第二章  時空の運命‐さだめ‐は鼓動のように

 ――藤の香りを乗せた風が部屋の中に入り込み、少女の短めな紺色の髪を撫でる。

(あ、いい匂い…)

 藤の香に気づいた少女は、ふと部屋の外を見る。

 するとそこには、見事なまでに咲き乱れる藤の花…。

「……あんなにすごい藤、今まで見たことなかったかも…」

 艶やかな藤に感心しながら少女――は自分の着ている服をもう一度眺めた。

「…そもそも……こんな風景も、服も……実際に見たことなんか無かったけど…」

 そう、歴史や国語総覧の本とかでしか見たことは無かった。

「はぁ……どうして、こんなことになっちゃったんだろう……」

 自分を包む、浅葱色の衣を見つめて、は溜め息をついた。



 突然この世界――『京』に迷い込んでしまった(本人はそう思っている)少女・星風寺は、辿り着くなり、鬼の一族の者と名乗る女性・シリンに狙われた。

 シリンの目的は、を誰かの――『お館様』なる者の元へ連れて行くことだった。

 だが、『鬼』から京を守る『龍神の神子』に仕え、その神子をも守護する役目を持つ存在――『八葉』と呼ばれる四人の男性に、は助けられた。

 そして、シリンを退けた八葉の中の一人に、詳しい話は神子の元でと…そう言われたので、彼らに連れられて現在地――土御門殿、別名『藤姫の館』に来たのである。

 来たはよかった、だが…すぐに神子に会えるでもなかった。

 館に着くと八葉の四人は先に行ってしまい、は『その前にお召し替えを』――と言われて、案内された別室で着替えをすることになってしまったのだ。

 そうして、用意されていたらしい着物を着たのだが……。

 着物と言っても、上着を脱いだ制服の上に着られる狩衣で……それは綺麗な青い浅葱色に染められたものだった。

「はぁ…」

 とりあえず着替えはしたけれど、早く誰か来ないものかなぁ…と、はまた溜め息をつく。

「……そういえば、私があの人達を初めて予知して見えた時は、もう何人かいたような気がするんだけどなぁ…?」

 そう言っては、初めて予知したときに見た八葉を思い返していた。




「よう、あかね! 今帰ったぜ」

 天真の快活な声と共に、彼を含めた地の四神組の八葉が、あかねの部屋に帰ってくる。

「お帰りなさい、天真くん達! ご苦労様」

 出迎えたあかねの、彼女の部屋にはもうすでに天の四神組の八葉が戻ってきていた。

「あれ? 何だ、頼久たち、もう帰ってたのか」

「ああ。少し前にな」

 尋ねた天真に微かな笑みを返して、頼久は答えた。

「丁度いいところに帰ってきてくれたね、天真くん達! 今から頼久さん達にも、時見の少女のことを訊こうと思ってたの。それぞれどういうことがあったか、教えて下さい」

 あかねはポンッと手を叩いて言った。

 皆(一部除く)頷いて、まず鷹通が話を始める。

「時見の少女殿はそのお力ゆえに、我々のことも、この京のことも、あらかじめ予知されておいででした」

「へぇ、予知? すげぇな」

 天真が感心すると、永泉が頷いて続きを話す。

「初めは震えておられたので、戦闘や怨霊が恐ろしいのだろうと思っていたのですが…そうではなく、頼久が怪我するのを予知されていて、それを案じてのことだったのです」

「すごかったんだぜ、この頼久を助けちまったんだからな!」

 そう言ってイノリは頼久の背中をバン、と叩いた。

「へぇー、頼久さんを助けちゃうなんて本当にすごいね」

「はい。私も少々驚きました。ですが、感謝しています」

 あかねの言葉に頼久は礼儀正しく答えた。

「そうだね…。あ、それで空癒の少女の方はどうだったの?」

 あかねが地の四神組に話をふると、

「問題ない」

 泰明はきっぱりと答えた。

「何言ってんだ! あっただろーが!」

「泰明さん〜!」

 一気に脱力した天真と詩紋は項垂れる。

「本当に面白いね、泰明殿は。君に言わせれば、『終わりよければすべて良し』ならぬ、『終わりよければ問題なし』ということなんだろうが…神子殿が訊いておられるのだからきちんと説明した方がいいのではないかな?」

