日もまたエイリアンの本呼んでいるのかよ!?」
 バカにしながら勇人の前に来る。
「そのうち、お前もエイリアンになるぞー!」
「おいおい。加川は元々エイリアンなんだよ!」
「あ、そっか!」と、後の二人の生徒も勇人をバカにする。
 しかし、勇人は聞いていない。
「……おい! 人の話聞けよ!」
 リーダー格の少年は怒って本を取り上げる。
「あ、返せよ!」
 勇人は急いで席を立つ。
「おっ、エイリアンが怒った!」
「怒った怒った! きっともうすぐ仲間のエイリアンを呼ぶぜ!」
「おお怖っ! 加川が悪い宇宙人と一緒に地球を占領するぞー!」
 からかいがどんどんエスカレートしていく。
「違うよ! 宇宙人は悪い奴だけとは限らないよ! いい宇宙人がいるかもしれない!」
 勇人は本を取り返そうとリーダー格の少年に近づこうとする。
「その本返してよ!」
「いやなこった! ほーら!」と、リーダーが仲間の一人に本を投げた。
「よっと!」
 本を受け止める男子生徒。
「ちょっと!」
 今度はその男子生徒から取り返そうとする勇人。
「今度はそっちの方だぞ!」
 またもう一人の仲間に本を投げる。
「もーらいっと!」
「もう! 返さないとひどいよ!」
「どうひどいんだよ!? エイリアン!」
「!!」
 とうとう、怒った勇人はリーダーに飛びかかる。
「本返せ!」
「うわっ!」
 ドーンッ!
 そのリーダーを床に叩きつけた。
 これはとても痛そうだ。
「やったなこいつ! 加川のくせに!」
「何を!」
 そんなこんなでケンカが始まってしまった。
 そこへ。
 ドカッ!
 突然後ろからリーダー格の彼に蹴りが来た。
「いてっ!」
 あまりの痛さに頭を抱えるリーダー格の少年。
「みんないい加減にしなさいよ! 勇人がかわいそうでしょ!?」
 少女の怒鳴り声が教室中に響き渡る。
 この怒鳴った少女が彼に蹴りを入れた張本人だった。
「ってー…何だよ香野!」
「さくら…」と、呟く勇人。
 この少女も物語の主人公。
 香野さくら。勇人と同じ十歳の彼女は勇人の幼なじみ。
「てめーいくらクラス委員だからって調子に乗るなよ!」
「調子に乗ってるのはあんた達でしょ!? 今日もまた勇人をいじめて!」
 男子達を睨み付けたさくらはあっさり本を取り返した。
「あっ!」
 それに驚くリーダーと男子達。
 そんな事に構わずさっさと勇人に本を渡すさくら。
「はい、取り返したわよ」
「ありがとうさくら!」
 そんな二人を見た男子生徒は、
「なあ…もしかしたら香野は加川の事が好きなんじゃないのか?」
「あっ、なるほど。だから加川をかばっているのか!」
「へーお似合いだぜ!」
 その冷やかしを聞いたさくらは、「当たり前でしょ? 今頃気付いたの? バカじゃない」と、言った。
「「「えっ!?」」」
 それを聞いて驚く三人。
「相手にしてて疲れるわ。さ、早く帰ろう勇人」
「うん」と、勇人は三人の方へ向く。
「?」
「また明日ね!」
 勇人は自分をからかった彼等に言い、さくらと一緒に教室を出て行った。


 川岸にある野原の帰り道。
 野原では、小さい子供達が楽しそうに遊んでいる。
「もう、勇人たら! 自分をいじめる奴らに向かって「また明日ね!」じゃないわよ! 悔しくないの!?」
 怒りながら歩くさくら。
「一応クラスメートだもん。ちゃんといじめっ子でも言わないと!」
 本心から言ってるのだろう勇人は憎めない笑顔で話す。
「そう言うのをお人好しって言うのよ! 今度からいじめられた場合は私に言ってよね! 助けてあげるから!」
 さくらは赤面になりながらもきっぱり言った。
「さくら…」
 勇人は笑顔でさくらを見つめている。
