―――今日は大切な人へ贈り物をあげる日なのです…。
―――みんなは誰にあげるんだろう?
―――私だったら…。
想い人への贈り物
「えっと…」
クラスメートの家の前で、少女・池波はるかは戸惑っていた。
「イザムさん…いるかしら?」
はるかの手には六つの可愛らしい包みがある。
「まず、真悟くんに渡して、それからアーサーさん達に渡してそれから…」
今日のプランを振り返りながら、はるかはインターホンに指を伸ばす。
ピンポーン。
『はい、どなたですか?』
インターホンから、はるかのクラスメートである浅海真悟の声が聞こえてくる。
「あの…池波です」
『あ、はるかちゃん。ちょっと待っててね』
はるかだとわかった真悟は、すぐ玄関のドアを開けた。
「やあ、はるかちゃん。今日はどうしたの?」
「え、えっと…これを」
はるかは一つめの包みを真悟に渡す。
「えっ? これって…チョコ?」
「その…今日はバレンタインデーだから、真悟くんや皆さんにあげようと思ったんです」
「ありがとう、はるかちゃん! さ、あがってよ」
「ありがとうございます」
笑顔で礼を言うはるかに真悟は少し照れてしまうのだった。
「えっ? 私達にも?」
真悟の部屋の中では、ミクロマン達がはるかを出迎えた。
はるかからのプレゼントに、ミクロマンのリーダーであるアーサーは問いかける。
「ええ、皆さんにはいつもお世話になっていますから」
「ひゃっほーっ! サンキューはるちゃん!」
ウォルトは物凄く喜んでいる。
「それでは、僕達もありがたく頂くのであーる!」
エジソンも嬉しそうに受け取った。
「あら?」
はるかはもう一度ミクロマンを数え直してみた。
ところが、一人足りない。
「あの…イザムさんは?」
イザムがいない事に気付いたはるかはオーディーンに尋ねてみる。
「そう言えば…今日は見ていないな」
「平気平気、どうせ、屋根の上で特訓でもしてるんだろうよ」
明るく言うウォルトだが、はるかはイザムが気になって仕方がない。
「(イザムさん…受け取ってくれるかな?)」
そこへ…。
「今戻った」
イザムが相変わらず冷静な態度で窓から入って来た。
「イザム、今まで何処へ行っていたんだ?」
尋ねるアーサーにイザムは「ちょっとな」とだけ言った。
「おいおい…イザム。お前な…」
「はるか、来ていたのか?」
ウォルトをあっさり無視したイザムははるかに気付く。
「え、ええ。真悟くんや皆さんに渡したい物があったから…」
はるかは何故か最後の一つをそっと後ろへ隠す。
後ろでは、ウォルトがヤケ食いではるかから貰った、チョコを食べている。
「そうか…真悟、ちょっとはるかを借りるぞ?」
「はーい、どうぞ」
イザムの何かに気付いたのか真悟は笑顔で答えた。
「ありがとう。はるか、ちょっと俺と来てほしい所があるんだが…」
「あ、はい」
イザムは窓から、はるかは玄関から外へ出て行った。
「いいのかい? 真悟?」
アーサーが尋ねると、真悟は笑顔で頷く。
「うん! 二人だけにさせてあげるのもいいだろ?」
「「「「はい?」」」」
どうやら、アーサー達にはわからないようだ。
真悟だけがイザムとはるかの想いを知っているのだから。
「あ、そろそろ大輔や依月さん達来るかもね」
時計を見ながら真悟は楽しそうに笑った。
「あ、あの…イザムさん?」
「ん?」
「その…どちらまで行くんですか?」
「すぐそこだ」
短く答えるイザムに、はるかは小さくため息をつく。
「ここだ」
辿り着いた場所は真悟の家から少し離れた公園にある、小さな湖だ。
「ここ…ですか?」
「ああ、見せたい物があってさ」
「見せたい物?」
イザムはそのまま先へ進む。
「あ、待ってくださ〜い!」
