新潟県南蒲原郡田上町の方言 (さ〜そ)

禁無断転載


方言

共通語

使用例または説明

さーめ

寒い

寒いが鈍ったもの

さかき

ひさかき

ツバキ科の常緑木、強い匂いがする、神棚に備える

さくらんぼ

山桜の熟した実

「さくらんぼ」は山桜の実を指す、(ソメイヨシノは一代交配で結実しない)、ここではさくらんぼは「おうとう」と言う

ざこ

諸々の小魚

雑魚、大きい魚を捕まえようとした時、意図せずに入ってくる小魚

ささだんご

笹団子

よもぎの葉ともち米をまぜて作った団子を熊笹の葉で包んだ団子、6月の農閑期に作った

ささのみ

笹の実

熊笹の実、100年に一回結実すると言われているが、昭和25年に一の坂奥の笹が全部結実した

さじ

スプーン

さで

小型の網

魚を獲る為の小型の網、朝鮮語のsadluと同じ意味

さぬきまめ

そら豆

讃岐豆の意味?

さべる

しゃべる

「そんげはーよ さべんなね わからねっけ」(そんなに早く しゃべらないでください わかりませんから)

ざま

かっこう

「ざま わーれて めぐせーかったて」(格好 が悪く 恥ずかしい思いをしました)

さまつ

早松茸

松の根(地中)に生える茸で白色、素人の採取は困難、松茸並みに高価

さわす

渋抜きをする

「さわし柿」は渋柿を焼酎で渋抜きをした柿を指す

さんかくのり

子供の自転車の乗り方

小さい子供が紳士用自転車に普通に載ると自転車の足がベダルに届かないので、自転車のフレームの三角部分に足を入れてペダルを回す乗り方。

さんかくもち

菱形の餅

男の節句に作ってやまゆさんに持っていく

さんしゅくじょ

電力会社の出張所

さん(?)宿所、東北電力の保守要員の宿泊所、酒を持ってお願いに行かないとなかなか来てくれなかった

さんすけ

風呂の世話をする人

風呂をたてたり、掃除をしたりする人、ここでは客の体は洗わない

さんだらぼし

桟俵(さんだら法師)

米俵の両端の藁製円形のふた、猫や犬の子を川に捨てるときも使った、(水を吸って見えなくなった頃に沈む)

さんどまめ

絹さやえんどう

年間に三回収穫できる意味か?

しいな

柔らかい、熟れていない

「しいなぐり」(まだ熟れていない柔らかい栗)

しーれぇ

白い

白いの訛ったもの

しおくじら

塩鯨

鯨の皮のの付いた肉を塩漬けにしたもの、他県では見当たらない、主に味噌汁の具にする、新潟県に局在した食べ物

しおびき

塩鮭

塩引きの意味、大晦日には年取り鮭と行って必ず食べる

しかじか

締まっている様

「このぼぼの足 しかじかしてるね」(この赤ん坊の足は締まっていますね)

しかも

そこそこに

「しかもいいて」(そこそこに良いですよ)

しき

敷居

じくねる

すねる

すねて何もしなくなった様

しける

湿度が高い

湿度の高い状態だけでなく、海苔なとが吸湿した様もしけたと言う

しける

天候が悪い

天気が悪く雨風のある状態

しし

太ったことを「しし」がついたという。ペルシャ語のシシ(羊肉)と共通なのは偶然か?

じじ、じさ、じさま

祖父

ここでは、家や身分で微妙に相手の名前を使い分ける

じじたけ

爺茸

容易に採れる茸、味噌汁や漬け茸にする

しじみ

縮み

麻の繊維を強く撚って作った布、小千谷縮みが有名

したる

したたる

したたるの訛ったもの

しっぱね

跳ね上げたしぶき

「自動車の しっぱね で服がよごれたて」(自動車の跳ね上げた しぶき で服がよごれました)

しっぺ、しっぺた

赤子のしっぺ、馬のしっぺのように使う、しっぺたとも言う、ぺたは一対のうちの片方の意味

しな

ちょうどこの時、瞬間

「出しなに 自動車にかーれたて」(出た瞬間に 車に轢かれたそうです)

しな

ついで

「この手紙 行きしなに出してくれて」(この手紙 行くついでに出してください)

しながいい

踊りが上手な様

「盆踊り しながいいっけ また優勝したって」(盆踊り踊りが 上手(手足がしなやかに動いて)で また優勝しましたよ)

