〜育成騒動〜
「ぎゃあああああああああああ!!!!!!!!」
突如、宝小学校中に響きわたる悲鳴。
「何だ!?」と、真悟は自分の部屋から飛び出す。
キュッ。
「?」
足に何かが絡みつく。
真悟はそっと下を見ると…。
「あれ…何でこんな所に赤ちゃんが…?」
足元には小さな女児がいた。
「か…可愛い…!」
そう言って真悟は女児を抱き上げる。
「むうむう!」と、女児は真悟にしがみつく。
「あはは! くすぐったいよぉ!」
ぎゅうぎゅうと押し迫られて、真悟は遂くすぐったくて笑い出してしまう。
「何か顔つきがはるかちゃんに似てるなぁ…ん!?」
はるかという名前に女児は何やら反応を示す。
「どうしたの?」
女児が一体何をしたいのか真悟はわからず首を傾げる。
「ふにー!!」
ペキッ!
「痛いっ!」
後ろから何やら小さいものが真悟の尻を蹴る。
その痛みに真悟は悲鳴をあげた。
「もう誰だよ…あれ!?」
下を見ると、ガキ大将のような幼い男児が真悟を睨みつけている。
「…何だか大輔に似てる…!!!!」
はるかに似ている女児、そして大輔に似ている男児…。
「まさか…この子達って…」
真悟は二人を見つめるたびに顔が青ざめていく。
そこへ…。
「真悟! 大変だ!」
真悟の元へ、耕平が走り寄る。
「あっ、耕平先生!! 部屋の前にこの子達が…」
「智とクリスが赤ん坊になってしまっている!!」
真悟の言葉を遮る耕平。
「………はい?」
しばしの沈黙。
「はいいいいいいい!!!!?????」
悲鳴の次は真悟の叫び声が響き渡る。
「今連れてきている…ほら」と、耕平は二人の赤ん坊を真悟に見せる。
「ミュゥ?」
「?」
二人の赤ん坊はジッと真悟を見つめる。
一人は淡い小麦色の肌の女児。
そして、もう一人は眼鏡をかけていて、焦げ茶色の髪の男児。
「間違いないです…クリスと智くんです…」
真悟は目に涙を溜める。
「じゃあこの子達は…」
耕平は真悟が抱えている女児と真悟の足にケリをいれている男児に目をやる。
「はるかちゃんと…大輔…」
赤ん坊の正体がわかった時、耕平と真悟の間にまたもや沈黙が走る。
ガシャアアアアアアン!!!!
「!?」
二人は音がする方へ振り向く。
「あそこって…耕平先生の部屋…なんじゃ…」
「ああ…間違いない…」
二人はお互いの顔を見て苦笑いする。
そして…。
「まさかああああああ!!!!!!!」
急いで走り出すのだった…。
耕平の部屋への前まで来ると、中から子供の声が聞こえてくる。
「行くぞ…立ち会ってくれ…!」
「はい…!」
覚悟を決めた二人はドアを開ける。
すると…。
「にいにい!」
耕平の足元によちよちと小さい男児が這い寄る。
「まさか…祐太…か?」と、尋ねる耕平。
「この子が祐太兄ちゃん!?」
祐太の変わり果てた姿に真悟は驚いた。
その時、小さい女児がいつの間にか耕平の頭の上に乗る。
「きゃは!」と、女児は嬉しそうに耕平の頭をぺしぺし叩く。
「…この子は麻美姉ちゃんだね…」
「間違いない…この二人は…祐太と麻美だ…」
「…じゃあまさか由紀姉ちゃんも!?」
「いや、彼女は今日は高校の友人と旅行の最中だからいない…と思うが…」
「思うって…(汗)」
どうしよう…。
二人の心の中にはそれしか言葉が見つからなかった。
ガターン!
「いやー! お願いだからじっとしてくれー!」
真悟の悲鳴が部屋中に響く。
ドタバタ音を立てながら男児になった大輔は部屋中を走り回る。
「待ってええ!!」
真悟は急いで大輔を追いかける。
「だあああ! 部屋の物荒らすなああ!」と、耕平も戸棚に昇ろうとする智を捕まえる。
クリスは暴れたりせずにに何処からか引っ張り出した本を読んでいた。
タイトルも『よだかの星』(笑)。
「なんつー難しい本を…」
息を切らせながら真悟は大輔を捕まえる事ができた。
「ふにー…」
大輔は悔しいのかふくれっ面だ。
「う…うみゃあああああああん!!!」
いきなり耕平のベッドで寝かされていたはるかが泣き出した。
「ああああ!! はるかちゃんが泣き出したあああ!!」
それを見て、はるかを優しく抱き上げる真悟。
「よしよしはるかちゃん泣かないでーv(汗&笑&涙)」
必死の笑顔ではるかをあやす真悟。
「…にこぉ…」
あやされていくたびにはるかも笑顔になった。
「ほっ…よかった…」
真悟はふうっとため息をつく。
「ちゅきーv」
チュウv
はるかは真悟の頬に口づける。
「え゛っ!?(////)」
突然の事に真悟は赤面になる。
「!!」
それを見てしまった大輔。
「ぶー!!(〇`з´〇)=3」
ふくれっ面になった大輔は真悟にポカスカ殴りかかる。
ポカポカポカッ!