はるかは慌ててイザムの後を追う。
だが、目的地はそれほど遠くなかった。
「これだ、はるかに見せたい物」
「えっ? まあっ…!」
そこには小さい淡いピンク色の花の蕾が植えられていた。
「前に俺が植えた物だけど、まだ蕾のままなんだ」
「きれい…」
「実は、この蕾を見せたのは、はるかが初めてなんだ」
「えっ? そうなんですか?」
「ああ、アーサー達や耕平達でもなく…一番にはるかに見せたかったんだ」
「私に…?」
コクッと頷いたイザムはそのまま話を進める。
「そう、またこの地球に来た時に花を植えたら、大切な人と一緒に見ようと決めていた。だから、はるか…君を連れて来たんだ」
イザムのその言葉にはるかは思わず涙ぐむ。
「は、はるか!?」
それに気付いたのか、イザムは少し驚く。
「あ、ごめんなさい…嬉しいんです。一番に見せてくれたのがすごく…」
やがて、はるかは最後の包みをポケットから取り出す。
「イザムさん…」
「?」
はるかは笑顔で包みをイザムに渡す。
「私の想いを…受け取ってください」
また少し驚いたイザムだが、笑顔で頷いた。
「ありがとう、はるか…」
そう言って、イザムははるかからの想いのプレゼントを受け取った。
「来月になったら…この花を君にあげるよ」
「イザムさん…ありがとうございます。チョコ…一緒に食べましょうか? お花を見ながら…」
「そうだな、家で食べたらウォルトに取られるかもしれないからな」
「ええ」
互いの顔を見合わせて笑い、イザムとはるかは花の蕾を見つめるのだった。
〜完〜
おまけ。
「さーてと、由紀ちゃん。このチョコをあげてこようか?」
「そうだね、麻美さん。麻美さんは耕ちゃんに、私は祐ちゃんに…ねvv」
耕平達の所でも、水沢麻美と未来由紀が久磁兄弟にチョコをプレゼントする計画を立てていたのは
言うまでもない。
「兄ちゃん…」
「あ?」
「何か…由紀ちゃん達嬉しそうだけど…どうしたんだろう?」
「さあ?」
未だに恋愛にはオクテな兄弟でしたvv
おまけ2。
「なーにがおまけ2だよ!」
真悟の部屋の中では、大輔が怒りながらウォルトとチョコ競争をしている。
「しょうがないよ、イザムとはるかちゃん中心のお話なんだから」
智は朗らかに勝負を見届けている。
「おまけって言っていたけど…何か納得いかないのよね」
クリスはため息をつきながら、オーディーンにチョコをプレゼントした。
「真悟さんは優しいから二人だけにさせてあげたんだよねー!」
三年生の元気も智や真悟と一緒にお茶を飲んでいる。
「沖田の言う通り、ただあのバカ女(管理人)はあたしらの事忘れてたんだろうねぇ」
由利はくつろぎながら、窓の外を眺めている。
「そんなに怒らなくてもいいじゃん? 今日はせっかくのベリーハッピーラバーデーなんだからさ〜♪」
由利の同級生であるソニックは相変わらず英語と日本語が混じった言葉を発している。
「お前もいい加減にそのインチキ英語やめな…」
キレかかっている由利に真悟だけは気付いているのでした…。
あとがき
初めてのバレンタイン創作ですv
バレンタインという事なので、イザム×はるか小説に挑戦してみましたv
前から書こう書こうと思っていたお話です。
イザムくんは、きっとはるかちゃんには優しいだろうなと思いまして、
このお話を書きました。
ミクロマン×小学生って…ちょっと難しいですね。(お前なぁ…)
ちなみに、元気という男の子とソニックという男の子も結希のオリジナルキャラです。
いつかはオーディーン×クリスとか、耕平×麻美とか、祐太×由紀なんかを…(多いじゃねーか!)
皆様も素敵なバレンタインを…vv(しゃべってる暇があったらチョコでも作ってなさい!)
by 結樹汐梨
