赤い髪の転校生





「転校生?」
 一年生の結城カイトは兄の話を聞く。
「そう、さっき先生と一緒にいる所を見たってショウさんが言ってたんだ」
 兄の結城ケントは友人の倉知ショウから聞いた情報をカイトに話す。
「それって男か? それとも女?」
 ケントの背後から親王トモヤが問いかけてくる。
「女の子らしいよ」
「そっか、女の子なのかぁ」
 ケントが答えると、カイトはちょっと嬉しそうになる。
 しかも、頬を淡く染めて。

 何故嬉しそうに!? しかも、顔赤くなってるし!

 クラスメート全員は驚いてカイトを見つめる。
「キョウイチくん、転校生の子ってどんな子やろなぁ?」
 カイトの同級生、三条寺マモルが四年生の井原キョウイチに問う。
「わかんないけど、可愛いレディである事を祈るよ。しかも、温和のね」
「温和かいな?」
 首を傾げるマモルの頭上に大きな?マークが。
「変な事だけはするなよ、そこがお前の悪いとこだから」
 キョウイチをジト目で見ながら五年の桜庭コウジはツッコミする。
「坊主頭の未経験者に言われたくないね」
「何の経験だよ!?」
「ああ〜、ケンカは駄目やぁ!」
 そんなキョウイチとコウジのケンカを止めようとするマモル。
 と、そこへ。
「何でそんな嬉しそうにしてんの?」
 三年生の原ツバサがカイトの側へ来る。
「えっ? だって、友達になれるかなと思って」
 カイトは更に嬉しそうにツバサの質問に答える。
「あっ、もしかして心の中では『僕の好みの子だといいなぁ』とか?」
「ちっ、違うよぉ!」
 ツバサは笑いながら、慌てるカイトの頭を軽く叩く。
「はははっ。ごめん、だってからかいたくなっちゃうんだもん」
 明るく言うツバサ。
 だが…。
「ツバサく〜ん? カイトくんに変な事教えないでね〜」
 四年の有栖川アオイが笑顔で止めるが、その表情はとても黒い。
「ひぃっ!?(゜◇゜;)」
「???(・。・)」
 カイトにはアオイの黒いオーラが見えないらしい。
 ツバサはアオイを見ただけで固まってしまった。


 そして、ホームルームが始まる。
 大きなモニターの画面から担任の大原先生が映し出される。
『みんな、おはよう』
「おはようございまーす!」
 生徒達は元気よく挨拶する。
『みんな元気でいいな。今日はみんなに転校生を紹介しよう』
 そう言って、先生は一人の少女を呼ぶ。
 先生の隣ではかるくウェーブのかかった赤いロングヘアーにアイスブルーの瞳。
 見た感じではとても可愛い女の子だ。
『みんなに自己紹介をしてくれるかな?』
 先生に言われ、少女は頷く。
『はい、です。よろしくお願いします』
 笑顔で、少女、はペコンと頭を下げる。
『これからみんな所へ来るから、ちょっと待っててくれ』
 映像が消えてから数分後に教室に先生とが入って来る。
「さてと、誰の隣にするか…」
 大原先生は生徒達を見ながら考える。
「それじゃあ、結城カイトくんの隣でいいかな?」
「はい」
 カイトの名を聞いたは笑顔で頷いた。
 そしてそのままカイトの隣へ行く。
「よろしくな、カイトv」
「う、うん。こちらこそ(カイト?)」