「痛い痛い!! 助けて耕平先生ぇ! 大輔が…大輔が妬いてるよおおおお!!!!」
「それは驚いた。大輔は彼女が好きなのか?」
耕平は智を抱えながら大輔に尋ねる。
「みゅっ(〃・◇・〃)…」
大輔は見る見る顔が赤くなっていく。
「……図星のようだね」
「ははは…(♯ ̄∇ ̄♯)」
ボロボロにされた真悟は苦笑いをする。
「ちゅきーv」と、はるかは大輔のぷくぷくの頬に口づけた。
「(////)」
嬉しいのか恥ずかしいのか大輔はコテンと横になってしまった。
「ふう…やっとみんな大人しくなった…あれ?」と、一息入れた真悟がはるかの異変に気付く。
「うにゅう…」
はるかの体が震えだす。
「ど、どうしたの!? はるかちゃん!?」
「わからん…体の異変の影響か!?」
グッと息を飲む二人。
そこへ。
「おい、浅海と先公。何してるのさ」
「「えっ?」」
耕平と真悟は声がした方に振り向くと…。
「い…依月さん!!」
そこには真悟達の先輩で6年の依月由利がいた。
「せっかくの休日だったから寝ていたんだけどさ…先公の部屋がすっげーうるさかったから来てみたのさ」
その由利の表情は上機嫌とは言えない状態だ。
「ごめんなさい…その僕達は…」
今の状況を話そうとする真悟。
「ん? 何だよその赤ん坊達…先公の隠し子?」
「「ちゃう!!」」
しっかりツッコミを入れる耕平と真悟。
「実は…」
耕平は説明を始める。
「…なるほどね。こいつら池波達だったんだ」
「うん…」
「で? 何でこんな事になっちまったんだ? また先公や江島が怪しい実験でもしてたわけ?」
「違うよ。朝起きたら、智とクリスの二人が部屋の前で赤ん坊の状態でいたんだ」
「池波と浦沢は浅海の部屋に?」
「そうなんだ…でも…何でこんな事に…」
話を進めていくうちに、真悟ははるかの異変の事を思い出した。
「あっ! そうだ!」
「?」
真悟は急いではるかを連れてくる。
「依月さん、さっきからはるかちゃんの様子がおかしいんだ。ちょっと見てくれる?」
そう言ってはるかを由利に見せる真悟。
「どれどれ…ふーん…安心しな、おむつの交換だよ。赤ん坊にはお約束なものさ」
「そうなの!? じゃあおむつ…ないや…」
「じゃ、買ってきな」
由利は優しくはるかを抱きかかえる。
「はーい…(T T)」
由利にあっさり言われた真悟は仕方なく近くのスーパーに出かけた。
「おい…これで本当に…いいのか?」
真悟達の様子を伺いながらハイドルはジギルスに尋ねる。
「ええ…これで本当に…いいのです」
ジギルスは何やら楽しそうにその様子を見ている。
「まさか本当にこの『若返り砲』が役に立つとは思いませんでした」
「これで…ミクロマン共も…」
「はい…」
この二人の会話は何処か楽しい。
「とりあえず、ゼット様達も連れてきたよ」
真悟はそう言って机の上にゼット、ソロモン、シャクネツ、ダークを乗せた。
「あーあ…こりゃ酷いっすね…」
シャクネツは寝息を立てて眠っているはるか達を見つめる。
「ダーク。そなたにはわかるか?」と、ゼットはダークに尋ねた。
「俺に聞くな。このドアホブラコンが。まっ、これはアクロイヤーの仕業には違いない」
ダークはもうアクロイヤーの仕業とわかった。
「さすが元アクロイヤーに造られたサイボーグ。ところで…」
「ん?」
「私はブラコンではない…」
「ブラコンじゃないか。弟にベタ甘な奴をブラコンと言うんだ」
まるでゼットを挑発しているかのようにダークは話を進める。
「本当にせっかくの3人の麗しい乙女がこのような様態になるとは…」
ソロモンははるかとクリスと麻美を見つめている。
「まあ、今の姿も可愛いけどな」
「ソロモン様…そんな事言っている場合じゃないっす…(汗)」
ソロモンにこっそりツッコミを入れるシャクネツであった。
「あ、ゼット様。アーサー達は?」
「その事を言おうと思っていたよ真悟。彼等も…」
「彼等も…?」
真悟は嫌な予感がしてきた。
「はるか達と同じ状態だ」
4人のミクロマンは5人の小さい子供を見せた。
「はあ…(♯‐o‐)=3」
無事だったメンバーは深くため息をつくのだった…。
「依月さあああん!! はるかちゃんのおむつどうすればいいの!?」
夕方になってもまだはるか達が幼児化した原因が見つからない。
はるかを抱えながら慌てて由利に質問する真悟。
「お前はやめときな…男だし…女であるあたしに任せて」
そう言って由利は麻美とはるかとクリスを連れて、隣の麻美の部屋へ向かった。
「その間こっちは!?」
「浦沢や江島や久磁の相手でもしていな」
(由利は、耕平には先公、祐太には久磁と呼んでいる。)
部屋に入る前に由利はきっぱり言った。
「ふえ〜ん…依月さぁん…(〒0〒)」
真悟は半分泣いているようだ。
仕方なく真悟は智を抱き上げる。
「にいにv」
智は真悟の頬に頬ずりする。
「うあ〜…ぷにぷにしてる〜…」
その気持ちよさに真悟は眠くなってしまった。
「ふにに!!」
「あ、こら大輔!! ウォルト!!」
バコォッ!!
