小さなサンタさん達





「クリスマス?」
 スーパーミクロベースにて、アーサーは耕平から聞かされた言葉をそのまま返す。
「そうだよ、クリスマス」
 耕平は笑顔で頷いた。
「それは毎年あるのか?」
「うん、毎年の12月24、25日がそうなんあるんだよ」
 質問するアーサーに、耕平はカレンダーを見せた。
「ほら、ここの24日にはクリスマスイブ、25日にクリスマスって書いてあるだろ?」
 耕平が持っているカレンダーを、アーサーはジーッと見つめる。
「確かに書いてあるな。それはおめでたいことなのか?」
「うん、そうだよ。24日はイエスキリストが誕生した日なんだ」
 そこへ。
 アーサーと耕平が話していると、ウォルトがやって来た。
「いえす…きりすとって何だ? 食えるのか?」
「違うっての…(汗)」
 ウォルトのボケにツッコミする耕平。
「違うのか? で、それって何なわけよ?」
「神の子とも言われる存在の人。教祖みたいな人…って言ってもいいかもな。聖母マリアの息子なんだ」
 耕平の説明を真剣に聞いているアーサーと、ジーッと耕平を見つめるウォルト。
「子供が産まれる日って、誰でも嬉しいだろ? だからね、クリスマスはイエス様を祝福する日なんだよ」
 そう言って、耕平はウィンドの外を見上げる。
 外は、もう雪が降りそうだ。
「クリスマスには雪、降ってほしいな」
 耕平は外を見つめながら笑顔で言った。
「雪か…この星での雪は初めて見るかもな」
 アーサーも耕平の隣に立ちながら、窓の外を見つめた。
「えっ? アーサー達も雪を見た事あるの?」
「そりゃあるさ。けど…その当時はじっくりと雪を見る暇はなかった。戦いの真っ最中だったからな」
 耕平の頭をくしゃっと撫でながら、ウォルトは寒空を見ている。
「そっか…ごめん」と、耕平は顔を伏せた。
「いや、謝ることはねぇよ。もし機会があったら、一緒に雪を見ようぜ。な?」
 ウォルトは笑顔で耕平の背中を軽く叩く。
「うん、そうだね。ありがとう、ウォルト」
「いーってことよ!」
 話し合っている耕平とウォルトを見守りながら、アーサーは微笑んでいる。
(ウォルトの言うとおり、アクロイヤーが攻撃をしかけて来なかったら…みんなと雪を見に行こう)
 心に思いながら、アーサーは再び空を見上げたのだった。



 そして、クリスマス当日。
 ミクロマン達は雪山へとやって来た。
「うわぁ、真っ白な雪だ!」
 祐太は、降ってくる雪を見てはしゃいでいる。
「ほう、これが地球に降る雪か。地球の雪は、なお綺麗なのである」
 片方の手で眼鏡をかけなおすように添えながら、エジソンも雪を見ている。
「毎年、必ず冬に降るのか?」
「そうよ、こういう風に周りが寒い時に雪が降ってくるの」
 イザムと麻美は雪について話し合っていた。
「あ、そうだ! 祐太、麻美ちゃん。ちょっと来て!」
 耕平が祐太と麻美に向かって、手招きをしながら呼ぶ。
「ん? どうしたの兄ちゃん?」
「なぁに? 耕平くん?」
 二人が耕平の元へ歩み寄った。
「ほら、例のあれをさ…」
「「ああ! あれだね!」」
 耕平の話に、二人はポンッと手を叩いた。
「アーサー達に見つからないようにこっそりとね…」
 そっと歩き出す耕平に、祐太と麻美もそっと歩き出した。


 三人がいなくなった事に気付いていないアーサーがみんなに呼びかける。
「ところで、みんな。ちょっと話があるんだが…」
 アーサーの声に気付いた四人はアーサーの方へ振り向いた。
「ん? どうしたんだ?」
 真っ先にイザムが問いかけてきた。
「今日は耕平達に何かを贈りたいんだ。いつも世話になっているしな」
「贈る…のか?」
 アーサーの話を聞いているオーディーンは腕を組んでいる。
「贈るっていってもよ、何を贈るんだ?」
 雪の上で寝っ転がっているウォルトはアーサーの顔を見上げる。
「それをみんなで話し合いたいんだ。彼らに感謝の気持ちを贈りたい」
 アーサーの真剣な瞳を見たのか、エジソンはコクッと頷く。
「そうであるな。アーサーの言うとおりなのである。みんなで相談し合い、何を贈るか決めようなのである」
 早速とばかりにエジソンは、腕に装着してあるコンピュータを呼び出し、辺りを捜索し始めた。
「何か…そう、花とかはどうだろう?」
 エジソンの手伝いをしながら、イザムは花を贈る事を提案する。
「そうか…花か。確かに、贈れば三人は喜ぶかもしれないな」
 イザムの提案に頷くオーディーン。
「では、みんなで珍しい花を探してみよう。耕平達から少し離れて探してみるぞ」
「「「「了解」」」」
 そして、五人は少し西に進んだ。
 勿論、耕平達がいない事にまだ気付いていない。


