私が協働した設計事務所
アーキテクチャースタジオは、パリのバスティーユにあります。
バスティーユは、フランス革命の記念塔がそびえる広場と新オペラ座に代表されますが、
大規模な食品市場(マルシェ)やサンマルタン運河に続くボートの船着き場があり、
昔ながらの庶民の町並みが続くにぎやかな通りもあります。
またその一方で、迷路のように職人のアトリエが並ぶ静かな袋路地や、
センスのよいブティックと最先端のアトリエが点在していて、
この地区は、実に様々な顔を持っています。
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バスティーユ広場 Place de la Bastille |
ヴィアデュック・デ・ザール |
天気の良い日によく行ったボートの船着き場 |
静かな袋路地 |
ハイテク建築を生み出している設計事務所は、そんなバスティーユの一角の、
古いカフェやパン屋さん、肉屋さん、靴屋さん、ワイン屋さんなどが並ぶ、ごく普通の通りにあります。
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靴修理屋さんの隣の、ガラスの嵌められた深緑色のドアが、
アーキテクチャースタジオの入り口です。
そのドアから続く長い廊下を、コツコツと足音響かせて、
明るい中庭へと進みます。
普通、パリのアパート(アパルトマン)は、
道路いっぱいに建てられていますが、中庭があります。
大抵はロの字形で、建物の中心は、古い石畳やコンクリートの
光庭となっているのです。
外から想像のできない程の、すばらしい緑の庭が
広がっていることもあります。
AS事務所は、そんな建物の中庭部分に建っています。 |
中庭のドアを入ると、そこは大きな吹き抜けの空間になっています。
4層も上方にある天窓から、
やわらかい光が降りてきています。
中庭を利用して建てられた工場のような建物ですから、
ガラスの屋根(天窓)が唯一の採光窓となっています。
吹き抜けには、天窓近くまで緑の葉を伸ばしている大きな木が立っています。
一番上の写真がそうです。
この木は、約20年前に事務所を開設したときに植えたものだそうで、
ジャン・ヌーベルらと建物をシェアしていた頃のことです。
そして、吹き抜けの1階正面には、
アーキテクチャースタジオの建築家ロド・ティスナドが発案したと言われる、
セーヌ川岸に建っているアラブ世界研究所の採光窓、
カメラのシャッターのようなダイヤフラムが置かれています。
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設計室は、吹き抜けの両側に、4層の木造の蚕棚のように作られていて、
吹き抜けの中央に立って見渡すと、忙しく設計している人たちが、
まるで蚕のように見えてしまうのは、私だけではないでしょう。
働く人の1人分のスペースは、2mくらいの机(板1枚)と椅子+PCです。
私物は一切禁止されていますので、引き出しはありません。
私は事務所と雇用関係にはなく気が楽でしたけれど、
「ガレー船を艪でこいでいるようだ。」(つらくて報酬の少ない仕事)と
スタッフが言っているのを何度も聞いたものでした。
ここで、刑務所プロジェクト全体のディテール(ひたすら手描きスケッチを描き、指示)、
カラー計画、家具のデザインなどを担当しました。
プロジェクトチームの本当にまじめな仕事ぶりに驚かされる毎日でしたが、
休み時間を利用してのラジオ体操、折り紙教室、お茶会、お寿司屋での昼食会など
楽しいこともいろいろと思い出されます。
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