あなたへの想い、君への想い





 ――あなたへの想い・本村明日香


 彼って格好いいと思う。
 だって、一番最年長だし、しっかり者だし、クラス委員だし、ラグビー部の部長なんだもの。
 そして…何だかんだ言っても本当はすごく優しい人。
 あの時、『付き合ってください』って言ったら彼は…。
『いいよ。俺もずっと明日香の事が好きだった』って言ってくれた。
 それを聞いた私はもう天にも昇る気分だった。
 それ以来、私達は付き合っている。
 勿論、みんなには内緒だけどね。
 でも…この間は同じラグビー部の渉に告白されちゃった。

「俺、明日香の事が前から好きだったんだ!」

 けど、私は断った。
 ごめんね、渉。
 だって…もう私にはあの人がいるから。
 慎太郎が…慎ちゃんがいるから。

「明日香…もし、卒業してもずっと一緒だからな」

 一足早いクリスマス会での後。
 男子寮と女子寮の間にあるベンチで、慎ちゃんは言ってくれた。
 外は夜だから少し寒くて、手袋してくるのを忘れた私の手をそっと握りながら…。
 この時、私はこう願った。
 サンタさんへ…慎ちゃんください、なんてね。
 冗談風にそう言ったらあなたは…。

「俺も…明日香が欲しいって頼もうかな?」

 すごく嬉しい。
 ありがとう、慎ちゃん。
 ねえ、慎ちゃん…。
 私はずっと、慎ちゃんの事大好きだからね。
 だから、慎ちゃんも私の事…大好きでいてね?

 ずっとこのままでいられると思っていたのに…。

 あなたは死んでしまった。
 BR2ゲームの参加を最後まで拒み続けてしまったせいで…。
 どうして?
 どうして私を置いて行っちゃったの?
 でも、本当は辛かったんだよね慎ちゃん。
 こんな命を懸けた戦いに行くのが…。
 そして、苦しんでいく私達を見るのが…。
 だから、私達の良心として側にいてくれる事を選んだんだよね?
 ごめんね慎ちゃん。
 助けてあげられなくてごめんね…。


「なおっ! 見えない、何処!?」
 気が付けば私は何も見えなくなっていた。
 探しているのは恋人ではなく、親友であるなおだった。
 さっきまで私の側には渉がいたけど…多分彼はもういないと思う。
 ごめんね…なお。
 私、一緒に行く事はできないみたい。
 だけどね…慎ちゃんと一緒だから寂しくないよ。
 今、ここに慎ちゃんが来てくれるから。
 抱きしめてくれるから…。



 ――君への想い・槇村慎太郎


 初めてお前と会った時、俺の中は不思議な気持ちで溢れていた。
 自分の殻に閉じこもっていたのを知った時、俺は何故か共感した。
 明日香の場合、自分の殻に閉じこもった原因は明日香の父親が自殺した事だけどな。
 俺の両親は死んだわけじゃないが…俺にとっては失ったも同然だった。
 親父は俺達を捨てて出ていき、お袋は毎日酒ばっかり飲んでいた。
 俺が苦しんでいるっていうのに、相手は全然、俺の気持ちを考えない。
 とうとう、アルコール依存症にまでなっちまって…。
 …だからお袋を殴ってしまった。
 俺は…それを後悔して家を飛び出し、鹿之砦中学校へ転校してきた。
 けど、弟達が心配な為、何回か家へ帰って様子を見たりした。
 その度に…。

「お兄ちゃん、今度はいつ帰ってくるの? どうしていつもいなくなっちゃうの?」

 一番小さい妹からその言葉を言われた時、俺は心が痛くなってきた。
 家の中で一番苦しい思いをしているのは弟達だった。
 俺だけじゃなかったんだ…。
 卒業したら家に戻るか、それとも…どうすればいいのだろう?
 そう考えていたら、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
 そんな時、お前が――明日香が現れた。
 初め見た時は、何だか大人しそうな子だなと思った。
 でも…部活の時はマネージャーとしてしっかりしていた。
 いつかは卒業してしまうが…それでも一緒にいたい。
 夏にお前から告白された時、正直驚いた。
 けど…すごく嬉しかった。
 俺からも言いたい。
 ずっと…俺の側にいて欲しい。


 ごめんな、明日香。
 ずっと一緒にいるって約束したのに…俺、死んじまったよ。
 だってさ、BRで人を殺す事なんてできるわけないだろ?
 いくらルールが七原秋也を殺す事でもさ。
 俺は人を殺したくない。
 だから、絶対に参加したくなかった。
 そして…明日香を失いたくなんかないんだ。
 拓馬達だってそうだけどな。
 人生に勝つ為なら、人を殺していいなんて…そんな事あってはならないんだ。
 だから、俺は足を撃たれても目の前にあるラインを超えなかった。