しなそば

ラーメン

支那そばの意味、こちらではかんすいには炭酸ナトリウムを使った

しねー

しない

「そんげことしんなてー」(そのような事をしてはしないで下さい)

しねくる

つねる

つねるの訛ったもの

じみ

みみず

大小と色々といる、釣りには、腐敗した藁に生息する「しまじみ」(縞ミミズ)を使う、大きいミミズはだんぺじみ

しみどうふ

高野豆腐

豆腐を凍らせて作ることから来た言葉

しみる

凍る

こおりつくの意味、特別寒い様もしみると言う、こおりつくの古語、薬などがしみるは「しょむ」になる

しみわたり

凍み渡り

降雪した雪が凍って丈夫になり、その上を歩けるようになった様

しもう

仕舞う

しまうの鈍った言葉

じもぐりまめ

落花生

地にもぐる豆の意味

じゃーんぽんぽろや

葬式のドラの音

かつては、このドラの音を鳴らしながら葬列を組んで焼き場まで行った

しゃがんや

左官屋

田上以北ではサ行が古語のシャシェシュシェショになる場所もあるが、ここでは鮭は「さけ」匙は「サジ」と標準語と同じなのに、左官だけがサからシャになって古語として残ったのは興味がある

しゃっぽ

帽子

フランス語シャポー(chapeau)の鈍ったもの、隣の兎谷(鼻濁音圏)ではシャンポと呼ぶ

しゃべっちょこき

おしゃべり

おしゃべりな人の意味

しゃぼんのき

エゴの木

昔は果肉を潰して石鹸の代りとして洗濯に使った。核果の果皮にサポニンを含み、泡が出る

しゃれこき

おしゃれな人

「おめぇさん しゃれこきらね」(あなたはお 洒落ですね)

しゅうげん

祝言

結婚式

じゅくしがき

熟して柔い柿

熟れて甘くなった柿ではなく、内部がスプーンで掬える位に柔らかくなった柿

しょ

衆、人達

「北蒲原の しょ は 鼻から 声が 出るね」(北蒲原の人達は鼻から声を出しますね)

じょう

「錠をかける」(鍵をかける)

じょうさもねぇ

簡単

「そんげ がん じょうさも ねぇて」(そんな ことは 簡単ですよ) 田上の細井廣行 様より

しょうふのり

生麩糊

障子を張る時に使用する糊

しょーうしい

恥ずかしい

「こんげ みーじけぇ スカートへーたら しおーしいて」(こんなに 短いスカートはいたら 恥かしいです)

じょしぼっこす

いじり回して壊す様

「時計 じょしぼっこした ねっか」(時計を いじり回して壊してしまいましたね)

じょす

いじる

「おれのけつ じょすなてー」(私のお尻を いじらないでください)

じょせーねー

愛想が良い

「あのねさ じょせーねーね(このねは否定ではない)」(あの娘さんは 愛想がいいですね)

しょっきねー

元気のない

「どーしたかね しょっきねー顔してるねっか」(どうしたんですか 元気のない顔をしてますね)

しょっきんぼう

体をまっすぐにする様

「なーして そんげ しょっきんぼう になってろんだね もうちっと 体 曲げれて」(なぜ そんなに 体を 真っ直ぐに するのですか もう少し 体を 曲げなさい) 田上の細井廣行 様より

じょっけ

ツグミ

ツグミの一種?、ギャーギャーと鳴く、孵化直後の前羽には前肢の一部に見える指状のものがある

しょったれ

不潔

「あの乞食 しょたれげらね」(あの乞食は 不潔そうだね)

しょっぱな

はじまり、先端

「もうえっけー しょっぱなから ゆーてくれて」(もう一度始めから話して下さい)

しょっぺー

塩辛い

「この塩辛 しょっぺーねー」(この塩辛は 塩辛いですね)

しょて

背負って

「そんげいっぺーたきもんしょうてあぶねぇて」(そんなに沢山焚き木を背負って危ないですよ)

しょびん

し尿瓶、し瓶

病気の時に用いる尿器

しょむ

染み込む

「インクが しょんで みーねなったて」(インクが しみて 見えなくなつてしまいました)

しょむ

しみる(付けた塗り薬など)

「オキシフルって  しょむ ねー」(オキシドールは しみり ますね)

しょんべ

小便

小便の鈍り

じんぎ

義理

「じんぎで チョコレート もろたれも あんまよーねぇね」(チョコレートを 義理で 貰っても嬉しくありませんよ)

