時の神の失敗





 ピンポーン。
 天童家でインターホンが鳴る。
「はーい」
 天童家の長女、エイリがドアを開ける。
「あら? 誰もいない…」
 目の前には誰もいない。
「あの…」
「?」
 下を見ると、青く長い髪に青緑色の瞳の小さな女の子がいた。
「あら? ユイリのお友達?」
「え、えっと…」
 少女は戸惑いながらエイリと話そうとする。
「ユイリー、お友達みたいだよ」
 エイリは弟を呼ぶが女の子はそれを止める。
「あの、違うんです」
「えっ?」
 少女の目的はユイリではないようだ。
「その…お兄さん呼んでくれますか?」
「お兄さん?」
 天童の家にいるお兄さんといえばそう、カイリしかいない。
「何でお兄ちゃんなの?」
「なーに? おねえちゃん」
 首を傾げているエイリの側にユイリがトコトコとやって来る。
「ユイリったら、ユカリちゃんがいるくせに浮気したの?」
 ユイリの頭をくしゃくしゃに撫でるエイリ。
「違うよぉ!」
「じゃあ、この子知ってる?」
 エイリは女の子の方に親指を向ける。
「知らないよぉ」
「そう…って知らない!?」
 ユイリの友達じゃない事はこれでわかった。
「そう言えば…この子何処かで見たような」
「カイリくん、起きてます?」
 女の子は再びエイリに問いかける。
「カイリくん!?」


 部屋のベッドではカイリがすやすやと眠っている。
 そう、今日は休日なので家でゆっくりと休めるのだ。
 だが…。
「とっとと起きなさい! このロリコン兄貴!」
 エイリがカイリをベッドから突き落とす。
 ドガッ!
「ぐほっ! だ、誰がロリコン兄貴だ!? いきなり人をたたき起こすな!」
「幼女趣味な人だとは思ってなかったわよ! 変態親父!」
「何の話だ!? って、二十歳の男に、しかも兄貴に何て事言うんだ!?」
 痛む額を押さえながらカイリはエイリと口ゲンカする。
「二人ともやめなよ〜! あ、そうだ。おねえちゃん、さっきの子は一応中へ通したけど?」
 ユイリが仲裁しながら先程の女の子を家へ入れた事を伝える。
「ありがと、ユイリ。ほら、とっとと行きなさい。ストーカー男。いつ手を出したのか後で説明してもらうからねっ!」
「うるせー!」
 カイリは服に着替えた後、リビングへと向かった。


「あ、ごめんねカイリくん。せっかくのお休みなのに」
 リビングでは女の子が椅子に座っていた。
「いや、気にしなくていいよ。ところで、君はどうして俺の名前を知っているんだ?」
 カイリは自分をどうして知っているのか気になっている。
 だから、女の子に質問してみる。
 すると。
「知らないふりなんてできないわ。カイリくんに会いたくて来たのに…」
 女の子は涙目になる。
「手ぇ出したくせにとぼけないでよね」
「エイリッ!(怒)」
 耳打ちするエイリを睨むカイリ。
「それより、おにいちゃん。まずはこの子の名前を聞いた方がいいんじゃない?」
 ユイリが女の子にジュースを渡しながら、質問を勧める。
「あ、そっか…って、この子何処かで見たような気がする」
 とある人物を想像しながらも、カイリは質問する事にした。
「あのさ、質問していいかな?」
「いいよ」
 女の子はコクッと頷いた。
「弟いる? しかも小学生の」
「いるよ」
 再び頷く。
「ワールドリンク管理局に努めてる?」
「努めてる」
 女の子はまた頷く。
「俺と同じ職場?」
「そうよ」
 今度は嬉しそうに答えた。
「マジカルワクチンを作った?」
「作ったわ」
 納得したかのようにカイリはふむふむ頷く。
「どうしたの? おにいちゃん」
 ユイリはカイリの側に来る。
「つまり君は……レナさん?」
「そうよ、カイリくん」
 見た目はユイリと同い年に見えるが、彼女は自分は『レナ』だと答える。
 レナといえば、マジカルワクチンを作成した女性研究員で、カイリの先輩である倉知レナだ(現在はカイリと婚約中)。
 近所に住む倉知ショウの姉である。
「………」
「お兄ちゃん?」
 エイリが人差し指でつん、とつついてみる。
 すると…。
 ドタアアアアッ!
 カイリは床に倒れてしまった。
「あらま…お兄ちゃんが倒れちゃった」
「呆れる程鈍かったのね。この鈍感」
 ユイリはカイリを揺するが、エイリはため息をつくのだった。


