―――みんなが気になる俺の能力…。

 ―――俺はこの能力を大切にしたい…。

 ―――だから…。




                大切な力





「はあ…」
 サラサラと川のせせらぎがこだまする森の中で、小さな戦士はため息をつく。
「今日はここまでにするか…」
 戦士…いや剣士と言った方がいいのだろうか?
 地球の平和を守るミクロマン・イザムは一輪の小さい花を見つめながら背伸びをする。
「自然があるのって…やっぱりいいな」
 先程に自分の力で咲かせた花を見つめる。
「絶対に…地球を破壊させやしない…必ず…!」
 決意を高めるイザムに背後から声が…。
「イザムッ!」
 イザムが後ろを振り向くと、そこには地球での一番初めての友人である久磁耕平達がいた。
「ここにいたんだ、そんなに気に入った?」
 耕平の問いかけにイザムは、「ああ」と頷いた。
「この森は俺がまだ地球になじめなかった時に耕平達が連れて来てくれた場所だからな」
「よかった!」
 耕平の弟の祐太は、イザムの言葉に喜んだ。
「この美しい自然があるからこそ俺は守りたいと思うんだ」
「そう言えば…イザムって植物操れるのよね?」
 水沢麻美がイザムに問いかける。
「いつからできるようになったの?」
「それは…」




 ――豊かな森の中…。
 ――小さな小川のせせらぎ…。
「たあっ!」
 その中で、一人の幼い少年が剣の修行をしていた。
「たあぁっ! はあ…はあ…」
 小型の木刀を手に少年は荒息をつく。
「おれは…ミクロアースを守る為にも…もっともっと強くならなきゃ…!」
 そこへ、一人の女性がイザムに話しかける。
「イザム…」
「えっ? あっ…母さん…」
 話しかけた女性が自分の母だとわかった少年―イザムは落ち込むかのように顔を伏せる。
「今日は学校に行かなかったのね…」
 母の言葉にイザムはぐっと唇を噛む。
「だって…みんなおれのこの能力が気持ち悪いって…しかも母さんの悪口まで言うんだ…」
 イザムの言う能力とは、植物と心を通わせ、その命を芽生えさせる事ができる力の事。
 その力は母親譲りで、剣の腕前は父親譲りだ。
「この小さい花やあそこにある大きな木はみんな生きているんでしょ? おれ達と同じ…命を持ってるんでしょ…?」
「ええ、そうよ」
「命を芽生えさせて育てる事ができるって…そんなに気持ち悪いのかな? おれはそうは思えない。だって…だって…この力は母さんから受け継いだんだ…母さんはいつもミクロアースの平和を祈って…平和を守る強い人なのに…!どうしてみんなはわかってくれないんだ…!? おれはこの力を大切にしたいんだ!」
 悔しそうにイザムは涙を流す。
「それでいいのよ…イザム…」
「えっ?」
 母の言葉にイザムは首を傾げる。
「もしみんながあなたの力を嫌うのなら…あなた自身はその力を愛してあげなさい。父さんが剣を愛するように…母さんが植物や花を愛するように…そして私達がイザムを愛するように…」
「っ…!」
 優しく自分の頭を撫でる母にイザムは更に涙を流す。
「母さん…!」
「あなたが…平和と生命を愛してあげるときっとその力を持った事を幸せに思うわ…母さんはこの力を愛していたおかげで父さんに会えたのよ。そして…イザムに会えたのだから」
「うぅっ…母さん!」
 激しく泣くイザムは母に抱きつく。
「母さんがこの力を愛していたからおれは産まれて…この力を授かったんだね…おれ…みんながこの力をバカにしても…おれはこの力を大事にする! そして、そしてミクロアースやすべての生命を守りたい!誰もが気になるこの能力…おれはこの能力を大切にしたい! だから…」
 母にしがみついている手に力を込める。
「だから…おれは戦うよ! 命を弄ぶ奴を許すわけにはいかない! だって命はたった一つしかないんだから!!」





「それから俺は剣の修行を続けて、植物達と交流し続けた。俺の家にあった花達と話していると…何だかその花達と自分が兄弟のように思えてきたんだ。この力を大事にして戦ってきたから…この地球で…耕平達に会えたんだろうな…」
 イザムは、ミクロアースから持ち出した花の種をのせた手を見つめる。
「そっか…イザムの植物を操る力って…お母さんから…」
 麻美の言葉にイザムは頷く。
「ああ、みんなにからかわれた時はどうしてこんな力を持ったんだろうかって、疑問に思っていたけど、今では…俺の大事な宝物って言った方がいいのかはわからないけど、すごく大切な物なんだ」
 そう言って再び先程自分が咲かせた花を見つめた。
「僕達も…」
「ん?」
 言いかける耕平にイザムは首を傾げた。
「僕達もね、イザム達に会えた事や地球を守れる事ってすごく大事な事だと思うんだ。ミクロマン達を支える事ができるこの力も大事な宝物なんだね」
 へへ、と照れくさそうに笑う耕平に祐太もコクコクと頷いた。
「僕も! みんなと一緒にいる時ってすごく幸せだよ! だってみんな大好きだもん!!」
「私もね! ずーっとこの時間や、命を大事に生きていくわ!」
 麻美も祐太に続いて自分の気持ちを話す。
 三人の心情にイザムは小さく笑う。
「ありがとう…みんな…」
 イザムは三人に礼を言った後、スクッと立ち上がる。
「イザム?」
「そろそろ戻ろうか。実は、俺パトロールの途中なんだ。アーサー達も心配しているかもしれない」
 グッと背伸びをしたイザムに、耕平達も立ち上がる。
「うん、そうだね!」
「それじゃ、アースジェッターに乗っていくか?」
「「「乗りまーす!!!」」」
 アースジェッターにイザムと耕平と祐太と麻美が乗り込む。
「しっかり捕まっているんだぞ?」
「「「はーい!!!」」」
 笑顔で返事をした三人にイザムは頷く。
「よしっ、行くぞ!」
 そして、四人を乗せたアースジェッターは山を離れ、七王子の町の中へ飛んで行くのだった…。



                 〜完〜



 あとがき
 風海様からの777番のキリリクで書かせて頂きましたv
 イザムくんの過去ということで、イザムくんの母上(笑)に登場してもらいました。
 本編で語られたとおり、珍しい能力を持つ人がおかしいと思われていても、せめて
 自分だけはその力を大切にしてほしいと思います。
 周りに変わってると思われても、自分ではそれが自分の普通だと思ってほしいです。
 …いっぱい語ってしまいましたね。
 風海様、このような話で喜んで頂ければ結樹は幸いです。

                                       by 結樹汐梨