「…わかった」

 友雅の言葉に、泰明は案外あっさりと頷いた。

 このとき、その場にいた誰もが友雅をさすがだなと思わずにはいられなかった。

 何だかんだ言っても、やはり八葉の最年長なのである。

「終わりよければ…って、何かあったの?」

「あったも何も大変だったんだぜ!」

 尋ねたあかねに、荒っぽく答えた天真。

「まあねぇ…。あの鼻っ柱だけは強い鬼の少年が、怨霊を出してきた上に、何も知らない空癒の少女殿に我々が悪人だとか言い出してね。すっかり混乱させてしまったんだよ」

「そ、そんなことがあったの? それってセフルが?」

「うん……」

 友雅の説明を聞いて少し厳しい表情で尋ねたあかねに、詩紋は辛そうに頷く。

 しかし――。

「だが結局、空癒の少女は鬼を信じなかった」

 泰明のはっきりとした言葉に、その場の雰囲気が少し晴れた。

「ああ。懸命に戦う俺たちの姿を見て、俺たちを信じてくれたんだ。ま、俺も泰明も火傷負ったりなんかしたもんだから、その辺が大変だったけどな!」

 内容の割にカラッとした笑顔で言う天真に、イノリは首を傾げる。

「火傷? お前らどこに火傷なんかしてんだよ?」

「ここだよ、この腕。ここに火傷負ったんだけど…」

 その火傷の痕すらもう残っていない左腕を指して、天真が言いかけると、

「――空癒の少女が、治してくれたのね」

 あかねが、天真と泰明を見据えて言った。

「あ、ああ。そうだ…」

「神子。知っていたのか?」

「うん…」

 少し驚いて訊く天真と泰明に、あかねはしっかりと頷く。

「つまり、みんなあのふたりを助けたんだけど、同時に助けられたってことなのね」

「…まあ…」

「そういうことになりますね…」

 顔を見合わせて、天真と頼久が答えた。

「やっぱり……時見の少女と、空癒の少女……。このふたりが必ず私たちの助けとなってくれる…これからの戦いに……!」

 ふたりの少女に確信を感じて、あかねは藤の香を運ぶ風が吹き抜ける空を見上げた。




「……ん? 誰か来たのかな…?」

 ひとり、部屋で待っていたは、足音が聞こえた方に振り向く。

「こちらでございます」

 女官の声がして、御簾が開かれるとそこには、春の新芽のような萌葱色の衣を着た少女がいた。

 年頃は自分と同じくらい、胡桃のような茶色の長い髪に藍色の瞳をした少女……。

「…って、!?」

 は服装の違いから一瞬、その少女がであることに気づかなかった。

 だが、目の前にいる少女は間違いなく、自分のたったひとりの親友なのだ。

「え………ちゃん…!?」

 当のもまた、そこで会った少女がであることを認識するのに時間が掛かった。

 しかし、であることが判ったは、その瞳を潤ませていく。

ちゃん…本当にちゃんなの!?」

「そうだよ…! よかった、! 無事だったんだね!」

「うん!」

 二人は手を取り合い、再会を喜ぶ。

「私、いきなりどこかの山にいてね、変な男の子が一緒に来いって言ってきて……でも、八葉っていう人達に助けられて、ここに連れてきてもらったの」

 事の次第を説明するに、は頷く。

「そっか…そうだったんだね。私も似たような感じだったよ」

「ねぇ、ちゃん。私たち、どうなっちゃったの?」

「私にもよく判らないけど……ここに来る前、予知したこと、話したよね?」

「う、うん…何か、平安時代みたいなって……あ…それってこのこと!?」

「どうやらそうみたい。私たちが、何人かの男の人たちと一緒にいたって言ったでしょ?それが、あの八葉って人達だったんだよ」

