第2話 ミクロマンと心のドキドキ(アーサーバージョン)
「いやぁ…十年経ってたのはわかってたけど…美人に育ったなぁ…」
夜の森の中で、アリカの張ったテントの中で、ウォルトはアリカを見て驚いている。
「本当である…まさかこれ程に成長していたとは…」
エジソンもアリカの美貌にたまげているようだ。
「そんなに言わないでください…(////)」
恥ずかしいのか、アリカの頬が淡く紅く染まる。
「いや、よく元気でいてくれた。会いたかったぞ、アリカ」
オーディーンも久しぶりにアリカに会えたのか声が嬉しそうだ。
アリカは自分のハンカチを自分の布団の横に敷いて五人を乗せる。
「耕平達はどうした?」
イザムの質問にアリカは悲しそうに顔を伏せる。
「それが…私が目を覚ました時は誰もいなかったんです…みんな何処へ行ったのかしら…?」
アリカは両手で顔を覆いながら泣き出す。
「真悟お兄様達もいなくて…お父様や…耕平伯父様までいなくなるなんて…」
アーサーもアリカと同じ事を考えていた。
みんなは…耕平は何処へ行ってしまったのだろうか?
耕平達との出来事を思い出しながら、アーサーも顔を伏せる。
「大丈夫である! アーサー、アリカくん! 僕のコンピュータにはミクロッチを探知する機能をつけておいたのであーる!」
エヘンと得意げに話すエジソン。
しかし…。
「その事なんですが…私もそのコンピュータを持っているんです…それを使って探したら、お父様のミクロッチを見つける事はできたのですが…もう壊れていて…」
「「「「「何っ!? 祐太のミクロッチが!?」」」」」
祐太のミクロッチと聞いて、五人は一斉に驚く。
「そ、それを見せてくれないであるか!?」
エジソンは祐太が気になって仕方がない。
「え、ええ。持ってきています。手がかりになると思って…」
アリカは自分の荷物から、ボロボロになったミクロッチを取り出して、アーサー達に見せる。
「これです…」
「この緑色のベルトは間違いない…祐太のミクロッチである…」
変わり果てたミクロッチを見て、エジソンは声を低くしながら話す。
「祐太…一体何が起こったんだ…? この地球で…」
オーディーンはミクロッチを見つめながら、幼少時の祐太を思い出す。
「この壊れ方は…ただ事じゃない…まるで誰かが破壊したような…」
イザムはミクロッチを調べながら、俯く。
「…とりあえず、皆さん疲れたでしょ? 今日はもう休みましょう…」
そう言って、アリカは自分のバンダナを解く。
「その布…まだ持っていてくれていたんだな…」
久しぶりに見るバンダナにアーサーは心が安らぐ。
「ええ…だってこれは私の大切な宝物なのだから…」
アリカはバンダナを見て小さく笑う。
「ああ…今度はもう君を傷つけさせない…君は我々が守る…!」
アーサーは自分達の決意をアリカに告げたのだった。
翌朝になり、アーサーはフッと目を覚ます。
「う…ん…もう朝か…アリカちゃん?」
起きあがると、イザム達は眠っているのだが、アリカの姿が何処にも見あたらない。
「まさか…!」
嫌な予感を感じて、アーサーはテントから出る。
外にもアリカの姿は見えない。
「(一体何処へ行ったのだろう…?)」
アーサーが、辺りを見回していた時…。
「ふふふっ!」
何処からか笑い声が聞こえる。
幼い声だから、おそらくアリカの声だ。
「(気になる…)」
アーサーは、声のする方へ足を進める。
段々声が大きく聞こえるようになり、やがてアーサーの足は河原まで来た。
「(あっ…)」
アーサーが目にしたものは、靴を脱いで、足の裾をまくり上げて、川の水に足だけを冷やしているアリカだった。
「冷たくて気持ちいい…きゃっ!」
アリカは、自分の足を小さくつつくものを見つめる。
その正体は小魚だった。
痛くないのだが、どちらかというとくすぐったい。
「やだわもう、くすぐったい…!」
それでも笑顔を絶やさない大地の髪に大地色の瞳の少女だった。
ガサッ!
アーサーが、木々の間から出てくる。
「あっ…!」
小さな戦士のリーダーの姿を見つけたアリカは川から出る。
「ごめんなさい、起こしちゃったかな?」
タオルで足を拭きながら、アリカはアーサーに問う。
「えっ? いや、こちらが目を覚ましたかったから起きたんだ。アリカちゃんは何をしてたんだい?」
「私は、ちょっと足を洗おうとして…ここの川の水が冷たくて気持ちいいの」
アリカはスッと自分の足を伸ばす。
「それに…」
「それに?」
「すごく…綺麗なんです…小さい時、よく真悟お兄様や大輔お兄様が連れてきてくれた河原みたいに…」
その時、アリカは河原で真悟と大輔と一緒に遊んだ頃を思い出す。
「確かに綺麗な河原だ…だが…」
アーサーは何かを言いかける。
「アーサー?」
アーサーの言いかけにアリカは首を傾げながら続きを待つ。
「河原も綺麗だが…アリカちゃんも綺麗だ」
「えっ…?」
サァァァァアアアアッ…。
川のせせらぎが森中にこだまする。
「えっ…ええっ…(////)!?」
「どうしたんだい? 私の顔に何か?」
アーサーの悪気のない素晴らしい笑顔にアリカは赤面になる。
「別に何もついてないけど…ええっと…」
何と答えればいいのかわからずに戸惑ってしまうアリカ。
「河原も綺麗だし、アリカちゃんも綺麗だよ」
アーサーは更に笑顔をアリカに向ける。
その時…。
「ア〜サ〜! アリカちゃ〜ん! 腹減ったぞ〜!!」
この元気な声はウォルトだ。
「…そろそろ戻ろうか、アリカちゃん」
「あ、ええ…」
未だに戸惑っていたアリカはハッと我に返る。
「きっとウォルトだけじゃなくて、イザム達もお腹空いているかもしれませんね。私、これでも料理は得意ですよ♪」
「そうか、それは楽しみだな」
また更に笑顔光線を発射させるように微笑むアーサー。
アリカはまた赤面になるのだった。