流転時空草紙外伝――白き翼の天翔伝――



                                   
えにし
              
序章   遙かなる縁





 眼下にひろがるは、滅びに魅入られし都――。

 京の北方、船岡山の頂上に、その人物はいた。白い外套が頭部から足首までを覆い、性別すらも判然としない。

「…………嫌な気だ」

 ぼそりと呟かれた声音は、まだ若い少年のものである。目深にかぶった外套の下で、少年は若々しい顔を盛大に
しかめていた。胸の悪くなるような邪気が、大気に混じってここまで運ばれてくる。

「――――これも何かの縁、か……」

 眇められた瞳には、都を覆う黒い影を映っている。徒人には感知することも、視ることもできない禍々しい気配――
目的の場所ではないとわかっていても、このまま素通りする気にはなれない。

 と、木々の間から同じように白い外套で全身を包んだ、もうひとりの人物が現れる。こちらは先客の少年よりも、若干
背が低いようであった。

「ここにいたのか。そろそろ移動しようぜ」

 発せられた声音は、やはり若い。おそらく同じ年頃の、これまた少年のようだ。先の少年が肩ごしにそちらを振り返り、
わずかに双瞳を伏せる。

「――すまない。俺は、ここでやりたいことができた。お前だけでも、先に――」

「いかないぜ、オレは。独りではいかない。いく時は、お前と二人で、だ。つきあうぜ、お前のやりたいことに。オレだって、
このまま視て見ぬふりは、御免だ」

 手の甲で友人の胸元を軽く叩き、背の低い方の少年は視線を遠く都へと投げた。




                     ……Tobecontinued.





               ――――想いこそが、運命の紡ぎ手……。