「じゃあ……これから、どうなるのかな…?」

「…わからない。でもさっき、八葉の人達が、龍神の神子って人が詳しいこと説明してくれるって言ってた」

「あ、それ、私も言われたよ…」

 がそう言葉を返したとき。

「お待たせ致しました」

 幼い可憐な声が聞こえた。

「え…?」

 二人が振り向くと、長い藤紫色の髪をした幼い少女が丁寧に頭を下げる。

「私は、龍神の神子様にお仕えしている星の一族の末裔、藤と申します。時見の少女様、空癒の少女様。お召し替えがお済みのようでしたら、神子様の元へ御案内致します」

 幼いのにしっかりと大人びている少女に、はしばらく驚いたように沈黙する。

「あの…どうか致しましたか?」

 軽く首を傾げる藤姫。

「い、いえ何ていうか…」

「とってもしっかりしてるなぁと思って…」

 は我に返ると共に藤姫に感心した。

「有り難うございます」

「じゃ、じゃあ、案内お願いします。その…龍神の神子さま…の所に…」

「はい。どうぞこちらです」

 の声にしっかりと頷いて、藤姫は歩き出し、二人はそれについていった。



 館の長い廊下を歩きながら、はそっとに話しかける。

「ねぇ、ちゃん。龍神の神子様って、どんな人だろうね」

「うーん……」

「あの八葉っていう人達の主なんでしょ? やっぱりすごく偉い人なんだろうね」

「うん、多分ね。…あ、でも私と同じくらいの年頃だって聞いたような…」

「え…?」

 が鷹通に言われたことを思い出していると、前を歩く藤姫の足が止まった。

「さあ、こちらですわ。神子様も八葉の方々もお待ちです」

 藤姫は二人に、にっこりと微笑むと、部屋の御簾を軽く上げた。

「神子様、時見の少女様と空癒の少女様をお通し致します」

 丁寧に頭を下げて、部屋に入っていく藤姫。

 は緊張しながら藤姫に続いて部屋に入る。

 するとそこに居たのは、先程会った八葉の面々とそして――。

「どうぞ、入って!」

 明るい声と笑顔で迎えてくれた、二人とさほど歳の変わらない少女だった。

 ふわっとした桃色の髪に、緑色の双眸をした可愛らしい少女。

「あ…あの、あなたが…?」

「龍神の神子…さま?」

 安堵と呆然の混じった表情と声で尋ねたに、あかねは少し恥ずかしそうに答える。

「う、うん。まあね。でも本当はあなた達と同じ世界から来た普通の女子高生だよ!」

「え…!?」

 同時に驚く二人。

「それに、あそこにいる天真くんと詩紋くんもそうだよ。私たち、一緒にここに来たの」

「えぇ…!?」

「あ…そういえば…」

 は再び驚くが、は天真の話を思い出す。

「あ、ごめんね、紹介が遅れて」

 あかねはパッと気づいて二人にちゃんと向き直った。

「初めまして! 私は元宮あかね。ここでは龍神の神子って呼ばれてるけど、本当は十六歳の高一!」

 元気な笑顔で生き生きとしているあかねに、の中から緊張が消えていく。

「あなた達の名前、聞いてもいい?」

「あ、うん。私は星風寺。十六歳で高校一年」

「私は雫月です。十五歳の同じく高校一年生…」

「わぁ、同い年なんだね。何だか嬉しいな!」

「う、うん。私も嬉しいっていうか、安心したよ」

 明るく本当に嬉しそうに言ったあかねに、がそう答えてると、が「私も」と頷いた。

「…あ、あの、あかねちゃん。色々と訊いてもいいかな? 私たちはどうしてここに来たのかとか……ここが、どこなのかとか…」

「それも勿論だけどさ、オレ達にも詳しいこと説明してくれよな」

 が遠慮がちに尋ねたのに続いて、イノリが口を挟む。

