ミクロマンとアリカ…(番外編)
聖女からの贈り物
ある日の事。
ウォルトは、何やら料理をしているアリカを見かける。
「アリカちゃん…? 何してるんだ?」
ウォルトの視線の先にいるアリカは何やら嬉しそうに、ボールを湯煎にかけている。
「???」
何を作っているのかよく見えない為、ウォルトはこっそりと近づいてみる事にした。
すると…。
(何か…甘い匂いがする)
そう思ったウォルトは、そっとボールを覗いてみる。
ボールの中には茶色いチョコレートがゆっくりと溶けようとしていた。
(あ、チョコレートだ!)
なるほど。
アリカはチョコレートを溶かしていたのか。
納得したウォルトは手をポンと叩く。
「けど…何でチョコを溶かしてんの?」
「まだ秘密ですよ」
アリカは笑顔で秘密だと答えた。
それを聞いたウォルトは腕を組んで考え込む。
「…アーサー達に聞いてみるか」
仲間に相談する事にしたウォルトは、その場をそっと離れた。
アリカもウォルトがいた事に気付いていなかった。
「チョコレート…であるか?」
ミクロマン基地にて、コンピュータをいじっているエジソンはウォルトから話を聞く。
「そっ! 何でだかわかるか?」
ウォルトは椅子に座ってくつろぎながら、アリカとチョコレートの事をエジソンに伝えた。
「そう言えば、以前に麻美やはるか達も、ウォルトが言ってたアリカと同じ行動をしていたな」
話を聞いているオーディーンも以前に麻美やはるか達が、アリカと同じようにチョコを溶かしているのを見た事があるようだ。
「もしかして、今日はあれじゃないか?」
エジソンの手伝いをしているイザムが何かを思い出したかのように話す。
「イザム? あれって何だよ?」
頬杖をつきながら、ウォルトはイザムに尋ねる。
「麻美から聞いた事があるんだ。アリカがしている事って、バレンタインの準備じゃないか?」
「バレンタイン? ああ…何か聞いた事あるな」
イザムの話に、ウォルトもだんだんと思い出し始める。
「えっと…何だっけ? 好きな人に贈る…ってやつ?」
「多分、そうだと思う」
ウォルトが聞くと、イザムはコクッと頷く。
「好きな人に贈り物をあげる日なんだよな…じゃあ、アリカちゃんには好きな奴がいるって事か!?」
考え込むウォルトだったが、すぐにバッと顔を上げる。
そこへ。
「好きな人に贈るのか? ウォルトが?」
何も知らないリーダー、アーサーは首を傾げている。
「アーサー違う! 俺があげるんじゃなくて、アリカちゃんが好きな奴にあげるんだよ!」
アーサーのボケにツッコミするウォルト。
「アリカちゃんが好きな人にあげるのか? 好きな人か…」
アーサーはうーんと考え込む。
イザム達はそんなアーサーをジーッと見つめる。
「アーサーって…恋愛感情、理解してるっけ?」
ウォルトは小声でオーディーンに話しかける。
「…わからん」
オーディーンは苦い表情で答えるしかできなかった。
やがて…。
「わかったぞ!」
突然、アーサーはひらめいたかのように顔を上げた。
「な、何がわかったのであるか?」
苦笑いしながら、エジソンが問う。
「アリカちゃんはきっと父親である祐太や叔父である耕平、兄のように接してくれる真悟達にあげたいんだろう」
アーサーが答えると、その場にいたアーサー以外の全員は目が点になる。
「ん? どうしたんだ?」
アーサーはイザム達の様子に首を傾げる。
そして、四人は深くため息を付いた。
「「「「全然わかってないし、この人…」」」」
その呟きはアーサーには聞こえていなかった。
「ア、アーサー…どうして君はそう思ったんだ?」
イザムはジト目でアーサーに問いかける。
「え? ほら、アリカちゃんは長いこと耕平達に会っていないだろう? だから、再会した時に渡したいんだろうと思ってな」
アーサーのその考えに、みんなは確かにと思った。
今のアリカはきっと祐太や耕平、真悟達に会いたくて仕方がないだろう。
そんなアリカの寂しさや気持ちはイザム達もよくわかる。
だが…。
「「「「たとえそうだとしても、『好きな人』と家族は違うだろ…」」」」
イザム達は更に呆れ顔になった。
そしてアーサー達は、ウォルトの案内でアリカの所へと向かった。
ついたのと同時に、草むらに隠れて様子を見てみる。
アリカは、溶かしたチョコを型に流し入れたらしく、冷めるのを待っている。
「一体誰にあげるんだろうな?」
ウォルトは未だにアリカが誰に渡すのか気になっていた。