「だって…あなたは私の幼なじみだもん! ほっとけないよ…」と、さくらは笑顔で言った
 勇人もニコッと笑って、
「ありがとうさくら!」
「いいのいいの!」
 すると、さくらと話をしていた勇人は何かを思いだしたように空を見上げる。
「………」
「どうしたの? 勇人?」
「ねえ…さくら。この地球より遠い星に宇宙人っているのかな?」
 唐突に呟くように勇人はさくらに尋ねた。
「えっ? 宇宙人って体がふにゃふにゃの?」
 そう聞き返すさくらに勇人は苦笑いしながら首を横に振る。
「違うよ。体は僕達人間にそっくりで優しくて…友好的な宇宙人だよ」
「うーん…いるのかな? いたら勇人はどうするの?」
「もし? もしいたら…会いたいな。友達になりたい」
「そうね、私も会いたいな! 私、宇宙人の話大好きだから!」
 それを聞いてホッとするような笑顔になる勇人。
「ねえ、さくら」
「なあに?」
「…家までかけっこしない? 小さい頃よくやっただろ?」
「そうね、やろっか!」
「うん!」
「どっちが勇人の家まで早くつけるか競争よ!」
 幼なじみの少年と少女は日の暮れかけた道を走り出すのだった。

「いっちばーん!」
 一番に彼の家に辿り着いたのは元気に走った勇人だった。
「うわー勇人、足速くなったね! 負けちゃった!」
 後からさくらも走ってきた。
「えへへ! 昔はさくらの方が速かったもんね!」
「うん! あの時の勇人ってドンガメだったから!」
 笑って話すさくら。
「あーっ! 言ったなー!」
「ふふ!」
「あ、そう言えば今日も家で遊んでく?」
「うん! 勇人のお母さんが作ったエクレア食べたい!」
「お菓子目当てか…そりゃおいしいけどね…」
 さくらの目当てがお菓子と知って、勇人はガクッと頭を下げる。
 その時。
 ガタタタッ!
 郵便ポストの中から音がする。
「何だろう?」
 勇人は郵便ポストに近づき、中に入っていた小包を取り出した。
 その小包の宛名には『加川勇人様』と書いてある。
「僕宛だ。誰からだろう?」
「何か頼んだの?」と、聞くさくらに勇人はうーんと、首を傾げる。
「さあ、間違って来たのかな?」
「でも、この辺で加川っていう名字はここだけよ。住所もここよ」
「じゃあ、やっぱり僕宛かなぁ? とりあえず、部屋で開けてみよう」
 そして、勇人は自分の部屋で小包を開ける事にした。

 勇人の部屋に入り、二人はランドセルと小包を置いた。
 そこへ、勇人の母がおやつのエクレアとアイスティーを持ってくる。
「いらっしゃい、さくらちゃん」
 そう言いながら母は机におやつがのったおぼんを置く。
「おじゃましてまーす!」と、元気にさくらは挨拶した。
「ここにエクレア置いておくからね。お母さんはこれから買い物に行くから。さくらちゃん、ごゆっくり」
「はーい。行ってらっしゃーい!」
 優しい笑みで言った母に勇人はさくらに負けないくらい元気に見送った。

「じゃ、この包み開けてみようか?」
 勇人は早速小包を開ける事にした。
「うん!」
 さくらは楽しそうに頷く。
 ガサガサッ…。
 開けると中には二つの腕時計と八センチくらいの五体の人形が入っていた。
「うわー可愛いvv」
 人形を見て喜ぶさくら。
「これは時計かな?」
 勇人は、時計らしき物を見つめる。
「こんな人形見たことないわ! やっぱり何かのキャンペーンで頼んだんじゃないの?」
「うーん。頼んだ覚えないな。差出人の名前も書いてない。でも、ここにはちゃんと僕の名前が書いてあるから…」
 勇人がそう言うとさくらはすかさず、
「もらっちゃえ!」と、言った。
「…うん! この時計つけてみよう!」