「どうして? どうしてよ、慎ちゃん!」

 俺の側では明日香が泣いている。
 本当にごめんな…明日香。
 でも、俺はずっとお前達の良心として側にいる。
 だから、絶対に生き残れ。
 絶対に死んではいけない。
 負けてはいけない。
 …前に進め。

 その後、白い霧みたいな中に俺はいた。
 誰もいない。
 さっきまで泣いていた明日香もいない…。
 …と思いきや、クラスメートの福田和美が来た。
 今回はペアタッグ?
 お前は俺と同じ出席番号だから死んだのか?
 明日香とペアを組んでいるのは誰だ?
 福田に聞いたところ、明日香のパートナーは俺の仲間の向井 渉らしい。
 まあ、渉がいい奴なのは俺も知っている。
 何せ、ラグビー部のムードメーカーだからな。
 あいつならきっと明日香を守ってくれる。
 明日香…絶対に死ぬなよ?
 だが、しばらくしてから…宮台陽介と三船夕佳、皆本 清と松木志穂、森島達郎と八木綾音、矢沢 愛と谷野 響、夕城香菜と善山絵里、そして…渉が来た。
 渉は俺に「すまん、慎太郎」って謝っていた。
 明日香はまだ生きているらしい。
 必死になおを求めているようだ。
 拓馬や秀悟、晴哉、雅実、なお、キタノは無事だろうか?
 ん?
 明日香が俺を呼んでいる。
 行かなくちゃな…。



 ――二人の想いは一つに・槇村慎太郎&本村明日香


 気が付いたら、明日香は白いワンピースを着て立っていた。
 周りは白い草原。
 薄い青空。
「ここ…何処だろう?」
 足は裸足だ。
 何も履いていない。
「さっきまで…迷彩服着てたのに」
 そこへ…。
「…明日香…?」
「えっ…?」
 背後から聞こえる声に、明日香は振り向いた。
「あっ…慎ちゃん!」
 明日香の後ろに慎太郎はいた。
 慎太郎も白い服を着ていた。
「迎えに…来てくれたの?」
「…ああ、お前を一人にしたくないからな」
 互いに見つめ合う二人。
「ねえ、慎ちゃん…」
「ん?」
 明日香はそっと、慎太郎の前まで歩み寄る。
「…ずっと、一緒にいてくれる? これからも…」
「当たり前だろ? 俺達は…絶対に離れない」
 ゆっくりと、二人の両手が重なり合う。
「なお達を…見守っていこうね。みんなを支えてあげられるように」
「…ああ、俺達はもう一人じゃない。これからもな」
 明日香の両肩に、慎太郎の両腕が回される。
 明日香自身も、慎太郎にすべてを任せるかのようにそっと寄りかかった。
「あ、あのね。今更なんだけど…言っていい?」
「?」
 明日香はクスッと笑い、慎太郎の頬に口づける。
「メリークリスマス…」
「あっ…///」
 いきなり、明日香に頬を口づけられた慎太郎は少々照れてしまう。
 けれど、手はしっかり明日香を抱きしめてくれていた。
「明日香、ずっと俺の側にいてくれ。離れないでくれ…」
「うん…ありがとう、慎ちゃん。大好きだよ」
 そして、二人の唇が互いに近づいていく。
 母親を殴り、弟や妹達を残して苦しんできた慎太郎。
 父を亡くし、自分の殻にこもっていた明日香。
 けれど…今、ここに二人の想いは一つになった。
 勿論、それは誰も切る事はできない深い絆…。


 〜完〜


 あとがき

 うわぁ…駄文ですなこりゃ。(待て)
 せっかくのクリスマス創作なのに…。
 こんなの明日香ちゃんじゃなーい!
 我らの慎太郎お兄様じゃなーい!(笑)
 お二人のファンの皆様、すみません。(汗)
 いえですね、本当はチューさせたかっただけなんですがねぇ…。(だから待て)
 書いてて恥ずかしくなっちゃったのでちた☆(笑)
 BR2では初のカップリングものですね。
 でも…この話、暗いなぁと思ったり。(汗)
 明日香ちゃんって、慎太郎お兄様(←すっかりお兄様呼ばわり)が死んでしまった時はきっとこんな風に
 思ったんじゃないかと思いました。
 慎太郎お兄様も、愛する(強調)明日香ちゃんを残してしまった事で、ちょっと心配していたり。
 うーん…。
 生まれて初めて書いたかも。
 すっごい暗い短編。
 うおおおおおっ!(何)
 慎太郎×明日香LOVEな友達欲しい!(そっちかよおい)
 今度は、名波×絵里か晴哉×香菜、秋也×典子を書いてみたいですなぁ…。
 こんな小説を気に入ってくださった方がいてくだされば、結希は幸いでございますv

                                                     結樹汐梨