第1話 再会
「あれ…? 兄さん…あの人は…」
親王トモユキが、兄の親王トモヤと一緒にある人物を目にする。
「へっ…? あれは…エイリッ!」
二人の視線の先には、中学生くらいの少女がいた。
「あら、親王ブラザーズじゃない! 久しぶりね!」
少女――天童エイリが二人に気付く。
「こちらこそ…最近見かけないからどうしてるのかと思ってたところなんです」
「そう…こっちは部活とか弟のユイリの世話で忙しいからねぇ〜」
エイリは中学一年の女の子でトモヤ達の先輩にあたる。
「ところで、何処へ行くんだ?」
トモヤの問いかけにエイリは笑顔で答える。
「あのね、これからお兄ちゃんの所へ行くのよ! ちょっと忘れ物を届けるだけだけど…」
「お兄ちゃん…? ああ、カイリさんか…」
エイリには、幼稚園に通う弟とワールドリンク管理局に勤める兄がいる。
「そーいやー…三人暮らしだっけ?」
「うん、お兄ちゃんが家の大黒柱だから…」
エイリの兄である天童カイリは現在20歳。
トモヤ達のクラスメートの倉知ショウの姉・倉知レナの後輩でもある。
「あ、そうだ! ユイリが友達の家へ行くって言っていたから今日行こうかな…マジカルゲート!」
どうやら、エイリもマジカルゲートへ行っているようだ。
「今日はね、お兄ちゃんが提案したエリアがオープンしたんだって! 楽しみだわ〜! じゃ〜ね!」
そのままエイリは、ワールドリンク管理局まで走って行った。
走り行くエイリを見送るトモヤとトモユキ。
「エイリか…美人になったな…」
誰にもトモユキにも聞かれないようにトモヤは本心を言った。
「兄さん、後でみんなにエイリさんの事話しましょう」
「そうだな…トモユキ」
そのままトモヤとトモユキは自宅路へ足を進めるのだった。
これから起こる悪夢にも気付かずに…。
「ピョコ?」
カロンがマジカルステーション内のコンピュータを見て首を傾げる。
「これは…今日新しくオープンした『ナスカエリア』ピョコ…何だろう…変な気配を感じるピョコ…」
そこへ、グラディオンから通信が入る。
「カロン…実は頼みがあるんだ。今日オープンされた『ナスカエリア』から妙な反応が出ている…見てきてもらえるよう他のウェブナイト達に頼んでくれないか?」
「グラディオン、実はこっちも気付いていたピョコ。今、マジカルステーションにいるウェブナイトは…オルトリオンだけピョコ…」
「うむ、彼に見て来てもらおう」
「わかったピョコ!」
カロンはオルトリオンに指示を出す。
もちろん、彼は引き受けてくれたのは言うまでもない。