しんきあけた

頭に来た

「いっぺぇ怒鳴られて しんきあけたて」(たくさん怒鳴られて 頭にきましたよ)

しんけ

きちがい

「あの人は しんけみてーらね」(あの人は 気が違っているみたいだね)

しんけん

一生懸命

「しんけんらねー」(一生懸命仕事をしていますね)

しんしょう

財産

「おめぇさん しんしょう いっぺーもってるってね」(貴方は 財産 を沢山持っているそうですね)

しんしょうもち

金持ち

身上(しんしょう)持ち、資産のあること

しんな

するな

「そんげこと しんなて」(そのようなことを してはいけません)

しんなぐり

中身のない栗

栗を剥いたときの中身がなく渋だけの薄い栗

しんなくれる

萎れる

しなくれるの訛り?、「このアジサイへーしんなくれたて」(このアジサイもうしおれてしまいました)

しんなもち

つきたての柔らかい餅

つきたての餅を、平らに伸ばしてから四角に切る、これから見るとしんなは柔らかいの意味になる、しいなの訛ったものか?

しんのみ

味噌汁の具

「しんのみは豆腐とわかめです」(汁の具は豆腐とわかめです)

すいっちょん

ウマオイ

バッタ目ウマオイ科の昆虫、旧盆頃から鳴き始める、スイッチョと鳴くのでこの名がある

ずーらかす

動かす

「はよ 自動車 ずーらかせ て」(早く 車を 動かしなさい)  田上の細井廣行 様より

すかす

すかんぽ

すいば(酸葉)、タデ科の多年草、子供の頃、茎をしゃぶった

ずくなし

根性なし、不器用

「おめぇさんの おじ ずくなしらて」(貴方の 弟は 根性がないですね)、不器用な様にも用いる

すげー

すばらしい、すごい

「すげー 景色らね」(すばらしい 景色ですね)

すじこ

鮭や鱒の卵の塩漬け

いくらと同じに使われた鮭や鱒の魚卵の塩漬け、ほぐしていないで筋があるのでこのように言う

すすくっせ

きなくさい

「すすくっせねっか 何か燃えてるて」(きな臭いですね 何か燃えていますよ)

すすける

煤で汚れる様

煙で黒く汚れる様

ずたぶくろ

頭陀袋

袋状で一端に紐を通した何でも入る袋、本来は僧が移動する時に必要な物を入れていた袋のようだ

すっこかぶり

頬冠り

手ぬぐいなどで頬冠りする様

ずっこもっく

おおばこ

ずっこもっくと呼ぶ遊びがある、おおばこの茎を交差してから擦りながら引き合って切れた方が負け

すっぺぇ

酸っぱい

「このミカンすっぺぇねっか」(このミカンは酸っぱいですよ)

ずっぺぇ

あいこ

「どっちも ふろしき らっけ ずっぺ らて」(どちらも パー(じゃんけんの結果) ですから あいこ ですね)

すっぺり

平らな様

「日本人はすっぺりした顔の人が多いね」(日本人は平らな顔をした人が多いですね)

ずっぽ

でたらめ

「ずっぽこくなて」(でたらめを言ってはいけません)

すなぶる

しゃぶる

「おめぇさんのとこの ほぼいっつも指 すなぶってるね」(あなたの家の 赤ちゃんはいつでも指を しゃぶっていますね)、すんなぶるとも言う

すへーり

質の悪い生地

(スフ入り)、スフの混ぜものの入った生地の意味、スフは(ステーブルファイバー)人絹で初期の合成繊維

すぼまる

細くなる

「この鍾乳洞は先がすぼまっていてすすまんねて」(この鍾乳洞は先が細くなっていて進むことができません)

ずらくら

ぬるぬるした茸

ナメコのように全体がヌルルしている茸、ナメコよりも大型、味噌汁に合う、ヌルヌルした様にも使う

ずる

動く

「あぶねぇね、自動車がずるっけぇ」(危ないですよ、自動車が動きますから),平安時代まで使われていた「出る」の古語「いずる」が室町時代には「い」が省略され「ずる」になりました、田上ではこれがそのまま残ったものと思われます。現代の「出る」も「いずる」が「ずる」になりその後「出る」と変化してきたようです。ギリシャ語のZull(滑る)から来ているとの説もある。