「うん、わかった。でもまずは、ちゃんとちゃんに、この京のことから説明をするね」

 そう言って、あかねはこの地に初めておとずれたふたりの少女に話し始めた。


 ――ここが『京』という、龍神と、東西南北の四方を青龍、白虎、朱雀、玄武という四神の結界によって守られている、自分たちの世界の平安時代に酷似した異世界であること。

 そして、京の人間とは異なった外見を持つ、鬼の一族と呼ばれる者たちが、怨霊や妖術を使って結界を穢し、京を支配しようと企んでいること。

 それを阻止するために自分たちが選ばれ、呼ばれたのだということ――。


「鬼から…京を救う存在…?」

「そう。それが私、龍神の神子と、ここにいる八葉のみんななんだ」

 の声に答えて、あかねは八葉の皆を見た。

「あ、そういえば、八葉のみんなは自己紹介したの?」

「いいえ。まだですよ、神子」

「お二人の少女殿と我々全員が揃ったときがいいかと思いまして」

 そう答えた永泉と鷹通に、あかねは成る程と頷く。

「そうだね。ありがとう、みんな。じゃぁ、青龍の頼久さんからどうぞ!」

「わ、私からですか…?」

 いきなり指名されて、少々戸惑う頼久。

「うん! 二人ずつ、それぞれ四神のコンビで紹介して」

「こ…こんび…とは…?」

 あかねの口から出た知らない単語に、頼久は困惑する。

 案外、鳶(トンビ)を連想しているかもしれない。

「ああもうだから! 俺たちって天と地のペアだろ…って、ああ! じゃなくて!」

 天真はうっかりまたカタカナ語を使ってしまったことに気づいて声を上げた。

「つまり、青龍の頼久さんたち、朱雀の僕たちっていう風に、二人一組ずつで紹介していけばいいってことでしょう?」

 ニコニコと微笑みながら詩紋が言うと、

「そうなの!」

「おう、そういうことだ!」

 助かったとばかりにあかねと天真が頷いた。

「何だ、それならそうと言えばいいじゃねーか。何であんなややこしいこと言うんだよ」

「だ…だって…」

 イノリの言葉に口ごもるあかねと、ついそっぽを向いてしまう天真。

 元は現役高校生の二人が現代語を使ってしまうのは仕方がないことなのだが、ここではそれは通じないのだ。

 このとき、は、ここでは無闇にカタカナ語は使ってはいけないと無言の内に認識した。

「さ、さぁ、頼久さん! どうぞ!」

「は…はい…」

 あかねに促されて、頼久は少々ぎこちなく二人の方に向き直る。

「天の青龍、源 頼久と申します。左大臣家と、そして龍神の神子殿に仕える武士です」

 深い蒼い髪に、紫苑色の双眸の青年・頼久が礼儀正しく名乗った。

「俺は森村天真だ。地の青龍って呼ばれてるが、元は俺もお前たちと同じ現役高校生だぜ!」

 オレンジに近い赤茶色の髪と、同じ色だが少し野性的なものを感じさせる瞳を持つ天真が明るく言うと、

「あ、あの…天と地って何ですか?」

 おずおずとが尋ねた。

「八葉はね、四神一体につき、天と地の属性の二人が選ばれるの」

「ああ、だから八人なんだね」

 あかねの説明に飲み込みが早いと、も少々遅れてだが何とか納得する。

「じゃ、次はオレ達だな!」

 先程からうずうずしていたイノリが張り切って言い出す。

「オレの名はイノリ! 天の朱雀だ。鍛冶師の見習いなんだぜ!」

 あふれるような元気の良さを持つイノリに、詩紋も負けずに続く。

「僕は流山詩紋です! 本当は中学三年生なんだけど、今は地の朱雀って呼ばれてます。あっ、あかねちゃんと天真先輩の後輩です!」