「よしっ! こんなもんでいいな!」
 手を叩きながら、耕平は笑顔で地面を見つめる。
「ねえ兄ちゃん、アーサー達を呼んでこようよ〜!」
 祐太も満面の笑顔で耕平に話しかけた。
「そうだな。麻美ちゃん、行くよ〜!」
「ちょっと待って〜! 今行く〜!」
 耕平の呼ぶ声に、麻美はすぐに走ってきた。
「さ、アーサー達の所へ行こう!」
「「OK〜♪」」
 三人はアーサー達を呼びに戻っていった。


「さて…どんな花を探そうか? なかなか見つからないのである」
 エジソンは眼鏡をいじりながら、花を探している。
「やっぱこの地球じゃ『冬』だから、花は咲いてないんじゃないの?」と、ウォルトが地面に座り込みながら愚痴る。
「だが…せっかく耕平達がこの山へ連れてきてくれたんだ。何かお礼になるものを渡さなくちゃいけないだろ? だから、小さくてもいいから冬ぴったりの花を探そう」
 アーサーは諦めずに花を探していた。
「耕平達に贈る為に、私は諦めない」
「アーサー…よし、俺ももう少し頑張ってみよう」
 アーサーの熱意にうたれたのか、オーディーンも捜索を再開した。
「確かにな。俺達がこうしていられるのも、耕平達のおかげだよな」
 ウォルトはゆっくりと立ち上がり、背伸びをした。
「そうだな。俺も耕平達が喜ぶ顔を見たいし」
 イザムもウォルトに続く。
 エジソンは頷きながら四人を見ている。
「一生懸命、頑張ろうなのである!」
 そして、五人は雪を掘りながら、花探しを再開した。
 やがて…。
「ん? これは…」
 アーサーは見た事がない花を見つけた。
 それに気付いたエジソンが、アーサーの側まで歩いて来る。
「アーサー、どうかしたのであるか?」
「白い…白い花を見つけた。これは見た事もないな」
 アーサーの無の前には、白い花が咲いている。
「これは…前に麻美から聞いた事がある」
 イザムがアーサーの隣に来て、口を開く。
「クリスマスに白い花が咲くそうなんだ。確か名前は…『クリスマスローズ』」
「クリスマスローズ? クリスマス用の花なのか?」
 イザムの説明を聞きながら、ウォルトが口を挟んだ。
「そうかはわからないけど…確かにクリスマスに咲く花みたいだ」
「これが…クリスマスローズ」
 イザムの隣にいるアーサーは花を見つめ、決意をした。
「耕平達にこれを贈ろう。耕平達を呼んでくる」
 そう言って、アーサーは立ち上がった。
「ああ、俺も行く」
「俺も行くぜー!」
 イザムもアーサーに続き、ウォルトも立ち上がる。
「それじゃ、僕らも…」
「そうだな。行こうか」
 エジソンとオーディーンも一緒に耕平達を呼びに行くのだった。


「あれ? アーサー達は何処に行ったんだろう?」
 戻ってきた耕平は、アーサー達がいない事に気付く。
「小さいからわかんないや…まさか、雪に埋もれちゃったのかな!?」
 祐太は、慌てて雪の中をかき分ける。
「今日は寒いからみんな凍えちゃうわ!」と、麻美も祐太に続いた。
「そんなっ…アーサー! みんなー!」
 耕平は大声でアーサー達を呼んだ。
 そこへ…。
「ここだー! 耕平ー!」
 何処からかアーサーの声が聞こえてくる。
「えっ?」
 耕平は、声のする方へ振り向く。
 そこには、アーサーがいた。
 無事な姿が耕平の瞳に映っている。
 勿論アーサーだけじゃなく、イザムやウォルト、エジソンとオーディーンも一緒だ。
「みんな! 無事だったんだね! よかったぁ…」
 ホッと、胸を撫で下ろした麻美はその場に座り込んだ。
「みんな、何処行ってたの?」
 祐太が手のひらに五人を乗せた。
「すまなかった。勝手にいなくなったりして。実は…耕平達に見せたいものがあるんだ」
 アーサーは真っ直ぐな笑顔で語りかける。
「「「見せたいもの?」」」
 耕平達は、三人揃って首を傾げた。
「ああ。ちょっと一緒に来てくれ」
 耕平のポケットに入ったイザムは、ある方向へ指さした。