 勇人は青いベルトの腕時計を、さくらは赤いベルトの腕時計をつけた。
「うわーかっこいい!」
「本当ね! デザインも可愛いし!」
「人形も見てみようっと!」
 そう言って勇人が箱の方へ向くと…。
「あれ? 人形がない!」
「えっ? うそ!?」
 さくらは慌てて箱の中を見てみる。
「さっきまで入ってたのに…何処かへ置いたっけ?」
 勇人が探し始めようとしたその時。


「私達はここだよ」


 と、何処からか穏やかそうな青年の声が響き渡る。
「えっ? 誰…? 今の声…」
 さくらは震えながら勇人に尋ねる。
「知らないよ…何処にいるんだ? まさか…泥棒…!?」
 勇人は部屋中を見回すが誰もいない。
 しかし、まだ声は聞こえる。
「君の机にいるさ。こっちを向いてくれ」
 仕方なく勇人とさくらはその声に従い、おそるおそる机へ振り向く。
「!!」
 机を見て、驚く勇人とさくら。
 一瞬声が出なくなるほどだ。
 机には五体の人形が立っていた。
「あっ! ここにあった!」
「さっきの声の人いないじゃない。気のせいだったようね」
 力の抜けた声で胸を撫で下ろすさくら。
 しかし。
「ここにいるじゃないか!」
 真ん中に立っている赤いスーツを着た人形が喋りだした。
「「えっ?」」
 驚く二人に人形は爽やかな笑顔を見せる。
「はじめまして、私はミクロマンアーサーだ! よろしく!」
 笑顔と同じくらい爽やかな声で青年――アーサーは自己紹介をした。
 勇人は緊張した声で「……ミクロマン……アーサー?」と、聞いた。
「ああ、そしてこっちが私の仲間達だ」
 アーサーは残りの四人に何やら声をかけた。
「はじめまして…イザムです」
 雪のような白いスーツを着た青年、イザム。
「俺はウォルトだ! ま、仲良くやろーぜ!」
 海のような清々しい青いスーツを着た青年、ウォルト。
「僕の名前はエジソン! よろしくなのであーる!」
 発明家のように眼鏡をかけた男性、エジソン。
「俺の名はオーディーンだ。この地球を守るミクロマンの一人だ」
 最年長のようで、たくましそうな男性、オーディーン。
 それぞれ性格が違うのを勇人とさくらは理解できた。 
 四人の紹介が終わると、アーサーは突如真剣になって話し始める。
「今、この地球に重大な危機が訪れようとしている。悪の軍団アクロイヤーが地球を狙っているんだ。
何故地球を狙うのかはまだわからない。だが、理由はどうあれ、地球を手に入れるのを防ぐのが我々、
ミクロマンとしての使命なんだ」
 アーサーの茶色の瞳には強い思いがある。
「ミクロマンって人形じゃないの?」
 恐る恐るエジソンに尋ねるさくら。
「解説しよう! 我々ミクロマンはこの地球より三万光年離れたミクロアースという名の星から来たのである。
ミクロアースはアクロイヤーに滅ぼされたのである。今度の奴らの狙いは先程アーサーが言ったように、この地球
なのである! 我々のパワーアップに必要なのは人間である君達の正義の心なのである!」
 エジソンは得意げに話すがまだ小学生である勇人やさくらにとっては難しいのだ。
「つまり…ミクロマンって…宇宙人なの?」
 勇人は息を飲んで問いかける。
「ああ、簡単に言えばな」
 イザムはあっさりと答えた。
「それで、あなた達は私達に何の用があって、この家に来たの?」
 さくらは心臓が高鳴っているようだ。
 それを聞いたエジソンはアーサーの方へ視線を向ける。
「君達に頼みがある。私達と一緒にアクロイヤーと戦ってほしい!」
 アーサーは真顔で勇人達に頼み込む。
「そんな…! わかんないよ! 突然一緒に戦えって言われてもわかんないよ! 僕達はただの小学生なんだよ!?