「カイト!?( °○ °;)」

 普通は、初対面の人には「結城くん」、または「カイトくん」だろ!?
 ケント達は心の中でそう思った。


 そして授業中。
 内容は国語。
「ねえ、カイト。今、何ページ読んでるの?」
 はわざとなのかカイトにペッタリくっついている。
「えっとね、今は30ページのこの行だよ。見える?」
「俺さ、あんまり見えないの。もうちょっとこっち行っていい?」
 そう言っては更にカイトにくっつく。
「い、いいけど…(俺!?)」
 カイトは女の子にくっつかれるのは生まれて初めてだ。
 しかも、一人称が『俺』の子に。
「ケントくん、手が震えてるわよ」
 隣にいるアオイがケントの肩を軽く叩く。
「仲良くするのはいい事さ。だけど…何であんなにぶぇったべたにくっつく必要があるんだ?」
「確かにべたべたよね」
 ちなみにカイトとの側では、五年の佐方トウカが「あらあらvすっかり仲良しね」と、穏やかにカイト達を見ている。
「いいなぁ…」
 そのトウカの隣ではマモルが羨ましそうにカイトとを見ている。
「あら? ちゃんに気でもあるの?」
 トウカがマモルに問いかける。
「えっ? い、いや…そういうわけやないんやけど」
「マユちゃんがヤキモチやくわよ?」
 トウカはくすくす、と笑いながら反対側の席にいる渡辺マユの事をマモルに教えた。
「えっ!?////」
 マモルが振り向いて見ると、ナオキの隣に座っているマユはマモルをジッと見ていた。
 結局、はカイトにくっついたまま授業は進められた。


 休み時間。
「ねえ、カイトv」
 授業が終わり、がカイトに声をかける。
「なぁに? さん」
でいいよ。ねえ、カイトの好きな遊びってなぁに?」
「うーん…そうだなぁ。校庭の方でドッジボールをする事かな?」
 いつも校庭ではケント達がサッカーをしたりドッジボールをしたりして使っている。
「あ、そうだ。よかったらちゃんもどう?」
「いいの?」
「うんっ!」
 カイトは笑顔で頷く。
「じゃあ、一緒に校庭に行こっ!」
「うんvv」
 はみんなの、特にケントの目の前でカイトと手を繋いで教室から出る。
「おーい、ケント?」
 呆然としているケントの側で、同級生の浅羽ナオキが声をかけてみる。
「カイトが…カイトが…」
 ペタンと床に座り込むケント。
「弟バカだな…」
 ため息をつくナオキの側にショウが来る。
「ケントくん。いつまでもそこに座ってたら、掃除されちゃうよ?」
「そっちかよショウさん」
 ショウのボケにツッコミするナオキだった。


「ねえ、ちゃんって兄弟とかいるの?」
 校庭では、カイトとがケント達を待っている。
 時間つぶしにでもと、二人は話をしている。
「うん。俺にはね、姉ちゃんがいるんだ。マリンって言うの。20歳過ぎてるけど」
「ええーっ!? そんなに歳離れてるの?」
「うん、今学校の先生をしているんだよ。新米だけどね」
「そっかぁ。何かカイリさんみたいだね」
 と話をしていると、カイトは近所に住んでいるお兄さんを思い出す。
「カイリ?」
「うん。僕の友達のユイリくんっていう子のお兄さんなんだ。ユイリくんは6歳で、カイリさんは20歳だよ」
「そうなんだ。じゃあ、お父さんに間違えられたりするのかな?」
「多分するだろうね」
 その時、管理局で天童カイリがくしゃみしていたのは言うまでもない。
 そこへやっとケント達が来た。
「ごめん、遅くなった」
 ボールを持ったケントがカイトの側に来る。
「あ、遅いぞ! 兄ちゃん」
 ぷーっとふくれっ面になったカイトはケントの腕を引っ張る。
「しょうがないだろ、掃除してたんだからさ」
 ケントは息を切らしながら、ボールをカイトに渡す。
「じゃあ、ジャンケンするからこっちおいで」
 キョウイチがカイトの手を引く。
 それを見たは…。

「………むかつくぜこんにゃろう( ̄_ ̄#)」

 ブツブツと呟く。
 すると…。
「うわっちゃああああああっ!」
 突如、キョウイチが燃え出す。
「キョウイチくん、いくらフェニクオンのウェブダイバーだからってそんなに燃えなくても」
「突っ込むとこちゃうっ!」
 ボケるトモユキとツッコミするトモヤ。
 まさに漫才(笑)。
「それよか、助けなくていいわけ?」
「シャークオンいないから、アクアトルネイド出せないしなぁ」
 ツバサとコウジは何故か冷静でいる。
 その時。
「じっとしててキョウイチくんっ!」
 近くでナオキの妹、浅羽ユカリと遊んでいた天童ユイリがキョウイチの側へ走ってくる。
「ユイリッ!?」
 突如のユイリの出現に驚くトモヤ。
「ウィングド・ケアルッ!」
 ユイリの手から風の力がキョウイチを包む。
 そして…。
「たっ…助かった」
 キョウイチは無事に助かった。