「あうっ!(;T〇T)/」
また大輔に腰を蹴られてしまった真悟。
すると今度はウォルトが真悟の髪を引っ張る。
「もう痛い! めっ!」
真悟は涙目になって怒った。
涙目…つまり、よっぽど痛かったのだ。
「ぷいっ!」
大輔は思いっきり顔を背ける。
「むーっ!」
その態度に真悟はふくれっ面になった。
耕平もウォルトを取り押さえるのに必死だった。
その時…。
「いいざまでごぜーますなぁ…ミクロマン共!!」
「!!」
その場にいた全員が外を見るとそこにはチェーンスパイダーがいた。
「あっ…チェンスパ!!」
「略すな!!」
真悟のボケにチェーンスパイダーはツッコミを入れた。
「まさか…今回の事はやはり…?」
耕平は睨み付けながら問う。
「もちろん、おら達がやったでごぜーますだ!」
「何故そんな事を!?」
「それはもちろん、ミクロマン共や共鳴者達が子供に戻ってしまえば…」
「しまえば…!?」
耕平と真悟は息を飲んでチェーンスパイダーの答えを待つ。
「戻ってしまえば…からかいがいがあって、頬をつねる事ができるからでごぜーます!!」
ドオオオオオオオオオン!!!!
その場にいた全員は見事に自爆した。
「むーむー(ふざけるな!!)!!」
イザムはまん丸い手をぶんぶん振り回す。
「むにー!(許さんぞ!)」
アーサーも耕平に抱かれながら抗議する。
でも、耕平に抱えられていて少し嬉しそうだ。
「このバカ…下心丸見えだっつの…(♯―_―)/)))☆」
ダークはジト目でアーサーを睨み付ける。
「とにかく! すぐに教官達を元に戻せ!!」
シャクネツはヒーローのお約束なセリフで立ち向かう。
「ぶー!(〇`з´〇)=3」
ふくれっ面になるアーサー、イザム、ウォルト、エジソン、オーディーン。
「「「「「(それとっても言いたかったのにぃ…)」」」」」
心の中はこれしか言葉がなかった。
「へっへっへっ! だーれがそんな簡単に戻すか…んぎぃっ!?」
ピタッ…!
チェーンスパイダーの頭に竹刀が当てられる。
「へえ…てめえの単なる悪戯のせいで池波達が幼児化…それであたしのせっかくの休息はおだぶつになったってわけかい…?」
竹刀の持ち主は由利だった。
今朝よりもさらに不機嫌そうな表情だ。
「人が休んでいたのにねぇ…この蜘蛛ちゃんに…ちょっとお仕置きが必要だとは思わないかい? 浅海?(♯^_^)d」
ゆっくりと深紅色の瞳を真悟に向ける由利。
「…はい!!b(♯^▽^♯)d」
真悟も笑って返事をしたが、心の中には物凄い怒りがこみ上げてくるのがわかる。
「そういやー…子供って動く物に興味があるのを知ってるかい? 鎖蜘蛛!!!」
そう言って、由利は竹刀でチェーンスパイダーをはるか達の方へ撃ち飛ばす。
「ぎゃあああああ!!!!」
チェーンスパイダーははるかの前へと落ちた。
ガシャッ!!