「で? どうして子供に?」
 起きあがったカイリは再びレナに質問する。
「わからないわ。朝起きたら子供になっていたのよ。ショウに話すわけにはいかないし、カイリくんに相談しようと思ったの」
 どうして幼児化したのか、レナにもわからないようだ。
 カイリはため息をつくと、話を続ける。
「じゃあ、主任とかに事情は話せませんか?」
「うーん…無理」
 レナはしばらく考え込むが、きっぱりだめだと答えた。
「じゃあ…どうすれば?」
「カイリくんがダイバーランドに来る前、つまりデリトロスが現れた時にダイタリオンの力で一度私以外の管理局の人達が幼児化してしまった事があるんだけど…」
「ダイタリオン?」
 ダイタリオンとはレナの弟、ショウのパートナーウェブナイトの事。
 時の力を持っており、以前は『時の神』と名乗っていた事がある。
「あの時は、主任達は何とか元に戻ったんだけど…」
「ダイタリオンか…あれの仕業なんだろうか?」
 カイリは考え込む。
「じゃあ、俺に相談って…」
「そう、カイリくんは大人達の中で唯一マジカルゲートを自由に行き来できるから、ダイタリオンに会って来て欲しいの」
 原因はダイタリオンかもしれない、とレナは推測する。
「なるほど。この事件(?)を知ってるかどうか確かめてくればいいんですね?」
「そうよ。お願いできるかなぁ?」
「任せてください、ショウくん達には内緒にしますか?」
「うん、そうしてくれれば助かるわ」
 レナはなるべくショウとダイタリオンの友情に亀裂を入れさせたくないようだ。
 だが、相談されたカイリは一体…?
「幼児化した主任と有栖川博士か…あんまり見たくないかも」
 カイリはレナに聞こえないように呟いた。


「あ〜ぢ〜い〜」
 今日は今年で最高気温の夏休み。
 ケントはよろよろ歩いている。
 勿論、ナオキも。
 百番勝負でかけっこをしていたのだが、あまりもの暑さに走りづらくなってしまったのだ。
「あれ? ケントくん達じゃん。どした?」
「苦しそうやなぁ。大丈夫なん?」
 公園のベンチでは、ツバサとマモルがアイスを食べながら二人を見つける。
「あ〜ツバサ〜…いいもん食ってるぅ」
 ケントがツバサのアイスを見つける。
「これ? これならあっちで売ってるよ」
 アイス屋を指さすツバサ。
「つまり…くれないわけ?」
 ナオキがツバサに問いかける。
「だって、自分のものは自分で買わなきゃね」
 あっさり言われてしまった。
「あ、僕ジュース持ってるけどいる?」
 マモルは缶ジュースを二つ取り出す。
「「いる…ください〜」」
 ケントとナオキはベンチに倒れ込んだ。


