クリスマスケーキの行方





「あれ? ケーキが…ないっ!?」

 キッチンへ入り、オーブンを開けた麻美の大声が響き渡った。

 今日はクリスマス・イブ。

 耕平の家で、クリスマスパーティーをする事になった。

 せっかくだから、とアーサー達も、耕平の家へ来る事になったので、麻美はクリスマスケーキを焼こうと決めた。

 なのに――。





 話は二時間前に戻る。

「久しぶりよねぇ。アーサー達が耕平くんの家に来るのは」

 スポンジに塗る為のチョコレートを溶かしながら、麻美はカレンダーを見た。

 アクロイヤーに見つかり、ミクロベースが破壊されてから、彼らは八王子駅の一部を新たな基地へと改造した。

 それ以来、久磁家へ来る事が少なくなった。

「今日は楽しくなりそうね――あっ、スポンジが焼けたみたいねv」

 麻美がそっとオーブンを開けてみると、チョコスポンジがふんわりと型から顔を覗かせていた。

 オーブンが冷めてから取り出し、麻美は一旦、それをテーブルに置いた。

「あ、持って行くならラッピングしないとね! 部屋から取って来ようっとv」

 そう言って麻美はエプロンを外し、キッチンを後にした。

 ケーキを包む為の箱とリボン、包みを探す為に――。





 そして、現在に至る。

 そう、その間にオーブンに入っていたはずのケーキが無くなってしまったのだ。

「な、何で!? 何処行っちゃったのー!?」

 辺りを見回すが、やはりチョコスポンジケーキは無かった。 

 デコレート用のチョコレートやフルーツ等は、ちゃんとテーブルにそのままであったのだが。

 ふと時計を見てみると、時刻は午後1時。

「あぁー! 時間がないよぉ…しょうがない!」

 透明のボールに缶詰のフルーツ類をあけて、溶かしたチョコレートには、予めデコレート用に切っていたバナナを放り込んだ。

 急いでそれをラッピングした後、麻美はそれを持って家を飛び出して行った。





「はぁはぁっ…あれ?」

 耕平の家を目指して走っている中、麻美は通りかかった公園で見覚えのある連中を見かけた。

 それは――。

「マ、マグネタイタンズ!?」

 そう、泣く子も黙る(?)マグネタイタンズだったのだ。

「よぉ、アーサーんトコの嬢ちゃんじゃないか」

 麻美に気づいたのは、リーダーのガンボディだった。

 その側には、レザーマスターやジェットモグラーもいる。

 しかも――何かを食べているようだ。

「どうしたんスか? そんなに慌てて――」

「ちょ、ちょっと出かける所で――ん!?」

 食べているジェットモグラーに問いかけられた為、答えようとした麻美だが、彼らが持っている物に目を向けた。

 茶色い何か――見覚えがある。

「あ、あなた達…それ、どうしたの?」

 嫌な予感がする。

 しかし、気になる。

 恐る恐る麻美が訊ねてみると――。

「あぁ、これか? ほら、この前嬢ちゃんが作ってくれた『ケーキ』ってのと同じやつだよ。ミクロジウムを探しながらある民家に忍び込んでみたら、テーブルにこんなのがあったから頂いて来ちまたってわけさ」