「ちっ…生きてやがったか( ̄_ ̄#)」

 誰にも気付かれないように舌打ちする
「大丈夫? キョウイチさん」
 ユイリはキョウイチの焦げをはらう。
「何とか…ね。だけど…僕の上着がこげこげ〜! うわ〜ん!(〒□〒;)」
 キョウイチは大泣きしてしまった。
「かわいそうに…」
 よしよし、とツバサがキョウイチの頭を撫でてやる。
「これじゃあどっちが年上なのかわかんねーな…」
 ツバサはキョウイチより年下なのだが、年上を慰める年下って一体…。
「きゃ〜! あの人燃えちゃった。怖〜いvv」
 ぴとっv
 は再びカイトにくっつく。
「ヒ、ちゃん…////」

 Σ(@□@;)!?

 再びケントは驚く。
「ケント、ケントー。だめだこりゃ…」
 ナオキがケントの目の前で手を振ってみるが、反応がない。
「ホントーに弟バカ(強調)だね」
 キョウイチが泣きやんだ後に、ツバサもナオキの言葉に頷く。
 しかも、弟バカのバカあたりが強調されている。
「でも、何でいきなり発火したんだろう?」
 ユイリは頭に?マークを浮かばせながらユカリ達の所へ戻って行った。

 そして、ドッジボールが始まった後、はカイトとは別チームに入るが、見事にカイト以外の
男子を場外に出してやったのは言うまでもない。


「ねえ、そこの赤いバルタンヘルメット頭の人」
 教室に戻った時、はケントを呼ぶ。
「ぐっ…! 誰がバルタンヘルメット頭だって?」
 ケントは顔を引きつらせながらの方へ向く。
 ちなみに、後ろではナオキ達が笑っている。
「お前ってさ、カイトの事好きなの?」
「お前…!?」
 何て生意気な一年生だろう…。
 ケントの心にはこれが浮かび上がる。
「まあ、兄貴だからな。弟は好きさ」
「ふーん」
 ふーんって…。
 後ろではナオキ達が爆笑している。
「まあいいや。カイトは俺がもらうからな。バルタンヘルメット兄貴」
「!?」
 ナオキ達は大声をあげて笑っている。
「な、何の! 俺だってカイトを守るからな!」
 ケントとの間に火花が散る。
「兄ちゃん? ちゃん?」
 カイトには二人の不仲に全く気付いていなかった。


「いきなり萌え…じゃなくて燃えたの?」
「うん。ってレイミア…今燃えるの前に何か言った?」
 通路にて、ジャンは恋人であるレイミア・キャルウィールに、キョウイチの発火について話をしている。
「気にしないで、ジャン」
「わかった(汗)。不思議な事だと思わないかい?」
「そうねぇ…どうして燃えてしまったわけ?」
「カイトくんの手を握ってから燃えたから」
「あらそ。いいわ、調べてみる」
 レイミアはカイトの名を聞いて少し驚くが、すぐに返事をした。
「じゃあ、僕はもう戻るね。レイミア」
「ええ。気を付けてね」
 ジャンに挨拶した後、そのままレイミアは中学校の方へ戻って行った。
 彼女を見送ったジャンも教室に入るのだった。


 キーンコーンカーンコーン♪
 下校時間になり、生徒達は一人一人、教室から出ていく。
「カイトくん、帰ってから一緒に遊ばへん?」
 教科書をランドセルにしまいながら、マモルはカイトに尋ねる。
「うん、いいよ。ミヨちゃん達も誘おうか?」
「俺もいい?」
 カイトの肩を軽く叩きながら、はカイトに声をかける。
「もちろんだよ。いっぱいいた方が楽しいもん♪」
「ありがと、カイト♪」
 身支度を終えたカイトの手を引っ張り、は教室を出る。
「さあ、カイト。一緒に帰ろ…ってあれ?」
 ケントは辺りを見回すが、カイトはいない。
「ああ、カイトくんならちゃん達と先に帰ったわよ?」
 アオイはドアの方に指さす。