何もできないよ!」
 勇人は慌てて抗議する。
「そうよ! そんなの信じられないわ!」
 さくらも勇人に続く。
「確かに…いきなり信じてくれとは言えないだろう。だが、いつかは君達は私達を信じてくれるさ!」
 アーサーは信じられないと言った二人に笑顔を見せる。
 しばらくして。
「……まず、どうすればいいの?」
 考え込んでいた勇人はフッと顔を上げる。
「協力…してくれるのか?」と、問いかけるアーサー。
「勇人…協力するの?」
 さくらは落ち着いていない様子だ。
「そりゃまだ信じられないけど…彼等は本気みたいだ…本当にアクロイヤーが地球を狙っているなら地球人である
僕達が黙っているなんでできない! ミクロマン! 僕達は君達を信じてみる! いや、信じるよ!」
 勇人は勇気を出して協力を契約した。
 アーサーはそれを見てホッとしたようだ。
「ありがとう、勇人くん。君も協力してくれるかい? さくらちゃん」
 今度はアーサーはさくらに問いかける。
「えっ? う、うん! 本当に地球が危ないなら何とかしなくちゃ!」
 さくらはこくこく頷く。
「よし、これで決定なのである!」と、喜ぶエジソン。
 その表情はとても嬉しそうだ。
 後の三人もホッとしている。
「ところで、アーサー。まず、どうすればいいの?」
 戦うとは言っても一体まずは何をすればいいのかはさすがにわからない。
「この町の何処かにいるアクロイヤーを倒す! そして、我々の武器『ユーボーグ』を取り返すんだ!」
 そう言いながらアーサーは窓の外を見上げる。
「ユーボーグ? 何それ?」
 謎の言葉にさくらは気になって仕方ない。
「ユーボーグは俺達ミクロマンの対アクロイヤー戦に対抗できる最後の希望。そして、強力な武器だ。君達人間から
見れば文房具のような物だ」
「じゃあそのアクロイヤーを倒せばユーボーグは取り返せるってわけだね!」
 勇人の証言に頷くようにオーディーンは話を進める。
「ああ、そうだ。殆どのユーボーグの設計図もアクロイヤーに奪われてしまっている。それも取り返せばユーボーグ同士の
合体も可能だ」
「へえ、合体もできるの!?」と、さくらは驚く。
「さよう! ユーボーグを次々と組み立てていく事で最強の武器ができあがるのである!」
 楽しそうに説明をするエジソン。
「それじゃあ、アクロイヤーとユーボーグを探さなくちゃ!」
 そう言って勇人は座っていた椅子から立ち上がる。
「そうね!」
「「「「「了解!」」」」」
 さくらと五人のミクロマンも了解した。

 勇人達はアクロイヤーの手がかりを求め、町を歩き回る事になった。
「うーん…何か手がかりでもあればいいんだけどなぁ…」
 さくらは建物などを見ているが、町には何も異常は感じられない。
「そうだ! 公園に行ってみようよ! 今、この時間なら大勢の人が来ているはずだから!」
「そうか、公園なら人がたくさんいるから何か聞けるかもしれないな」
 勇人の考えにアーサーは賛成した。


 公園の中ではたくさんの子供達が遊んでいる。
「この公園には何か手がかりないかな?」
 そう言って勇人が辺りを見回していると。
「今回のドラマはいいすうじが撮れそうだな」
 近くのベンチで業界人らしい人が何やらスタッフらしい人と話をしている。
「何なの?」
「さあ?」
 勇人達ははとりあえずその話を聞く事にした。
「しかし、今日は撮影うまくいくんでしょうかね?」
「何故?」
「いや、放送局の最上階に特別撮影室があるんですが入れないんですよ」
 特別撮影室に入れない?