 レザーマスターのいう『ある民家のテーブルにあったケーキ』。

「そ、そ、それっ…!」

 それは間違いなく――麻美が作ったチョコスポンジケーキだった。

「なんなら、嬢ちゃんも食うか? 残念ながら、これちょっち苦いし、ミクロジウムは見つからなかったけどn」


「あんたらが盗んで持ってって、しかも食ったんかああああああああああああっ!(怒)」



(+`・д・)≡○)゜3。)д`)A゜).・;’∴



「「「ぎょえええええええええええええっ!?」」」


 麻美によってボコボコにされた、哀れマグネタイタンズ。

 否、哀れなのは勝手にチョコスポンジを持って行かれて、しかも勝手に食べられてしまった麻美かもしれない。





 そんなこんなで、午後2時半。

「麻美ちゃん、どうしたんだろう…」

 時計を見ながら、耕平は時々窓を開けて外を見た。

「大丈夫だって! きっとすぐ来るさ」

 ウォルトは相変わらず呑気だ。

「パーティー開始まで、あと少ししかないのである…」

 流石に、エジソンも心配になってきたようだ。

 と、その時。

 ピンポーン、とインターホンが鳴った。

「あ、麻美ちゃんかも! 僕見てくるよ!」

 そう言って、祐太は部屋を出て階段を下りていった。





「ご、ごめんねーっ…遅くなっちゃって!」

 耕平の部屋に入った後、息を切らしながらも、麻美は持ってきた包みを紙袋から取り出した。

「い、いや。私達は構わないけど…麻美、何かあったのかい?」

「ちょ、ちょっと色々とね。本当はケーキ作ってこようと思ったんだけど…できなかった」

 アーサーに、遅くなった理由を見抜かれたからか、麻美はしょんぼりと項垂れてしまった。

 とりあえず、持ってきた物を包みから出す。

「一応、チョコバナナとフルーツ類は持ってきたんだけど…これだけじゃねぇ」

 チョコバナナはこれでいいが、慌ててボールにあけてきただけのフルーツ類では…と麻美がしょげていた時。

「あ、それだったらいいのがあるよ! ほら、これ!」と、耕平が机に置いておいたサイダーを手に取った。

 その手にあるペットボトルの中のサイダーは、日の光でキラキラと輝いている。

「サイダー? あっ!」

「うん! ちょっとそれ貸して」

 麻美が顔を上げた瞬間、それとフルーツ類とを組み合わせる菓子を連想した。

 その答えが合っていたのか、耕平は頷くと、麻美からフルーツ入りのボールを借りた。 

 そして、その中にサイダーを注ぎ入れる。

「耕平、それは?」と、イザムが問いかけてきた。

「フルーツポンチだよ。こんな風に、ジュースやサイダーと一緒にフルーツを混ぜ合わせるんだ。ちょっとしゃれてるだろ?」

「すっごくおいしいんだよ!」

「へぇ、確かにすっげぇ美味そうv」

 耕平が答えると、祐太も笑顔で頷いた。

 ウォルトは、耕平の肩に飛び乗ると、そのボールをジーッと見つめている。

「耕平くんの割りには冴えてるわねv」

「『割りに』は余計だよ(-へ-;)」

 麻美の棘のある発言に、耕平はつっこんだ。

「よし、これで全員揃ったな」

「ああ。ここで集まるのは久しぶりだからな」

 アーサーは、全員いるのを確認すると、嬉しそうに微笑んだ。

 オーディーンも久しぶりだからか、やはり嬉しいようだ。

「エジソン、今何時になった?」

「3時ちょうどなのである」

「そうか。じゃあ、これで心置きなく始められるな」

 仲間と一緒で嬉しいのか、イザムとエジソンも笑顔で麻美達を見つめていた。

「さあ、パーティーを始めよう! なのであ〜る!」

「お前が仕切んなよ〜!」

「ウォルトよりはマシなのであ〜る」

 取り仕切るエジソンにツッコミするウォルト。

「あーもう、二人共やめなよー!」

 祐太が呆れて仲裁に入る。

 その様子を、麻美はニコニコと微笑みながら見ていた。

 そして、小さく囁いたのだった。

「メリークリスマス。みんな――」




                完




あとがき

クリスマス創作第1弾は、ミクロマン(平成)です!
これを急いで書いていたのはナイショです…v(もうバラしてる;)
長い間、小説書いてなかったので、すっかり鈍くなっていまいました;
お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした;
麻美ちゃん、相変わらずケーキ作りが上手くて、汐は尊敬しちゃいますわv
うちは全くケーキが作れません;←せんべいモドキになるくらいにね;
ところで今回、ミクロ小説にマグネタイタンズを登場させたのは初です!
今、気がつきました!(笑) ごめんね、タイタンズ…。
今まで忘r…出してあげられなくて;←今、忘れてとか言いかけただろ;
多分、これからの小説に出てきてもきっとオチ扱いされるかもしれません。←をい
まぁ、宇宙海賊だからめげないでしょう!←関係ない
この話で、彼らがその後どうなったか――ご想像にお任せしますv←逃げるな
書いてて楽しかったです! それでは…。

                                   by 結樹汐梨