青い砂漠



「誰かいるのか?」
 アーサーはそっと訪ねる。
 そしたら、それは勇人だった。
「アーサー、どうしたの? 眠れないの?」
 勇人はゆっくりとアーサーに聞く。
「ああ。この暑さで目が覚めたんだ。だから、少しこの辺りを見つめていようかと思ってな。勇人もそうなのか?」
「うん…」
「そうか。もし、よかったら…。その、少し話をしないか?」
 アーサーは笑顔で、勇人を誘う。
「うん!」
 元気に返事をする勇人。
「ありがとう」
 笑顔で礼を言うアーサー。
 勇人は、アーサーの隣りに座った。
「ねえ、アーサー」
「ん? 何だ?」
「君って、家族とか兄弟とかいる?」
 突如アーサーに質問する勇人。
「えっ?」
「いや、だって君達ミクロマンにもやっぱり家族がいるかなと思って」
 アーサーはしばらく沈黙していた。
 そして夜空を見上げ、
「……兄がいる」
 アーサーはゆっくり呟いた。
「えっ?」
「ミクロマンの中で最強で、優しくて、私の自慢の兄なんだ。ミクロアース崩壊の時に行方不明になってしまったが…」
「あっ! ごめんね、アーサー! 僕ったら、そんな悲しい事知らないで聞いちゃった!」
 勇人はそれを聞いて悲しい表情になる。
「えっ? いや、君のせいじゃない! 勇人は悪くない! 兄は死んだとは決まっていない。もしかしたら、何処かで生きているかもしれないさ!」と、言った。
「アーサー…」
「大丈夫! 私はみんながいる! イザム達やさくら、そして勇人がいる! 寂しくないさ!」
 勇人を元気づけるように笑顔で笑いかけるアーサー。
 しばらくして。
「…アーサーって、宇宙戦士なんだよね?」
「ああ」
「仲間の間でケンカなんてなかった? でも、宇宙戦士の間ではないか…」
 がっくりしたように顔を伏せる勇人。
「いや、昔は結構ウォルトとケンカしていたな。どうしたんだ? 勇人。何か悩みでもあるのか? 私で良ければ話してくれ」
 アーサーは勇人が元気じゃないのが気になって仕方ない。
「うん。僕って、宇宙人の話って大好きなんだ」
「さくらもか?」
「うん。そう言う話で理解してくれる人ってさくらだけなんだ」
「何故だ? 他にはいないのか?」
「僕、よく学校でいじめられてたんだ。宇宙人の話が好きだから宇宙人の仲間だとか、僕が怒ったら、エイリアンが怒ったとか、仲間のエイリアンを呼んで、地球を壊すぜ、なんて言われてた。僕はそんなの無視してきたけど、優しい宇宙人、そう君達ミクロマンみたいな素晴らしい宇宙人の悪口も言われるとつい、カッとなってしまうんだ…」
 勇人は過去に言われた事を思い出して、少々泣き顔になる。
「勇人…」
「もし、みんなに言ったらどうなるかな? またいじめられるのかな?」
「そんな事ないさ。むしろ驚くと思うぞ? 君達がこの地球を救ったなんて言ったら、信じるかはどうかわからないが、びっくりすると思う。
私も、ウォルトに自分は年下だけど、リーダーなんだって、言ったらウォルトはものすごく、驚いていた。その後ケンカになったんだがな」と、言った。
「えっ? どうして?」
「年下の命令が聞きたくなかったみたいだ。生意気だと思ってたらしくて、よく私に因縁つけてきた。しばらくケンカ続きだが、その後はいつの間にか
仲良くなっていた。もし、君がケンカしたらその子達ともいつかは必ず友達になれると思う、いやなれる! 君達の話を信じてくれる! 私はそう信じてる。
何があっても、私達はいつでも勇人とさくらの側にいるから…!」
 優しく勇人の肩に手を置くアーサー。
「もっと、自分に自信を持ってくれ! 私でよければいつでも相談に乗る!」
「ありがとう。アーサー!」
「嬉しい時や辛い時もずっと一緒だ」
「アーサー…」
 勇人は小さく笑って、右手の小指を立てる。
「…それは?」
 アーサーは勇人の小指を見ながら首を傾げる。
「約束する時のゆびきりげんまんだよ。これをやったら、その約束は守るんだ」
 約束の仕方を笑顔で話す勇人。
 アーサーは、「ああ、わかった!」と、言って彼も小指を出す。
 そして、二人の小指が絡み合い、今、ここで約束した。
「懐かしい…。あの頃と同じだ」
「どうしたの?」
「いや、何でもない!」
「そう? ならいいんだけど」
「さあ、そろそろ戻ろうか? 送るよ」
 アーサーは勇人にそっと手を差し伸べる。
「うん! 行こう!」
 勇人はギュッとアーサーの手を握り返す。
 二人は手をつないで、みんなの所に戻った。