「!!」
蜘蛛のような見知らぬモノが落ちてきてはるかの目には涙が溜まる。
「にゃあああああああああああああんんんん!!!!!」
大声を上げてはるかは泣き出した。
それを見たイザムはよちよちと歩いて行き、
「むうむう…(よしよし…)」
はるかの頭を撫でてあげた。
「それじゃあこっちも…」と、ダークはダークキャリバーを取り出す。
ソロモン達もレッドパワーを全開にする。
「よいな? 耕平殿?」
ゼットとソロモンは耕平に問いかける。
「もちろん…殺ってくれ!!!」
耕平も怒りが全開していた。
「むにむにー!!(レッドパワー全開!!)」
アーサーは短い腕を振り上げ、そこからミニレッドキャリバーが現れる。
「あ…ああああ…」
チェーンスパイダーは恐る恐る逃げようとする。
「「「「「「「とっとと出て帰れえええええええ!!!!!!!」」」」」」」
ドゴオオオオオオオオオンンンンン!!!!!!
「うぎゃああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
チェーンスパイダーはアーサー達の攻撃により、空へと飛ばされた。
「失敗したな…あいつ」
光る一つの星を見つけたハイドルは確信した。
「そうですね…後で…始末書出させます…」
ジギルスはそう言って再び聖書を読み始めた。
「「はあ…」」
二人の青年アクロイヤーは深くため息をつくのであった。
そして、翌日になってはるか達は元に戻った。
もちろん、昨日の出来事など記憶にない。
「たっだいま〜♪」
旅行から帰って来た由紀はもちろんみんなにお土産を買ってきてくれた。
「何だか耕ちゃんや真悟くんや由利ちゃんやゼットさん達疲れてるわね? 何かあったの?」
目に隈ができた耕平、真悟、由利、ゼット、ソロモン、シャクネツは大きなため息をついた。
「はい! これみんなにお土産ね!」
そう言ってみんなにお土産を渡す由紀。
「ありがとう…由紀姉ちゃん…」
「いいえ! どういたしまして!」
真悟はどっと疲れていたが、せっかく買ってきてくれたのでお礼を言った。
「おや? 由紀ちゃん。一つだけ違う袋があるが…?」と、由紀に尋ねる耕平。
「あっ! あれは祐ちゃん用よ♪旅行先での思い出と私からの愛がこもってるから♪」
「「は…ははは…」」
耕平と真悟は苦笑いした。
「そうだ! 後でパパ達にもお土産渡さなくちゃ!」
そう言って由紀は、アーサー達用と祐太用の袋を持ち上げる。
「さてと行かなくちゃ♪待っててね〜祐ちゃ〜ん♪」
鼻歌を歌いながら由紀は元気良く愛する(爆笑)祐太や育ての親でもあるイザム達にお土産を届けに行くのだった。
〜完〜
おまけv
真悟「そう言えば…ダーク…」
ダーク「ん? 何だ?」
真悟「ダークも昨日疲れたでしょ? 何で目に隈できないの?」
ダーク「決まってるだろ?」
真悟「?」
ダーク「俺はサイボーグだから」
真悟「はあ…(汗)」
ちゃんちゃん♪
あとがき
1000ヒット記念作品ですv
レッドパワーズ編の短編に挑戦してみました!(燃)
(何故に燃える?)
レッドパワーズ小説での初のオリキャラを出しました!
結希の創作では、耕平くんを救出した後で、ダークも仲間に加わったという設定にしております。
この由紀という女の子は、いずれ書くであろうレッドパワー小説長編で登場するキャラで、
十五年前にウォルトとイザムに育てられた過去を持ち、実はミクロレディの生まれ変わりという設定にしております。
耕平くんには麻美ちゃんがいるので、祐太くんのお相手にしちゃおう!ってなわけでこの子を登場させました。
ちなみに、彼女は16歳の高校生です。
もう一人のオリキャラ、依月由利についてですが、本編で語られたように真悟くん達の先輩で、
六年生の不良少女です。
彼女は過去に最悪な出来事があったため、少々ぐれています。(笑)
しかし、とても後輩思いで優しいのです…vv
だから、真悟くん達が困っている時に助けてくれたりするので、真悟くん達から慕われているのです。
二人とも、結樹のお気に入りのキャラクターです!
由利もこれから書くであろうレッドパワーズの長編で登場しますので!
シリアスにするつもりでしたが、総統アクロイヤーのお遊びでギャグになってしまいました。(笑)
ソロモン師匠とダークの性格は結希のイメージです。
ダークなら絶対に性格悪いとわかっていますので。(汗)
でも、ダークは耕平くんに造られた存在だから、きっと子供達には優しかったりして…。
……長く書いてしまいましたが、これ書いててとっても楽しかったですv
こんな記念作品ですが、気に入ってくだされば幸いの結樹でございますVv