「…っはあ〜! 生き返る〜!」
 ジュースを一気に飲んだケントはタオルで汗を拭く。
「俺もだぜ〜! サンキューなマモル!」
 ナオキもベンチに座り込む。
「こんな暑い中、よく百番勝負できるね」
 アイスのコーンまで食べ終えたツバサはへとへとになっている二人を見つめる。
「だって俺のモットーは…!」
「『気合いと根性! ノリと勢い』だろ? 僕が入学して来た時から言ってるじゃん」
 ケントのモットーをさらりと答えるツバサ。
「よく、覚えてるな…俺のモットー」
「耳だこができるぐらいにね、覚えさせられたんだよ」
 呆然としているケントに、ツバサは呆れながらタオルで汗を拭く。
「…すみませんね〜! いっぱい言い過ぎて!」
「いえいえ」
 いじけるケントだが、ツバサはそんな事気にせず手をパタパタ振る。
「ん? あれってカイリさんやないか?」
 ツバサの隣に座っていたマモルが、近くにいるカイリを見つける。
「へっ? あ、本当だ。あれはカイリさんだ」
 ケントもカイリに気付いた。
 カイリは何やら小さい子を連れている。
 ケント達は一瞬ユイリかと思ったが、髪の長さからに、あれはどう見ても女の子だ。
「あれって…ユイリくんじゃないよな?」
 ケントの言葉に、ナオキは頷く。
「ああ。あれはどう見ても…女の子だぞ」
 四人は一気に青ざめる。
「まさかカイリさん、あの子を誘拐したんじゃ…いや、そんな事するわけないやな!」
 マモルは苦笑いするが、ケント達は青ざめたままだ。
「「「カイリさんって…ロ○コンだったっけ? 止めなきゃああああっ!」」」
 ケント、ナオキ、ツバサはすぐにカイリの後を追いかけた。
「あ〜! 僕も行くで〜!」
 マモルも、ケント達に続くのだった。


 通信ケーブルボックスにて、カイリとレナはいた。
「じゃあ、ちょっと待っててください。マジカルゲートに行ってダイタリオンに会って来ます」
「うん、お願いね。カイリくん」
 そう言うレナに頷いたカイリは、ボックスの扉を開ける。
(いてくれよ。ダイタリオン)
 そう思ったカイリは、ケーブルを繋ぐ穴にそっと人さし指をあてる。
「マジカルゲートへ、プラグイット!」
 カイリの意識がマジカルゲートへダイブされた。
 それを見送ったレナは外のベンチに座る。
「はぁ…小さいのって不便ねぇ。早く戻りたいなぁ」
 レナは、深くため息を付いた後、青空を見上げるのだった。


 マジカルゲートでは、カイリの服がダイバースーツへと替わっていた。
「さてと…まずはダイタリオンサイトへ行ってみるか」
 カイリはダイタリオンサイトに向けて飛び立つ。
「いるといいが…ダイタリオン」
 そこへ…。
「よぉ、カイリじゃないか」
「?」
 カイリの背後にはビークルモードから、ファイターモードに変形しているシャークオンがいた。
 どうやら、パトロール中のようだ。
「シャークオンか…久しぶりだな。よく俺だってわかったな」
「このマジカルゲートで、ネオダイブシステムを使わないで自由に行き来できる大人はお前しかいないからな」
 シャークオンの言うとおり、カイリは普通の大人達とは違っていた。
 それは、プラグコントローラーやネオダイブシステムを使う必要がなく、自由にマジカルゲートを行き来できるのだ。
「初めはこの力を恐れていたよ。何せ俺は昔、君達の…」
 カイリが言おうとした時、シャークオンはそれを封じるかのように首を横に振る。
「もう言わなくていい。お前は天童カイリだ。もうあいつじゃない…そうだろ?」
「シャークオン…」
「今のお前のおかげで俺様達はウェブダイバー達に出会う事ができたんだ。ありがとな、カイリ」
 しばし、カイリを見つめていたシャークオンは再びビークルモードになった。
「呼び止めたりして悪かったな。何処かへ行く途中だったんだろ?」
「あっ、そうだった。シャークオン、ダイタリオンはダイタリオンサイトにいるかな?」
 行こうとするシャークオンを止め、ダイタリオンの事を聞き出すカイリ。
「ダイタリオン? 多分、タイムエリアにいると思うぜ。なんなら、乗せて行ってやろうか?」
「いいのか?」
「いいって事よ! ちょうど俺様もタイムエリアへ行くところだったからさ」
「そうか…それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうよ」
「了解♪」
 カイリは、シャークオンと共にタイムエリアへ行く事になった。