ずんぎり

煙草入れ

きざんだ煙草を入れる入れ物

ずんどぐり

どんぐり

樫や楢、くぬ木の実の総称

せいか

西瓜

すいかの鈍ったもの

せいふろ

風呂

据え風呂の鈍ったもの、風呂桶に直接「出臍」と呼ばれる炊口と内釜をつけた風呂

せいようなす

トマト

私の母はトマトを西洋茄子と言って一生食べなかった、昭和生まれはトマトと言う

せいろ

木製蒸し器

木製の蒸し器、主にもち米を蒸すのに用いる

せーかちがわ

さいかち川

信濃川の支流、田上では大切な水源、サイカチの木から来て.いる。かつては土手にサイカチの木が多くあったらしい。護摩堂山の頂上にもサイカチの木がある。

せーずち

小槌

才槌の鈍ったもの、もぐら送りにはこれに縄紐をつけて引っ張る

せぇつぶ

さいの目

「この豆腐 せぇつぶに 切ってくれて」(この豆腐 さいの目 に切って下さい)

せっかち

せかせかしている人

急(せ)かすから着ているのか?

せつねぇ

苦しい

「月給がやーすて せつねぇて」(月給が安くて 苦しいです)

せともん

瀬戸物

瀬戸物の総称

せぼんこ

猫背

背が丸いの意味、「ぼんこ」は小さくて丸いの意味

せまっこい、せーめぇ

狭い

狭い状況(こいは状況)の意味か

ぜん

お金

「ぜん がねーなった」(お金 がなくなりました)

ぜん、おぜん

客用の食事

膳、四角のお盆状の四脚の坐り用食卓も指す

せんがむし

サンショウウオ

体長約15cm、4月に流れの遅い水中に産卵、卵嚢ほぼ透明で太いひも状、卵は中心部に揃う、黒山椒魚か?

せんきんきんたま

脱腸の人の様

千金金玉?

せんせ

先生

先生の鈍ったもの

せんたくそーだ

炭酸ナトリウム

洗濯ソーダ、重炭酸ナトリウムの溶液を洗濯に用いた

せんち

便所

せっちん(雪隠)の鈍ったものか?。セッチン、センチン、センチと訛ったようだ

せんとうぼう

戦闘帽

野球帽のような前につばのある帽子

せんば

シャベル、じゅうのう

囲炉裏で使う小型の物もせんばと呼んだ、後頭部の平らな頭をせんば頭と呼ぶ

せんばあたま

後頭部の平らな様

後頭部が切り立って平らな人の頭を言う

せんべ

煎餅

せんべいの訛り

せんぼん

しめじ

しめじの一種、群生して生える様から千本の名が付いた、美味だが比較的に高価

ぜんめー

ぜんまい

ぜんまいの鈍ったもの

そうせば

そうすれば

「そうせばいいて」(そうすればいいでしょう)

そうら

そうです

「そうらそうら賛成」(そうです そうです賛成です)

そうらっけ

そうですか

「そうらっけ、やつばりだめらって」(そうでしので、やはり駄目でした)

そうらて

そうです

「そうらってそうしてくんなーせぇ」(そうですそうして下さい)

そうらねぇ

そうかも(推測)

「そうらね、やっばしまけるねー」(そうですね、やっばり負けるでしょう)

そうられも

それでも

「そうられも、勝つかも知らねぇて」(それでも、勝つかも知れません)

そうれ

葬式

葬礼の鈍ったものか?

そうれば

そう言えば

「そうればおめーさんのなめー何だったかねー」(そう言えば貴方の名前は何という名前でしたか?)

そうれば

焼場

火葬場ができるまでは屋外に棺桶を置き、周りを焚き木で囲んでから火を付けて焼いた、葬礼場の意味か?

ぞーせ

雑炊

餅を入れると餅ぞーせになるが東京の雑煮とは異なる

そーればな

マンジュシャゲ

葬式花の意味、ヒガンバナを指し長い径の先に赤い豪華な花が咲く

そくえ

飯つぶで作った糊

続飯の意味?、炊いた飯を板の上で強く練り糊状にしたもの、木材をつける非常に強力な糊になる

ぞろびっこ

不揃い

紙などを重ねた場合、端の部分の合わない様を「ぞろびっこ」と呼ぶ

そんげ

そんな

「そんげこというたって無理らて」(そんな事を言っても無理ですよ)

そんつぇ

そのような

「そんつぇ 無理 ゆうなて」(そのような 無理を 言わないで下さい)


更新日2007/9/14

作成 長谷川 彰

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