「ここだ」と、アーサーは耕平のポケットからピョンと飛び降りた。
「ここに何かあるの?」
 五人を降ろした耕平がしゃがみ込む。
「ああ。これを見てくれ」
 アーサーはそっと雪をかき分けた。
 イザム達もアーサーを手伝う。
「あっ…!」
 麻美が驚きの声を上げる。
 そこには、白い花が咲いている。
「可愛い花だねぇ〜」
 祐太は嬉しそうに花を眺める。
「この花は?」
「これはクリスマスローズと言って、クリスマスの花なんだ。これは前に麻美が教えてくれたんだけどな」
 耕平に花の説明をするイザム。
「うん。まだ、イザムにしか教えてなかったけどね。でも、間近で見るのは初めてよ」
 麻美にとって、クリスマスローズは初めて間近で見る花だ。
「これが、我々からの贈り物なんだ」
 アーサーが三人に笑いかける。
「きれいだね。ありがとう、みんな」
「探すの大変だったでしょ? でも、嬉しいよ」
「本当に、どうもありがとう」
 耕平、麻美、祐太は笑顔でミクロマン達に礼を言った。
「礼を言われると照れちまうだろ? 日頃からの感謝の気持ちなんだよ」
 ウォルトがニカーッと笑い、耕平の肩に飛び乗った。
「気に入ってくれて、嬉しいのであ〜る♪」
 耕平達の笑顔を見て、エジソンは嬉しそうに頷く。
「耕平達の喜ぶ顔を見ていると、俺達も安心したぞ。本当によかった」
 フッと微笑んだオーディーンも、耕平の肩に乗った。
「あ、そうだ! 僕達からもね、プレゼントがあるんだ!」
 耕平は、五人を自分の服のポケットに入れる。
「プレゼント? 一体何だい?」
 アーサーが嬉しそうに問いかける。
「祐太と麻美ちゃんと協力して作ったんだ。地上絵だけど」
 耕平が二人を見ると、祐太と麻美は照れ笑いをしていた。
「そうか。では、みんなで見に行こうか。耕平達からのプレゼントを」
 耕平のポケットから顔を出したアーサーは、耕平達からのプレゼントを見る事を楽しみにしていたのだった。


 それからアーサー達は、耕平達からの贈り物である地上絵をゆっくりと眺めた。
 三人で頑張って書いたメッセージがミクロマン達の心をホッとさせてくれる。

『メリークリスマス☆ミクロマンのみんな♪ 耕平&祐太&麻美より』

 雪に描かれたミクロマンや耕平達は明るく笑っていた。
「どうかな?」
 耕平がポケットにいる五人に話しかける。
「すっげー…よく書けたな〜!」
「素晴らしい! これは最高の贈り物なのである!」
 ウォルトとエジソンが真っ先に感動していた。
「確かに、こんなにたくさん描かれていると、俺達を元気づけてくれている」
「エジソンの言うとおり、最高に素敵なプレゼントだな」
 オーディーンとイザムも嬉しそうな表情で、地上絵とメッセージを見つめている。
「本当に…素敵なプレゼントをありがとう。耕平、祐太、麻美。私達はすごく嬉しいよ」
 アーサーは更に笑顔で礼を言った。
「アーサー、みんな…うんっ!」
 耕平は嬉しそうに頷いた。

「「「メリークリスマス☆」」」

 子供達からのプレゼントを五人のヒーロー達に贈る事ができた。


 耕平達は、ミクロマンという小さなサンタさん達から綺麗なクリスマスローズをもらった。
 そしてミクロマン達は、耕平と祐太、麻美という素敵なサンタさん達から素晴らしい地上絵を見せて貰った。
 この日のクリスマスは彼らにとって、一生忘れられない思い出になるだろう。



            〜完〜



 あとがき

クリスマス創作でございます〜! ジングルベ〜ルジングルベ〜ル♪ 鈴が鳴る〜♪
もう一つ書いた別ジャンルの小説が暗かった為、ミクロマンの話で盛り上げようと書き上げました!
初めはどんなプレゼントにしようか悩んでいましたが、自然にあるものにしようと決めました。
アーサー達からは花、耕平達からは雪の上に描いた地上絵という設定をクリスマスより少し前に考えついたのですが(笑)
ミクロマン…やっぱり好きです! イザムくん大好き〜!(告白)←待て
ここだけの話。タイトルは今まで考えていませんでした(笑)
『小さなサンタさん(仮)』にしていたのですが、これじゃ一人だけになってまうやん!(汗)
それで、結局『小さなサンタさん達』にしました。そう、『達』を付け足しただけです(汗&笑)
ああ! どうか逃げないでくださいませ〜!
駄文かもしれませんが、この結樹、書いてて正直楽しかったです♪
それでは、皆様。メリークリスマス☆


                                       by 結樹汐梨