「先越されたああああ!(〒□〒)」

 ケントの叫び声が教室中に響き渡るのだった。


「ほう、燃えたのですか?」
 シャイア・フェンドゥルースは話を聞いている。
 ジャンは幼なじみであるシャイアにも発火について話した。
「そうなんだ。一応、レイミアにも調べてもらっているんだけどね」
「では、僕も調べてみましょう。あの子の事もね」
「あの子?」
 あの子とは誰の事なのか?
 ジャンは、首を傾げる。
「今日来た転校生の子ですよ。ちゃん」
「よくわかったね。まだ僕は名前も言っていないのに。さすが、予知能力だね」
「それはどうも」
 ジャンは改めてシャイアの能力を褒め称えるのだった。


「カイト〜vv」
 公園にて、マモル達を待つカイトの頬に頬ずりする
「ど、どうしたの? ちゃん?」
「カイト〜vv」
 何だかカイトに甘えているようだ。
 草の茂みにはケント達上級生が潜んでいた(怪)。
「カイトに変な事しないかなぁ?」
「したらどうすんの?」
 ケントに質問するコウジ。
「したら…俺は生きていけない!(涙)」

「(……このバルタンヘルメット弟バカ兄貴)( ̄_ ̄;)」

 全員は深くため息をつき、呆れるのだった…。


「あ、マモルくん達来たー!」
 カイトはマモル達を見つける。
「ごめん、遅くなっちゃった。カイトくんやちゃん待ったん?」
「ううん、大丈夫だよ。ね、ちゃん」
「うん。俺達は全然平気だよv(もうちょっと遅くてもよかったんだけどな…)」
本心は言っている事と全く違っていた。
「何か言った? ちゃん?」
 カイトがに振り向く。
「ううん、何でもな〜いvv」
 は笑顔で答える。
「そう? ならいいんだけど」
 多少は疑問に思いながらも、カイトはみんなと遊び始めるのだった。


「何かあの子…ちょっと怖くない?」
 茂みの中ではキョウイチがを少し怖がっている為か、ビクビクしている。
「何で?」
 ショウがキョウイチに問う。
「だってさ、何だかカイトくんの手を引いたらいきなり僕の服が燃えたんだもん。あの子が僕を睨んだのと同じ時間帯なんだ」
「よく時間計れたね(笑)」
 燃えてる間に時間を計れるとはもはやただ者じゃない。(笑)
「あ、カイトくん達はかくれんぼを始めたみたいだよ」
 ショウはカイト達がかくれんぼを始めた事に気付く。
「えっ? 鬼は?」
 ケントがずいっと身を乗り出す。
「マモルくんみたい」
 ショウの言うとおり、マモルが数を数えている。

「じゃあ、いくで〜! いーち、にー、さーん!」
 マモルが目を閉じて、数え始める。
「隠れるだわさ〜!」
 ミヨもはしゃぎながら、走って行く。
「何処に隠れようかな〜?」
 カイトは何処へ隠れればいいかわからず、おたおたしている。
「カイト、こっち来いよ」
 がカイトの手を引っ張る。
「こっちに、いい場所があるんだ。絶対に見つからない場所だしな」
 がカイトを連れて行った場所は大きな木の穴。
「ここ?」
「そう。さっ、早く入れよ」
 カイトの背を軽く押す
「あ、うん」
 カイトが穴に入ると、続いても入った。
「何か、リスみたいだね」
 小さく笑いながらカイトは周りを見る。
「確かに、カイトはリスみたいだよな。俺もそうみたい」
 もカイトにつられて笑っている。
「そうだね、ちゃんだったら可愛いから似合ってるよ」
「ありがとな、カイト(///)」
 は照れているのか、顔が少し赤い。
「あ、マモルくんが数え終わったみたい」
 カイトはマモルが自分達を捜し始めている事に気付く。
「あ、本当だ。俺達、いつ見つかるのかな?」
 楽しみにしているのか、はわくわくしている。
 カイトもわくわくしているようだが。
「マモルくんって、かくれんぼには結構強いよ。だから、油断はできないかも」
「へ〜、俺には見えないけどな」
 頬杖をしながら、マモルを見つめる
 マモルはキョロキョロしながらカイト達を探している。