 そうなんだ、と二人が納得すると、鷹通がすっと前に進み出る。

「私は天の白虎、藤原鷹通と申します。内裏の治部少丞をしております」

 松葉色の長い髪に、濃い茶色の瞳の前に眼鏡をかけた青年・鷹通が、穏やかな微笑みを二人に向けた。

「順番からいくと次は私かな?」

「そうですよ。ちゃんと自己紹介して下さいね」

「ああ、わかっているよ、神子殿」

 釘をさすようにあかねに言われて、友雅は軽く笑う。

「私は橘 友雅。地の白虎だよ。あと一応、左近衛府少将でもあるんだがね」

 深緑の柔らかい髪と青緑色の瞳の友雅が、飄々とした表情で言った。

 すると鷹通が「そんな、一応などと…!」と突っ込んで言うが、友雅は変わらずに笑ってかわしてしまう。

「次は私ですね。改めて初めまして。天の玄武、永泉と申します。仁和寺に出家した……一応、法親王です」

 楝のような青紫色の髪と双眸を持ち、繊細で儚げな風貌の永泉が優しい微笑みで答えた。

「永泉様まで…」と言う鷹通に、その後ろで面白そうに笑む友雅。

 しかし、そんな鷹通を遮るように、低い声が響く。

「私は地の玄武、安倍泰明。安倍清明様を師に持つ陰陽師だ」

 簡潔にそう答えた泰明は、薄い鶯色の長い髪と端麗な顔立ちを持つ青年。

 だがその顔は左半分が何かの呪いのように白く、左右とで色が異なる瞳はまるで琥珀と翡翠を思わせた。

「とまあ、この人たちが、京を救うために私と一緒に戦ってくれてる八葉のみんな。大体、解ってくれたかな?」

 あかねに訊かれたは、取りあえず…というように、頷く。

「ついでに龍神の神子のことも説明するとね、この京の守り神である龍神の声を聞けて、京の龍脈を流れる五行の力を用いれる唯一の存在…なんだって。何だかよく解らないけど、そのおかげで八葉のみんなと術が使えたり、怨霊を封印したりできるらしいの」

 ――あかねの話す展開の凄さに、は顔を見合わせる。

 確かに穏やかな平和な世界でないことは、ここに来ていきなり八葉の戦いを見た時点で解ったつもりだった。

 だが、すでにこれだけの人材(?)が揃っているのなら、やはり何故自分たちがここに来たのかが判らない。

 その疑問をまずあかねに尋ねたのは、だった。

 するとあかねはそうだね、と言って皆が見渡せるように座り直す。

「ここからは八葉のみんなにも初めて聞いてもらうことをお話するね」

 は相変わらず解らないが、八葉の皆は待ってましたという状況である。

「――これは今朝、龍神様から聞いたことなんだけど実は……今私たちがいるこの『京』と、私たちが還るべき『現代』のふたつの世界に大変な危機が迫っているの」

「危機…?」

「それって、どんなことなの?」

 表情を改めたあかねに訊く

「うん……私たちは、京を救うためにここに来たわけなんだけど、実際は龍神の力を利用しようとする鬼の一族の首領のアクラムによって召還されてしまったでしょ? 召還は、本当は藤姫が――星の一族が行う筈のことであったのに、そんな勝手なことがされてしまったから、世界が存在する時空が乱れてしまったらしいの…! しかもアクラムは私たちの前にも龍の宝玉無しで召還しようとしたから余計に…!」

「時空が、乱れた…!?」

「そ…そうなると、どうなるの…!?」

 緊張した雰囲気の中、天真と詩紋が尋ねた。

 すると、あかねの表情が驚くほどに引き締まる。

「京と現代の間に次元の綻びができていって、やがてはふたつの世界が崩壊してしまうことになっちゃうの…!!」


 ――――――!!


 その瞬間、皆、言葉を失って息をのんだ。