「一体どういう事だ?」
 勇人のポケットの中からその二人の様子を伺うアーサー。
「そこに入ろうとすると赤い光が発生して、そしたら顔に何かが飛びついてきて、気が付いたら特別撮影室に続く階段に
いたんです」
「へえ、わからない事って世の中にはあるもんだな」
 しばらく話を聞いているとにその放送局には何か秘密があるようだ。
「もしかしたら、そこにアクロイヤーが…」
 そう言ってアーサーに視線を向けるイザム。
「とりあえず、その放送局に行ってみよう! 何か手がかりがつかめるかもしれない!」
「そうだね、行ってみよう!」
 勇人達は放送局に行く事にして、公園を後にした。

 放送局。
 ここには大勢の業界人やスタッフが来ている。
「来たまではいいんだけど、一般人が入ったらつまみ出されるわ。どうすればいいの?」
 さくらはどうすればいいのかわからずに頭を抱える。
「いや、この中に侵入できる方法はあるのである。君達のその腕時計を使えば、体が我々と同じサイズに
なれるのである!」
 エジソンは腕時計の右のボタンに指さした。
「何だ、それを先に言ってよね!」
 さくらは自分の腕時計を見つめる。
「その時計は実はロボットなんだ。我々のサポートメカでその名も『ミクロッチ』だ!」
 アーサーの説明も何処か得意げがある。
「何だかたまごっちみたいね…」
 時計を見ながら呟くさくら。
 勇人も苦笑いするが、入れる方法はわかったのだから嬉しいのだ。
「とりあえず、小さくなろうよさくら」
 そう言って勇人はミクロッチのスイッチを押した。
「まあ、いいんだけどね」
 さくらもミクロッチのスイッチを押した。
 すると、ミクロッチが光り出し、勇人達の体はみるみる小さくなっていった。

 ミクロ化して、彼等は何とか放送局へ入れた。
「ねえ、アクロイヤーってどんな姿してるの?」
 初めて戦う敵なので、どんな姿をしているのか勇人は知りたくて堪らない。
「アクロイヤーはサイズは我々とほぼ同じでロボットの姿をしているんだ。だから、ここにもその戦闘兵がいるのかも
しれない」と、説明するアーサー。
 ギッギッ!
「えっ? 何の音?」
 勇人が後ろへ振り向くと、小さなロボットが階段を登っているのが見えた。
「何なのあれ?」
 さくらはアーサー達に尋ねた。
「あれがアクロ兵だ。やはり、ここにアクロイヤーはいる!」
 アクロ兵の姿を目撃したアーサーはアクロイヤーがここにいる事を確信した。
「じゃあ、アーサー! 急いで後を追いかけようよ!」
 勇人はアーサー達と一緒に階段を登って行った。


 最上階への階段を登り続けるミクロマンと勇人とさくら。
 そして、ようやく最上階に辿り着く。
 するとそこには、彼らの思うとおりにたくさんのアクロ兵がいた。
「あんなにたくさんも…! 本当に私達勝てるのかな…?」
 あまりもの数にさくらは怯えてしまう。
 それを見て、アーサーはさくらの肩に優しく手を置く。
「さくらちゃん、確かにこの戦闘に君達は産まれて初めて見るだろう。だが、君達のその正義の力があれば、
必ずアクロイヤーの野望をうち砕ける!」
 アーサーは笑顔でさくらを励ました。
「そうだよ、さくら。ユーボーグを取り返してこの町からアクロイヤーを追い出さなきゃ! 僕達も戦わなきゃ!」
 勇人もさくらを励ます。
「勇人…アーサー…うん! 頑張らなくっちゃね!」
 さくらは、ちゃんと戦う事を固く決意した。
「そうこなっくちゃ! なのであーる!」
 エジソンもさくらの勇気に感心したようだ。
「奴らが目を離したようだ。潜入するぞ!」
 アクロ兵達の行動を見張っていたオーディーンが合図を送る。
「よしっ! 行くぞ!」
 アーサーは立ち上がって、イザム達に指示をする。
「うん!」
 勇人も立ち上がるが、一体のアクロ兵がアーサー達に気付いてしまった。
「ギイイイイ!」
 ミクロマン達に向かって突進してくるアクロ兵。
「きゃあっ!」
 突然の敵の奇襲にさくらは驚いて経たり込んでしまう。
「大丈夫か!?」
 ウォルトは急いでさくらの側に寄る。
「私は大丈夫よ、ありがとう。でも、敵を倒して欲しいの!」
 驚いて体が思うように動けなかったが、戦う決意をしたさくらは立ち上がった。
「そうだ! こいつを何とかしないとアクロイヤーの所へは行けないよ!」
 勇人の言うとおり、今いるアクロ兵を倒さなければ先へは進めない。
「ならば倒すまでだ! マグネパワー!」
 アーサーのかけ声と共に、アーサーの左腕のブレスが大きくなった。
「あっ! アーサーの腕が!」
 突然のブレスの変化に驚く勇人。
「あれは、俺達の武器になるんだ。マグネアームと言ってユーボーグよりは威力が低いがな!」
 そう言ってイザムは大きくなった自分のブレスから剣を引き抜く。
「イザムの腕から剣が出てきたわ!」
「これは俺の専用武器、マグネソードだ!」
「行くぞ!!」
 四人に声をかけるアーサー。
「「「「おうっ!」」」」
 イザム達はその声に応えて、アクロ兵に立ち向かう。
「がんばれ! みんな!」
「負けないで!」
 アーサー達を応援する勇人とさくら。
 戦っている中、エジソンがイザムの前に来る。
「エジソン?」
「イザム! 僕はここで君の盾になって、敵の弱点を調べる! 君はそのまま攻撃するのである!」
 ようするに、エジソンが盾となりながら敵の弱点を調べている中で、イザムはそのまま敵に攻撃するという
作戦のようだ。
「わかった! 頼むぞエジソン!」と、構わず敵を攻撃し始めるイザム。
 グアアアアアアアアアアン!!!!