「あ、あそこにいた!」
 ケントはベンチに座っている少女を見つけた。
「カイリさんがいないな…何処へ行ったんだろう?」
 辺りを見回すナオキだが、何処にもカイリはいない。
「しょうがないな。あの子に聞いてみるしかなさそうだよ」
 ケントは肩をすくめた後、少女の元へ歩み寄った。
「?」
 少女はケントに気づき、見上げた。
「えっとぉ…あのさ、さっき君と一緒にいた男の人何処に行ったか知らないかな?」
 ケントは何とか話しかけてみる。
「あ、あの…トイレに行ってるの。だから、帰ってくるまで待ってるの」
 何処かもじもじしながら、少女は答えた。
「そっかぁ…何処行ったんだろ? カイリさん…」
「ところで、君の名前は?」
 考え込むケントの側では、マモルが少女に尋ねている。
「え、えっとぉ…」
 マモルの質問に、少女が動揺し始める。
 やがて、少女は口ごもってしまった。
 と、そこへ。
「やあ、ケントくん達じゃないか。どうしたんだい?」
 倉知ショウがケント達に話しかけてきた。
「あ、ショウさん。今日は暑いな」
 ショウに気付いたナオキが返事をする。
「そうだね、ナオキくん。ところでみんな、姉さん見かけなかった?」
「!!」
 ショウの「姉さん」という言葉に反応したのか、少女はビクッとなった。
「姉さん? レナさんがどうかしたん?」
「うん。今朝までは部屋で寝てたんだけどね、起こしに来たらいなくなってた」
 マモルに、レナがいなくなった事を話すショウ。
 ショウが話すたびに、少女の顔が青ざめていく。
(早く帰って来てよぉ…カイリくぅん)
 レナは心の中でカイリにSOSしていた。
「ところで、その女の子は?」
 ショウが子供になったレナに気付く。
「!!」
 少女は再びビクッとなる。
「うーん。迷子みたいなんだけど…」
 ケントが少女を見ながら腕を組んでいる。
「そうか。この辺じゃ見かけない子だね」
 その少女が姉である事に、ショウは全く気付いていない。
(よかった。ショウには気付かれていないみたい。カイリくん、早くして〜!)
 カイリが帰って来るのを祈りながら、レナは手をギュッと握りしめるのだった。


 一方のカイリは、シャークオンと共にダイタリオンサイトに来ていた。
「この下をずっと行った所にタイムエリアがある。多分、ダイタリオンはそこにいるだろう」
 シャークオンはカイリを乗せながら、ダイタリオンサイトを案内する。
「ダイタリオンはどうしてレナさんを子供にしてしまったんだろう? 俺にはわからない…」
 カイリは、何としてでもレナを元に戻さなきゃいけないと思った。
 その為には、ダイタリオンに会わなければならない。
 そして二人は、ダイタリオンのいる場所へとたどり着いた。
「誰だ?」
 ダイタリオンがシャークオンとカイリの前に姿を現した。
「お前達はシャークオンとカイリではないか…」
「やあ、ダイタリオン。今日はちょっと君に聞きたい事があったんだ」
 ダイタリオンと挨拶を交わしながら、カイリはシャークオンから降りた。
「我に聞きたい事…か?」
「ああ」
 ダイタリオンの前まで歩み寄るカイリ。
「実はショウくんの姉であるレナさんが子供の姿になっていたんだよ」
 カイリは、ダイタリオンにレナの事を話し始める。
「レナさんは俺より少し年上だから、いきなり子供に戻れるはずがない。もしかしたら、と思って来てみたんだ。君は何か知っているか?」
 事情を説明した後、カイリはその場に座り込んだ。
 答えを待つかのように頬杖をつきながら。
 だが…。
「…我には身に覚えがない」
 だが、ダイタリオンは首を横に振った。
「何だって!?」
 それを聞いたカイリは愕然とする。
「ダイタリオンじゃないっていうのか? じゃあ、一体誰が…!?」
 そこへ、ペガシオンとライガオンがダイタリオンの元へ降り立つ。
「寝ぼけていたから覚えていないだけだ、ダイタリオン」
 ペガシオンが呆れながら、ダイタリオンの方へ振り向いた。
「寝ぼけていた? どういう事なんだ?」
「ダイタリオンはさっきまで寝ていたんだ。眠っている時にうっかり時の力を使ってしまったんだ」
 問いかけるシャークオンに、ペガシオンはハァッとため息を付いた。
「…我は覚えていない」
「だから、寝ぼけて使ってしまったから覚えていないんだろ?」
 首を傾げるダイタリオンにツッコミするライガオン。
「…って事はつまり、ワイバリオンみたいに寝相が悪い為に時の力を出してしまったって言うのか? じゃあ…」
 考え込んでいたカイリは、顔を青ざめる。
「レナだけでなく…他の大人達も子供になってしまっているかもしれぬ」
 ダイタリオンは考え込むかのように腕を組んだ。
「しれぬ…じゃないだろ!」
 遂にキレたカイリはダイタリオンの顔面まで飛んでいった。
「すぐにみんなを元に戻してくれ! レナさんが子供に戻ってしまっている事をショウくんは知らないんだよ!」
 ダイタリオンに、みんなを戻すよう説得するカイリ。
「ショウは知らないのか? 何故?」
 今度はペガシオンがカイリに尋ねる。
「レナさんはショウくんに迷惑をかけたくないんだ。ましてや、ショウくんのパートナーである君との友情に亀裂を入れたくない。そんな思いで俺に助けを求めてきたんだ!」
 カイリは拳を握りしめながら、顔を伏せる。
「早く…早くレナさんを元に戻して、ショウくんを安心させてあげたいんだ。だから頼むダイタリオン!」
 カイリの必死な説得に、ダイタリオンはスッと手を伸ばす。
「わかった、カイリ。我の力でみんなを元に戻そう。元々は我の責任だ」
「ありがとう、ダイタリオン。よろしく頼むよ」
 ダイタリオンの決心に、カイリはホッと安堵の息を付いた。