「うーん、なかなか見つからないわぁ。みんな隠れるの上手いんやな」
 草をかき分けたりしながら、マモルはカイト達を探す。
「あっ、まずはミヨちゃんから探した方がええかもな。あの子のカエル帽子が目立つから」
 ちょうど、そこに、近所に住む天童カイリが通りかかる。
 どうやら仕事が早く終わった為、帰っているところらしい。
「何してるんだ?」
 カイリはワールドリンク管理局に勤めていて、ショウの姉である倉知レナの後輩であり、助手である。
「あ、こんにちはカイリさん。今、みんなでかくれんぼしてるんや」
 マモルは笑顔でカイリに挨拶する。
「かくれんぼ?」
「せや、隠れてるのはカイトくんとミヨちゃんとちゃんや」
「へー…あそこに隠れてるのは違うのか?」
 カイリが指さす方向にはケント達が隠れている。
「えっ? あそこに誰かいるんか?」
 マモルが振り向こうとすると、ケント達は慌てて草に紛れて移動した。
「いや、俺の気のせいかもな」
 じゃ、とマモルに言った後、カイリは自宅へと足を進めた。
「(弟を見守る気持ちはわかるが…ストーカーにだけはなるなよ、ケントくん)」
 カイリは心の中で、ケント達に告げるのだった。
「確かに、今音がしたような気がするんやけど…気のせいやな♪」
 気を取り直したマモルは、カイト達の捜索を再開するのだった。
「さ〜て、何処にいるんや〜? カイトく〜ん♪」


「やば〜…危うくカイリさんにバレるところだった」
 ケントはカイリが帰っていくのを見届けた後、息を付いた。
「あの人って、勘が鋭いからな。簡単に人を見つけちまうし」
 トモヤもカイリに見つからずに済んだ事でホッとしている。
「さすが謎の人だよな」
 ナオキがどうしようもない事に感心する。
「ナオキくん、それどうしようもない事だと思うけど」
 ショウは苦笑いしながら、ナオキの肩を軽く叩く。
「…そうだな」
「カイト〜」
 ケントは最愛の弟(笑)を見守っていた。

「カイトくんとちゃん、見つけたで〜♪」
 それから40分後、マモルはようやくカイトとを見つけた。
「あちゃ〜、見つかっちゃった」
「マモルって、見つけるの上手いんだな」
 カイトとは穴から出る。
「これでも、僕は見つけるの得意やで〜♪」
 得意げになりながら、マモルはミヨを呼ぶ。
「ミヨちゃ〜ん、カイトくん達見つけたで〜」
「えっ? もう見つけただわさ?」
 ピョンピョン跳ねながら、ミヨがやってきた。
「ところでさ、今何時?」
 がマモルに問いかけた。
「えっと…もうすぐ4時やな」
 自分の腕時計を見ながら、マモルは今の時刻を教えた。
「やっば、俺もう帰らなくちゃ。晩飯の時間だから」
「そうだね、僕も帰ろうっと」
 の意見にカイトも賛成する。
「せやな、もう夕方やし。また明日な♪」
「じゃあ、またねーだわさ♪」
 マモルとミヨが帰って行く。
「「バイバ〜イ♪」」
 カイトとは二人を見送った。
「じゃあ、僕達も帰ろう、ちゃん。お家は何処?」
「あ、まだ言ってなかったっけ? 俺、カイトの家のすぐ近くなんだ♪」
「えっ? そうなの? じゃあ、一緒に帰れるね♪」
「そういう事♪」
 仲良く手を繋いで帰る二人。