 見事アクロ兵を倒した。
「やったー!!」
 敵を倒したので、勝利に喜ぶ勇人。
「いや、まだだ!」
 オーディーンは何かの気配に気付く。
「どんどん出てくるぞ!」
 ウォルトの言うとおり、アクロ兵がさらに増えた。
「くっ…! このままではきりがない!」
 あまりもの数にアーサーは耐えきれなくなっているようだ。
 その時。
「皆は下がれ! 奴らの始末は私がやろう!」
 野太い声が部屋中に響き渡る。
「!?」
 この部屋にアクロ兵の他に誰かいるのか、さくらは声がした方向を見つめる。
 すると、部屋の奥から黄色いロボットが現れる。
「あれは…デモン!?」
 黄色いロボットを見てアーサーは目を疑う。
「我が名はデモンイエロー。新生アクロイヤー軍団の一人。貴様達の大切な切り札の一つは私が持っている。
返して欲しければ私を倒す事だな!」
 どうやらデモンイエローはアーサー達と戦う気はあるようだ。 
「ああ、もちろん貴様を倒す!」
 アーサーはデモンイエローを睨み付けながらマグネアームをデモンイエローに向ける。
「降参するのも今のうちだぜ!」
 得意げにウォルトはマグネアームを構えた。
「ふっ、降参するのはどちらかな?」
 あざ笑うデモンイエロー。
「何っ!?」
「アーサー! 攻撃が来るぞ!」
 イザムはデモンイエローの先攻に気付く。
「くらえ! アクロボール」
 デモンイエローが叫ぶのと同時に、右腕の大砲から弾丸がミクロマンめがけて飛び出してくる。
 ズガアアアアアアアアア!!!
「うああああああああああ!!!!」
 攻撃を見事に受けてしまうミクロマン達。
「アーサー! みんな!!」
 アーサー達のピンチに勇人は驚きを隠せなかった。
「卑怯よ! そんな大きい大砲使うなんて!」
 さくらは怒りながらデモンイエローを責める。
「悪はそれを使うのが当然なのだ! ハーッハッハッハッ!」と、高笑いをするデモンイエロー。
「僕は認めない! そんなもの!」
 そう言って、デモンイエローを睨み付ける勇人。
 その表情は怒りに満ちている。
 デモンイエローは何やら面白そうに勇人を見つめる。
「ほう、小僧。何が認められないのだ?」
 あざ笑うかのように勇人に尋ねるデモンイエロー。
「地球を手に入れようとする事だ! そして、生き物を傷つける事が認められないんだ!」
 怒鳴ると同時に勇人はさらにデモンイエローを睨み付けた。
「ならばその口を閉じてやろうぞ。死ね地球人!!」
 デモンイエローはアクロボールを勇人に向けて攻撃する。
「あっ…!」
「勇人―――!」
 さくらの叫びと同時に勇人がいた場は大きく爆発を起こす。
 ドオオオオオオオオオン!