 一方のレナは…。
「う〜ん。本当に、この子は何処の子なんだろうね? ショウさん」
 少女がレナだと気付かないケントは、少女の頭を撫でながらショウに問いかける。
「わからないなぁ。なかなか喋ってくれないから困るんだよね」
 ため息をつきながら、少女(レナ)を見つめるショウ。
「っつーか、カイリさんはいいわけ?」
 少女(レナ)が座っているベンチの向かい側にあるもう一つのベンチに寝っ転がっているツバサが、カイリの事を思い出す。
「そうだよな。カイリさんがいなきゃ解決できないじゃんか」
 ナオキもカイリの事を思い出した。
 しかし、まだカイリは戻って来ていない。
「ねえ、君はどうしてカイリさんと一緒にいたん?」
 マモルが少女(レナ)の隣に座り、話しかけてきた。
「え!? そ、そのぉ…」
 突然の質問に、少女(レナ)は動揺し始める。
(このままじゃバレちゃうわ…カイリく〜ん!)
 少女(レナ)は、カイリの帰りを待つ事しかできない。
 早く戻ってくるのを祈るばかりだった。


 タイムエリアでは、ダイタリオンの体が光っている。
 彼は必死に子供になってしまった大人達を元に戻そうとしているのだ。
「これで大丈夫なのか?」
 見ているカイリは、ペガシオンとライガオンに問いかけた。
「大丈夫だ、ダイタリオンを信じろ」
「我々も、ショウ達には秘密にする。安心しろよ」
 ペガシオンとライガオンは、カイリを安心させるように言った。
「そうか…それなら大丈夫だな。ありがとう」
 それを聞いたカイリはホッとする。
 やがて、ダイタリオンの体を包んでいる光が消えた。
 どうやら終わったらしい。
「やっと終わったぞ、カイリ。これで、レナやみんなは元に戻るだろう」
 ダイタリオンは疲れてしまったのか、ドサッと座り込んでしまった。
「本当か!? よかった…これでレナさんは元に戻るんだな。ありがとう、ダイタリオン」
 安心したカイリは、ダイタリオンに礼を言う。
「サンキュー、これでもう大丈夫だよな。お疲れさん、ダイタリオン」
 シャークオンもダイタリオンに礼を言った。
「元々は我の力のせいでこうなってしまったのだ。すまなかった、カイリ…」
「いや、無理をさせたりしてごめんな」
 謝るダイタリオンに、カイリは首を横に振った。
 シャークオンもフッと笑いながら、その場を見つめている。
「さ、そろそろ戻ろうぜ。レナが待ってるぜ、カイリ」
 そう言って、シャークオンはビークルモードに変形した。
「シャークオン…ああ、そうだな。それじゃダイタリオン、ペガシオン、ライガオン。俺はこれで」
 カイリはシャークオンに乗り込む前に、ダイタリオン達に挨拶する。
「気を付けて帰るんだぞ、カイリ」
「またな、カイリ」
「これからも頑張れよ。レナの為にも」
 ダイタリオン、ペガシオン、ライガオンは優しくカイリを見送ってくれた。
「ありがとう、みんな。それじゃ、またな!」
 カイリは軽くウィンクすると、シャークオンに乗り込んだ。
 そして、カイリを乗せたシャークオンはダイタリオンサイトを後にした。