「だから、耕平や真悟…」
「アーサー…いつ会えるかわからないし、日が持たないって言っただろ?」
再びボケるアーサーにツッコミしたのはイザム。
すると、アリカがアーサー達に気付いた。
「あら? みんなどうしたんですか?」
「ゲッ! 見つかった!」
アリカは慌てているウォルトの前でしゃがみ込む。
「アリカちゃん。チョコレートを作ってたのかい?」
アーサーが馬鹿正直にアリカに聞いてきた。
「ええ。ちょっとね…///」
照れ笑いしながら、アリカは型に入ったチョコを見る。
「あ、ちょっと待っててくださいね」
ニコッと微笑むと、アリカは再びチョコの方へと戻っていった。
「アーサー…何でそんな馬鹿正直に聞くんだよ?」
呆れているウォルトは、アーサーの肩に手をおく。
「えっ? 聞いちゃまずかったか?」
アーサーは首を傾げながら、アリカを見つめている。
「本当はアリカくんの様子を見に来ただけだが…小さい我々を見つけるなんてさすがであるな、アリカくんは」
エジソンはアリカの視力に感心していた。
「アリカは一生懸命頑張っているんだ…大切な存在である耕平達を探す為に」
オーディーンも、女の子なのに挫けないアリカの一生懸命な性格を尊重する。
「だから、きっとすぐに会えると思っているから、頑張って作っているんだな」
イザムもオーディーンと同じだった。
「そうか。やっぱアリカちゃんは、アーサーの言うように…耕平達に渡したいのかもな」
フッと笑ったウォルトはアリカを見守っていた。
それは勿論、アーサー達も同じだった。
そして、夕方。
やっとアリカのお手製のチョコが完成した。
「ふぅ。やっとできた」
アリカはタオルで汗を拭いた。
「お、できあがったか?」
ウォルトがテントからひょっこりと出てくる。
「ええ。成功です♪」
笑顔で頷いたアリカは、型からチョコを抜く。
「ついに完成したであるか」
エジソンもウォルトに続いて出てくる。
アーサーやイザム、オーディーンもテントから出てきた。
「まずはミクロ化してっと…」
アリカはミクロッチのボタンを押し、チョコと共にミクロ化した。
「何でミクロ化を…?」
アーサーが尋ねると、アリカはにっこりと笑う。
「だって、これは…」
そして、持っていたチョコをアーサー達に見せる。
五人は一斉に視線をチョコへと向ける。
すると、チョコには『大好きなミクロマンのみんなへ』と白いホワイトチョコペンで書かれていた。
「じゃあ、これは…」と、アーサーが顔を上げる。
「はい。これはアーサー達へのプレゼントです///」
頬を淡く染めながら、アリカはチョコを差し出した。
「私は、この地球とみんなを守ってくれるあなた達が大好きです。その想いをこのチョコに込めました」
アリカは真っ直ぐな瞳をミクロマン達に向ける。
そして、にっこりと微笑んだ。
「そうか…ありがとう、アリカちゃん」
アーサーも笑顔で礼を言う。
「確かに、君の想いが込められているな」
「サンキュ、アリカちゃん!」
「とても素晴らしい贈り物である!」
「アリカ、ありがとな」
イザム、ウォルト、エジソン、オーディーンもアリカに感謝する。
「さあ、みんなで頂きましょう?」
「一緒にかい? 嬉しいよ、アリカちゃん。ありがとう」
アリカは照れながらも、五人に笑いかける。
そんなアリカの手をアーサーが握った。
「私こそ…ありがとう、ミクロマン///」
一人の聖女と五人の戦士は共に夜空を見上げながら、聖女からの贈り物を頂くのだった。
〜完〜
あとがき
バレンタイン創作〜!(何だよいきなり) 今回はミクアリにしました。
旅の途中で、アリカは持っていた食料と器具でチョコレートを作りましたv
勿論、あげる相手はミクロマン達!
みんなへの想いを込めたプレゼント、というのはこの話を書く少し前に思いついたものです。
きっと、アリカは耕平くん達と再会した後もチョコを作るのかもしれませんね。
あ〜、あそこで耕平くん達が『その話書けよ〜!』って怒ってる。 あははははは(ごまかすな)
久しぶりに、アーサーのボケっぷりが書けて面白かったです♪(爆)
イザムくん達も書けて嬉しいし、楽しかったですね。 アリカはまだまだアーサー達と旅を続けていきます。
またバレンタインの日に、今度は好きな人とだけで過ごせる話も書きたいなぁと(書けよ)
『この話、変〜!』と思った方、決して結希に石を投げないでくださいませ(笑) ではvv
結希 汐