「しまった! 勇人が!」
 勇人の危機を察したウォルト。
「これでおしまいだ…」
 だが、その時。
「デモンイエロー。私の大切な仲間を傷つける事は許さん!」
 凛々しいアーサーの声が部屋中に響き渡る。
「何っ!?」
 アーサーの声に驚くデモンイエロー。
「あっ!」
 何かの気配に気付くさくら。
 そこには気絶した勇人を抱えたアーサーの姿が。
「アーサー、勇人!!」
 さくらは勇人の無事を知り、喜ぶ。
「さくら…勇人を頼む!」
 気絶した勇人をさくらに託すアーサー。
「わかったわ! 頑張ってねアーサー!!」
 さくらは笑顔でアーサーを応援する。
「ありがとう!」
 さくらに礼を言ったアーサーも笑顔になる。
 そして、マグネアームを上へと向ける。
「マグネパワー全開!!」
 アーサーの叫びが身や心に響く。
 すると、アーサーの顔に銀色の液体でコーティングされた。
「何っ!? マグネコーティングだと!?」
 アーサーの変化に驚くデモンイエロー
「いくぞっ! デモンイエロー!」
 マグネアームに力を溜めて、走り出すアーサー。
「うおおおおおおお!!! 超磁力ブレイク!!!!」
 アーサーの叫びと共に、マグネアームのパワーがデモンイエローに打ち込まれる。
「ぐああああああああああ! これで終わりなのか…? アクロデビル様!!」
 苦しみながらデモンイエローの体は爆発を起こした。


「勇人、勇人!」
 勇人を起こすさくらの声が部屋中に響き渡る。
「う…ん」と、さくらの今にも泣きそうな声で目を覚ます勇人。
 目を開けると、そこにはさくらとミクロマンが。
「気が付いたであるな…よかったのである!!」
 勇人の無事を知るエジソンはホッとした。
「よかったな、さくらちゃん!」
 さくらの肩に手を置いて勇人の無事を喜ぶウォルト。
「さくら…あっ…デモンイエローは!?」
 勇人はデモンイエローの事を思い出して、ガバッと起きあがった。
「あいつはアーサーが倒したわ。私達勝ったのよ!」
 結果を話すさくらの表情は喜びで満ちている。
「それより、君が無事でよかった…もし君がやられたら私達は…!」
 何かを言いかけようとしたアーサーだったが、途中まででやめた。
「アーサー?」
「いや、何でもない」
「?」
 一体アーサーは何を言おうとしたのか、勇人には全くわからない。
 そんな時、イザムが何かに気付く。
「みんな、あそこに隠し部屋みたいなのがあるぞ」
 イザムの指さす方向には先程デモンイエローがいた場所だった。
「何々? あっ、ホントだ! 何かあるよ!」
 どうやらさくらも気付いたらしい。
「とりあえず、見てみよう。勇人、立てるかい?」
 横になっていた勇人に手を差し伸べるアーサー。
「うん、ありがとう。アーサー」と、笑顔で勇人は礼を言い、喜んでアーサーの手をとる。
 そして、みんなで隠し部屋を覗いてみると。
「何これ?」
 部屋の中を見て首を傾げる勇人。
 部屋の中には赤く輝くバズーカがある。
 すると、エジソンは驚いた表情で、
「こ、これは…! ユーボーグなのである!!」
「これが…ユーボーグ!?」
「何だかきれいね…」
 赤いユーボーグを見て、一瞬言葉を無くす勇人とさくら。
「ああ、やはりここにあったんだな。パワーバースト!」
 アーサーはそのままユーボーグをゆっくりと手に取る。
「じゃあ、これで一つ取り返せたのね!」
「ああ!」
 さくらは地球制服の阻止が一歩成功できた事を喜び、安心した。
 そして、ユーボーグ・パワーバーストを手に入れた。
 だが、その時。
「ふん! ユーボーグが取られたか!」
 突然、部屋の何処からか声がアーサー達の耳に聞こえてくる。
「誰だ!?」
 驚いたアーサーは部屋中を見回す。
「何処にいるんだ!?」
 勇人も驚きながら、一緒に見回す。
「あそこにいるぞ!」
 ウォルトの指さす方向を見上げると、青白いアクロイヤーが現れた。
「お前は…!?」
 アーサーは緊張しながらもアクロイヤーに尋ねる。
「我が名はアーデンクール。アーデンの一人! 10年前に貴様達に倒されたアーデン3将軍と同類だ!