「あ! そう言えば、俺達は何してる途中だったっけ?」
 ケントは途中まで何かをしていた事を思い出す。
「んあ? あー確かに何かしてたよな…」
 ナオキも思い出してみる。
「百番勝負やないの?」
 マモルは、ポンと手を叩いた。
「「あ、それだ!」」
彼のおかげで、二人はやっと思い出した。
「そんじゃ、ケント! 勝負の続きをしようぜ!」
「おう! 今度は負けないぜ!」
 ナオキとケントの間で、火花が散っている。
「全く、勝手にやってなよ…」
「あれ? さっきの女の子、いてへんよ?」
 ツバサが呆れていると、マモルは少女がいなくなっている事に気付いた。
「本当だ。どこへ行ったんだろう?」
 ショウも辺りを見回してみるが、彼女は何処にもいなかった。


「はぁはぁ…なんとかケントくん達から離れる事ができたわ」
 レナは、草むらの中で息を切らしていた。
 と、その時。
「あ、あれ? 私、元に戻ってるわ!」
 自分の手を見てみると、レナの手は大人サイズだった。
 そう、元に戻ったのだ。
 ちょうどそこへ、カイリもマジカルゲートから戻ってきた。
「レナさん、何とか戻れたみたいですね」
「あ、おかえりなさいカイリくん。ショウ達にはバレなかったわ。それでどうだった?」
 帰って来た恋人に気付いたレナは、安心したのか表情が明るくなった。
「やっぱりダイタリオンでしたよ。まあ、今回は悪気がなかったんで、大目に見てやってください」
 カイリは笑顔で言うが、疲れている様子だ。
「そう…わかったわ。今度、ダイタリオンに会った時はよろしく伝えてね。お疲れさま、カイリくん」
 クスッと微笑みながら、レナはカイリの頭を撫でた。
「ありがとう、レナさん…」
 照れくさそうに、カイリは自分の頬を軽く引っ掻くのだった。




              〜完〜




 あとがき

 GURI様から9000Hitとしてリクして頂いた、『ウェブダイバー小説』でございます。
 今回は、レナさんとオリキャラ・カイリのお話にしました。
 本編で語られているとおり、カイリは大人の中で唯一マジカルゲートを自由に行き来できるのです。
 どうしてできるのかは、いずれ『堕天使と少女』で明かされるでしょう。(おいおい)
 ウェブダイバーの本編で、ダイタリオンが初めて力を使う時にタケトパパや有栖川博士達が子供になってしまった話を見て、結希は『レナさんが幼児化したらどうなるんだろう?』と思っていました。
 それで、『リクのウェブダイバー小説の内容は自由』との事で、この話を書く事にしました。
 この話の別タイトルは、『カイリの受難』でしょうね。(笑)
 ちなみに、この話はエイリ救出後という設定です。
(本編では、いつ助けるんだよ!?byトモヤ)
 うっ、今トモヤくんからツッコミを受けました。(汗)
 『堕天使と少女』の本編で、エイリを助け出せるのはしばらく先になりそうです。
(延ばすな!byカイリ)
 え、えーっと…GURI様、このような話でよろしければお受け取りくださいませ。
 リク、ありがとうございました!

                                                      結樹汐梨