「あらら…こりゃ俺達の負けだな」
 見守りながら、ナオキはため息をつく。
「明日は負けられないな、こりゃ」
 そう言って、肩をすくめるツバサ。
「何か、俺達負けてないか?」
 コウジが自分達の立場について考えている。
「もう僕は炎に包まれるのはごめんだからね」
 キョウイチは昼間の事を思い出し、震えていた。
「そりゃはそうだ…」と、全員は頷く。
「ケントくん、カイトくんはもう帰っちゃったよ?」
 ショウがケントの肩を叩きながら、カイト達を指さす。
「えっ!?」
 ショウの言うとおり、カイト達はもういなくなっていた。
「カイト〜!」
 すぐにケントは後を追うのだった。


 そして、夜。
「ふ〜、さっぱりした♪」
 お風呂に入った後、カイトはベランダへ出てみる。
 涼しい風が吹いている。
「うわぁ、風が気持ちいいなぁ〜♪」
「カ・イ・トv」
「ん?」
 カイトの後ろにはケントがいた。
「あ、兄ちゃん。今、すっごく涼しいよ〜♪」
「そ、そうか」
 はしゃぐカイトを見て、ケントはついにやけてしまった。
「ん? どうしたの兄ちゃん?」
「いや、何でもないさv」
 ケントは小さく笑った後、ベランダのドアを閉める。
 何だか企んでいるような目をしている。
「おいで、カイト♪」
「ん〜?」
 何も知らない純情カイトは、てくてくとケントの前まで歩み寄る。
 これを怖いもの知らずという。
 カイトピ〜ンチ!
 ところが…。
「勝手にカイトに触ってんじゃないよ!」
 いつの間にか現れたが、ケントとカイトを引き離す。
「うわっ! ちゃん!?」
 カイトは驚いてケントから離れた。
「何するんだよ!? せっかくいいところだったのにっ!」
 ぷんぷん、と怒るケントの前に降り立つ
「うるせーっ! 俺のカイトに触るなよ!」
 の瞳が光る。
 すると…。
「うわあああっ! あっちいいいいいっ!」
 いきなり、ケントの目前が燃えあがる。
「すっ…すっごーい! それなぁに、ちゃん? 手品!?」
 やっぱり純情であるカイトは見事にボケる。
「まぁな。俺の得意能力ってトコだな」
「すごいすご〜い!」
 ケントが慌てているのをよそに、カイトはの能力を褒め称えていたのだった。
 勿論、母親のナツコからケントは怒られたのだった。(←この時、はカイトを連れて逃げていた(笑))


 そして翌日。
 コミュニティーセンターにて。
「よぉ…ケント」
 ナオキが機嫌悪そうに、ケントの側まで来る。
 勿論、ナオキだけじゃなく、コウジ達も不機嫌そうな表情だ。
「ん? どうしたナオキ?」
 この時、ケントはまだこれから起こる恐怖に気が付いていない。
「みんなどうしたんだ? 目に隈ができてる」
「…だぁ〜れのせいだと思う〜?」
 拳を握りながら、ツバサはケントを睨む。
「夕べ…俺達全然眠れなかったんだよ」
 コウジもスッと席から立ち上がる。
「だから、今日はアンニュイな気分なのさ」
 キョウイチもこめかみに怒りマークをたてながら、ケントに近づく。
「えっ? それってもしかして…安眠妨害?」
「そうですよ。原因は君です」
 キョトンとしているケントに、トモユキは笑顔で話すが、目だけが笑っていない。
「俺が原因なのか? 何で?」
 まだケントはわかっていないようだ。
「お前…昨日、外でカイトに何しようとした?」
 今にもキレそうなトモヤがケントに質問する。
「えっ? いやさ、カイトを襲おうと…じゃなくてからかおうと思ったらちゃんがさ…あれ? もしかしてみんな…怒ってる?」
 ようやく、ケントは嫌な予感がしてきた。
「僕は暴力が嫌いだけど…君にはかなりおしおきが必要みたいだね♪」
 ショウは黒い笑みで拳に力を込める。
「ちょ、ちょっと待てよ! あれは俺のせいじゃ…」
「ケント、言い訳はやめた方がいいよ」
 ケントは撤回しようとするが、ジャンには通用しなかった。
 いや、みんなには通用できなかった。
「みんなのカイトくんに手を出そうとするなんて…いい度胸してるじゃないか。ケント」
 ジャンまで、黒い笑顔になる。
 そして…。