もっともあのデモンイエローとは、力がちがうがな!」
 勝ち誇った言い方をしながらアーサー達を見つめるアーデンクール。
「10年前…?」
 勇人は10年前という言葉に耳を疑う。
「一体何の目的でユーボーグを奪った!?」
 警戒しながら、オーディーンもアーサーに続いて問いかける。
「それはあの方の野望に使えるからだ」
「やっぱり、あんた達の裏に誰かいるのね!? さっきもあのデモンイエローが言ってたわ! アクロデビルって誰なの!?」
 さくらは、怒りを抑えながらもアーデンクールを睨み付けている。
「ほう、あの方の名前を聞いたそうだな? 役に立たない人間に知られるとはな」
「誰が役に立たないですって…!?」
 このアーデンクールの言い方はまるでさくらをバカにしているように聞こえる。
 さらに、怒りを覚えるさくらだった。
「それより、聞きたい事がある」
 アーサーはパワーバーストを後ろに隠し、アーデンクールに再び問いかけた。
「何だ?」
「シャクネツをどうした!?」
「シャクネツ…?」
 さくらはシャクネツという言葉に首を傾げた。
「シャクネツ? ああ、あの出来損ないの司令官か。安心しろ。殺してはいない」
「じゃあ、シャクネツはお前達の手に落ちたのか!?」
 イザムは思わず手に持っていたマグネソードを振り上げそうになった。
 しかし、エジソンはそれを止めた。
「イザム…今は話を聞くのが先決なのである…!」
 エジソンの握り拳は震えている。
 イザムはエジソンも悔しいのがよくわかった。
「そうだ。あのミクロマンは我々が預かっている。返して欲しければ私の後を追い、倒す事ができれば、奴の居場所を
教えてやろう。もちろん私が持っているユーボーグも渡すのを約束しよう!」
 そう言って、アーデンクールはアーデンバイクに変形する。
「待てっ!」
 急いでアーデンクールが逃げようとするのを阻止しようとするアーサー。
 しかし、スピードはアーデンクールの方が速かった。
「ついでに言っといてやろう! ミクロマンは貴様達やシャクネツ以外全員死んだ! アクロデビル様が葬ってくださったのだ!
だから、ミクロマンはもうお前達しかいないのだ! さらばだ!」
 アーサーに向かって吐き捨てるように言ったアーデンクールはそのまま飛び去った。
「おい! 待ちやがれ!!」
 しかし、ウォルトの願望にもむなしく、アーデンクールはいなくなってしまった。
「俺達がいない間みんなは…シャクネツ以外はもう死んでいたなんて…チェンジトルーパーズやタイタンズまでもが…!」
 仲間の死に悔しがるイザム。
「何て酷い事をするんだ…許せない…! アーサー! あいつの後を追いかけようよ!」
 悔しがって震えているアーサーの腕に触れて勇人は強い瞳をアーサーに向ける。
「何だって!?」
「危険すぎるぞ!!」
 勇人の発言にアーサーとオーディーンは驚いてしまう。
「わかってるわ…私達だって怖いわ…でも私も勇人の意見に賛成よ! この地球が滅びるのを指くわえて見ているわけ
にはいかないわ! 私達だってあなた達と一緒に戦うって決めたんだもの! だから、戸惑うかもしれないけど…後悔はしないわ! 一緒に連れて行って!!」
 勇人に続いてさくらも強い瞳と心でアーサー達に頼み込む。
「行こうよ! アーサー! みんな!」
 勇人のその表情はとても勇ましく、本当の戦士のようだ。
「勇人…さくら…もしかしたらもう二度とこの町に帰れないかもしれないぞ?」
 しばらく沈黙していたアーサーだったが、勇人とさくらに覚悟があるか確かめようとする。
「覚悟はできてる!!」
 二人は声をそろえて答えを出した。
「そうか…それなら行こう!!」
 アーサーは二人の答えを聞いて立ち上がった。
「おうっ!!!!」と、後の4人も立ち上がるのだった。