「ぐわぎゃおおおおおおおっ!」

 教室中にケントの悲鳴が響き渡った。


「あれ〜? 今の、誰の悲鳴だろ?」
 トイレに行っていたカイトは、教室に戻る途中、悲鳴を聞く。
「さぁね。野良猫同士がケンカしているんじゃない?」
 本当はケントの悲鳴だとはわかっているアオイだが、わざととぼける。
「そっかぁ…」
「うふふ。カイトくんって、本当にいつもほっぺがぷにぷにしてるわね〜♪」
「えっ? ア、アオイちゃん?」
 アオイがカイトの頬に触れようとしたその時。
「おい、カイトのほっぺに触っていいのは俺だけだぞ」
 ズイッと間に割り込んだのはだ。
「あら、ちゃん。邪魔しないでくれる?」
 黒い笑顔の女王様。
 しかし、はそれを見ても恐れない。
 ある意味、彼女も怖いもの知らず?
「うるせーよ、年増」
「…年増ですって?」
 とアオイの間に火花が散る。
「あ、あれ? どうしたのアオイちゃん? ちゃん?」
 カイトは止めようとするが、二人の迫力が凄い為、止められない。
 には、ケントの他に新たなライバルができた。
 それは、男子全員が恐れる女王、有栖川アオイ(笑)。
 カイトはただおろおろしている事しかできなかった。
 それを見届ける一人の女性。
 の姉である、マリンだ。
ったら…またあの火の能力使ったのね」
 彼女は、が体操着を忘れた為、届けに来たのだが…。
「また後で来ましょう。あの結城カイトくんには申し訳ないけど…にはちょっとお仕置きが必要かもしれないわね」
 そう言って、マリンはコミュニティーセンターを後にするのだった。


 それから数分後。
 シャイアはアオイ達を、レイミアはケント達を見かけるが、止められないとわかるとすぐに立ち去って行った。

「ちょ、ちょっと〜! ケンカはやめてよ〜!」

 カイトは大声で叫んだ。
 この戦いの勝者は未だに決まらないのだった…。




           〜完〜




 あとがき

 ウェブダイバー創作、初のギャグものです。 おまたせしましたGURI様〜!
 8888Hit記念作、やっと完成致しました! 遅くなってすみません!(汗)
 これの何処が争奪戦やねん、と思われたGURI様や、皆様方。
 決して結希に石を投げないでやってくださいませ(笑)。
 かなり、リクから離れてしまったのは承知しています。

 シャイアという男の子と、レイミアという女の子は結希のオリジナルです。
 二人とも、超能力を持っています。
 シャイアが初登場する話はもうすぐアップしたいんですがね…。(汗)
 この天童カイリという男性も結希のオリキャラです。
 天童ユイリという男の子はカイリの弟で、ユカリちゃんの友達です♪
 風の力を持っている、ちょっと不思議な男の子です。
 天童兄弟やシャイア達は、草幻界にあるウェブダイバー小説、『堕天使と少女』に登場します。
 今回のヒロインはGURI様のオリキャラです。
 ドリーム小説に登場させる許可は勿論、頂いております。
 この子のお姉さんもGURI様のオリキャラですが、名前は付けさせていただきました。(迷惑)
 マリンでよろしいでしょうかねぇ…?(待たんかいこら)
 この話で戦ったのはケントくん、様、アオイちゃんだけになっちゃいました!
 まあ、ケント以外の男子達は淡い想いっていうような感じで…(いいのか?)
 案外、ウェブナイト達の間でもカイトの事で、もめ事起こしてたりして(んなわけあるか)。
 何はともあれ、遅くなって申し訳ありませんでした!

                                     結樹汐梨




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